工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

セクレタリー(ライティングビューロー)の場合

セクレタリー1

セクレタリー(Secretary)という呼称は日本ではあまり一般的ではないが、ライティングビューローという家具のスタイルは、欧米ではこのSecretaryと呼称されることが多いようだ。
さて、先の個展出品作紹介の3つめ。
以前、この春頃にエントリして紹介したこともあるものと同じもの。
同時期にミズナラのものも制作したが、お宮(内部の書棚部分)と、下部の中のレイアウトが異なるものの外観は同じ。
材種はブラックウォールナットであるが、側板、甲板、あるいは扉の鏡板も含め、いずれも矧ぎ無しの1枚板。
側板、甲板の接合は天秤差し。
机面部は、CLAROウォールナットの突き板(厚突き)を展開張りしたものを練った鏡板を持つ。
以前も書いたことだが、この鏡板の外側と、机面側は同一の部材とすることは避けることが肝要。
外側は無垢板で構わないが、内側、机面部は数層に練って、動きを止めた鏡板を寸分の隙間もなく張り込む。
良く無垢板を用いた“手作り○▽”では、こうした基本が忘れ去られ、何でもかんでも無垢板とばかりに納めるところを見ることは一再ならずにあるのだが、無垢で手作りなので100年は耐えられます、との宣揚は、この場合当たらないということは知っておいた方が良いかも知れない。
お宮の抽斗前板もCLARO。
なおこれは実物をご覧いただかないと分からないところだが、机面、扉の納めは極力タイトに決めている。
寸分の隙も無いようにということだね。
これによりパタンと閉まるときは、空気抵抗のために衝撃は比較的小さい。
なお、この扉には施錠が出来るように鍵が埋め込まれている。開けるときは、この鍵が抽手となる。
セクレタリー2

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 扉を開けてCLAROを目にした時のお客さんのウワッ!と
    いう声が聞こえてきそうですね。
    以前の記事で少し気になったのですが、お宮の下は
    開いているものなのですか?
    つまり、お宮を取り外すと、下の抽斗の一部が見える状態。
    そんなふうに見えたのですが、違っていたらごめんなさい。
    それと扉のヒンジは所謂ライティングビューロー用の物
    (表面が面一になる物)は使わないのですか?
    写真ではヒンジの軸の部分が上に飛び出しているように
    見えるのですが。

  • acanthogobiusさん、あなたも1つ作ってみませんか。
    駆体、机面部分の板のことをお尋ねですが、お察しのように奥行き一杯には入れていません。
    奥行きの2/3ほどでしょうか。同じ高さに後ろ桟を取り付けることで、お宮を支えます。
    必要にして十分な幅があれば良いので、お宮を支えるところまであれば足ります。
    例えば板差しの箪笥などでも同じなのですが、棚板をフルに入れると云うことはあまりありませんね。
    むしろ経年変形などを考えれば不要なところに板を置くことは避けたいものです。
    ヒンジは普通の平丁番です(T.T.S)。真鍮で専用の良いものは無いですからね(ステンレスはありますが)。気にせずに使っています。
    (なお、本文で記さなかったことですが、こうした個所の丁番の取り付けは、相互に引っ張り合うぐらいに密着させる必要がありますが、これは先穴の開け方を工夫することで簡単にできますね。)

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