工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

仕事納めの1日・みなさま、お疲れさまでした

うちの仕事納めは、終日機械の整備、メンテンナンスで追われる。

“追われる”が、“終われない”ことさえある。
ま、しかし今年は、終日“追われ”、何とか終えることにした。

自動一面鉋盤は、まずはローラーにこびり付いたダスト、ボンドの残滓と思われる樹脂分とサビ、これらを真鍮ブラシでゴシゴシと削ぎ落とす。
ついで、様々な駆動部の劣化した油をシンナーで洗浄し、その後注油。
メインのスピンドル部には高速回転対応の油を給油。
それらが一通り終えたらば、刃物の交換。

うちの自動一面鉋盤は桑原製ということですこぶる調子の良い機種ではあるが、このところ送り機構に若干の問題が生じつつあったのも、今日のメンテナンスで正常に戻った。
プレッシャーバーの位置調整での修復だ。

機械屋に言わせれば、定盤がへたってくると送りが悪くなる、などとメンテのポイントを指摘するのだが、実は定盤の劣化ではなく、こうした調整で修復できたのだが、この自動一面鉋盤という機械ほど、調整一つでどのようにもなるということは知っておいた方が良い。

以前は二流メーカーのものを使っていて、それはそれは調整のし甲斐があったのだったが、この桑原はそうした“愉楽”を奪ってしまった。

次に、横切り盤、丸鋸昇降盤、そしてルーター盤、面取り盤と続く。
それぞれ摺動部の洗浄、注油、グリスアップなどといずれも共通する手順となるが、定盤を取り外して行うのは、なかなか面倒なもの。

職人見習いのHくんに手伝ってもらい定盤を移動させて行うが、その後が重要。
刃物の軸と、定盤のマイター定規の溝が正しく直角で無ければならず、ここはμゲージでのチェックが必須となる。
因みにJIS規格では300mmの丸鋸で、0.06mmの範囲内に納まれば良いことになっている。

さらには、できれば、口板、フェンスなどもリニューアルさせたいところだが、時間切れだった。

若い頃に世話になった親方の場合、機械のメンテナンスが終わり、工場が掃き清められれば、全ての機械に小ぶりの鏡餅を供えていた。うちはそこまではしない。
冷たい定盤にキスをくれてやっても良いが、それもしない。

でも、1年間これらの機械に世話になり、良い仕事をさせてもらったことへの感謝の気持ちに変わりは無い。苦楽を共にした相棒のようなものだしね。

こうして、今年の仕事も終え、後は幾人かに手紙、メールを出し、時間があれば読書もし、近くの友とゆっくりと酒を酌み交わそう。


そうそう、今年は年賀状は欠礼することとした。
とても言祝ぐことできないと思うからだ。

3.11という結節点を経、原発震災によるショックは何ら解決の道筋さえ見えず、放射線汚染による怯えは何も変わっていない。
福島原発事故は収束したとの政府声明が出されたらしいが、あんなものを信じるバカがどこにいるというのか。

世界からは嘲笑の対象にされてしまっているじゃないか。
あれ以降、恥ずかしくて前を向いて歩けやしない。

国家は原発を厳しく管理するはずのものと思っていたが、どうもそうではなく、厳しく管理されるのは原発事故を告発する人々の方であり、放射線を怖れる被曝者たちの方だというのが、分かってしまった。

これで“おめでとう”との言葉を紡ぐのには相当の無理があると思ったからだ。
何もかもが異様な2011年だった。

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