工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

仕事始めは鉋調整から

グライインダー
そろそろ松も明けようとしているので、もぞもぞと工場に入り2008年の仕事始めということになるが、今日は裏押しなど鉋の調整で汗を流した。
本来は機械のメンテナンスとともに年末にやっておくべきものと考えていたが、時間切れとなり年をまたぎ今になってしまった。
とりあえず寸八2台、寸六1台、小鉋1台、それぞれ裏が切れてきていてたので裏出し作業に汗を流す。
真冬に“汗を流す”とは、誇張あるいは形容と思われるかも知れないが、決してそうばかりでもなく、この過程は事実分厚い作業着を1枚、1枚と脱いでいくことになる。
修業時代、氷点下10数度の松本の地でこの裏押し作業をしていたとき兄弟子から良く言われたものだ。一汗もふた汗も掻かなければダメだよ、と。
今回はグラインダーで刃先のバランスを直しながらの裏打ち→裏押し→刃研ぎ→台直し、と一連の工程を踏んだので、鉋も、これを使う作業者のボクも気持ちがよい。新年らしく清生とした気分だ。
松本時代はこうした刃物の仕込みも慣れていなくて苦労した。
未熟ということと、冷寒地ということが重なり、数度この裏打ちで刃先の鋼部分を損傷させてしまったことがある。
その時に気付くのはまだ良いのだが、気付かずに使い続けていて、ある時、重要な鉋掛けをやっている最中に、この古傷が顕れ、刃先が割れ、材料を傷つけてしまう。
しかしあの寒さはハンパではなかったなぁ。
新米の職人は一番に出勤し、薪ストーブに火を入れ、工場を暖めて準備にはいるのだが、ある朝、機械の定盤に手を触れたら、くっついてしまったことがあった。
定盤が冷え切っていて、掌の水分が一瞬にして凍り付いてしまったことによるのだろう。
あるいは加工が終わり、鉋掛けする前に水引きして重ねて置いた材料が、お互いに凍り付いてこれを離すのに苦労することさえあった。
アパートの冷蔵庫などは、外に置けば凍ってしまう野菜の“温”蔵庫だからね。
オンボロアパートの室内温度は氷点下10度を超すことさえ希ではなかった。
ここ数年、当地では氷点下に下がるのは年に数回しかない。
ボクが人間的にシャキッとしないのも、この腐ったような冬のためか?
明日からは懸案の「“手作り家具”と機械設備」を再開したい。
  *Top画像は鉋身の頭部分を整えているところ

PS:そうそう1つ付け加えておいた方が良いことがある。
知人から「親が使っていた鉋だけれど使ってもらえるかね」と鉋を提供されることがある。使い込まれた鉋は決して悪いものではないが、実はその多くは裏が良くない。いわゆるベタ裏になってしまっている。ベタ裏では良い削りができない。
これは裏打ちをせずに、裏押しをすることによる結果だ。
(研ぎ込んで鉋身が短くなっても常に糸裏を維持させることが肝要)
昨今ではダイヤの砥石が普及してきていることもこれを加速させている原因かも知れない。
裏押しは、まずは適切な裏打ちをしっかりやってからにしたいもの。

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  • artisanさん こんばんは☆
    私の仕事始めもカンナとノミの裏押しから始まりました。
    グラインダーで刃先を整えるのは
    会社の職人さんにお願いしてしまいましたが 笑。
    松本の冬も厳しそうですね。
    高山では冬の間中、窓が凍り付いて開きませんでした。
    朝 起きると室内なのにマイナス5度。
    根っからの静岡育ちが
    よく生活していたなぁ…と(なつかしく)思います。

  • サワノさん、本年もどうかヨロシク !
    高山は雪が深いのに比し、松本はさほどではない。その代わり寒さは厳しさがありましたね。
    あなた3年も雪ん子でがんばったものね。忍耐は何事においても大切です。

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