工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

CLARO(クラロ)って何さ

CLARO1
画像はウォールナットの亜種、CLARO WALNUTという樹種を用いた甲板の部分。
いわばCLAROのCLAROたる所以が表れている。
ご覧のように上下の細胞組織が分断されているのが確認できると思う。
また上のその部分から大きく絞り込まれているのも判るだろう。
理由を明かせば、これは接ぎ木された痕跡だ。
CLAROという樹種の由来を明示的に示している。
ちょっと不鮮明だったかな。
では次に下の画像はどうだろうか。
上は木表の方だが、下は木裏。
この板はかなり髄心(Pith center)に近い部分だが、それだけにこちらは接ぎ木した痕跡が明瞭。節のような黒く欠落した部分があるが、まさにここが接ぎ木の場所だ。(画像下、右下の影は送り寄せ蟻部分)
この丸太には無かったが、他のCLARO原木ではこの部分に太い釘が使われていて、刃物を大きく欠損させてしまうという失敗を数度やらかした。
上部は明らかに細胞組織が異なることが見て取れると思うが、異なる樹種を接ぎ木したことによる。
その結果、下の台木の方には上の接ぎ木された樹の細胞がアマルガムに混入し、変異させられ、一般のブラックウォールナットには決してみることのできない独特の色調をもたらす。
チョコレート色から赤紫色、そして黒から緑色へと、その色調は一様ではなく、それそれが縞状に絡む。
また木理もより複雑になり、縮杢、バール杢などが醸されることが良くある。
この丸太にも見事なバール杢、縮杢が出てきた。


これらは表情を表すだけの説明でしかないが、その物理的性質も独特のものがある。これは実際刃を当ててみなければ感得できないものかもしれない。
ウォールナットという樹種そのものも他の追随を許さないほどにとても粘りがあり、靱性が高い樹種であるが、このCLAROに至っては、その細胞は数倍もの緻密さがあり、したがって切れの良い刃物を当てると、ただそれだけでしっとりとした独特の艶が出る。
鉋掛けした後の木肌の艶やかさはどのように表現すれば的確に伝えることができるのか、ボクの表現力、文章力ではとても及ばない領域のものだが、他の樹種では獲得することのできない何かトロッとした滑らかさとでも言えば良いのか。
こうした経験は木を刻む職能を持つ者に与えられたある種の特権的行為というべきものなのかも知れない。
日本では例えばケヤキのように決して広く一般的に知られた銘木ではないとしても、世界的視野で見るならばはるかに広く工芸品として珍重されている樹種であることはその世界ではよく知られたことであるし、かのJ・ナカシマが好んで用いた樹種であり、また数々の世界的名車のダッシュボードを飾るための樹種として喜ばれているのも確かなことだ。
あるいはまたガンストック(銃床)に使われる樹種はそのほとんどがブラックウォールナットと言われているが、中でも工芸的価値を求める数寄者には、このCLAROを好むというのも良く理解できるところだ。
したがってほとんどのCLAROは化粧単板として突き板にされる運命にある。
これを待ったー ! 、と言って止めさせ、ゲットしたのがこれだったのだが、大枚はたいて購入しただけのことはあった。
‥‥ちょっとCLAROについて話し始めると、とめどなく様々なストーリーが出てくるので、いい加減にしておかねばならない。
CLARO2

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