工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

地酒『磯自慢』を求めて右往左往

磯自慢
年の瀬もいよいよ旬日に満たない日を残すのみとなってしまった。
まだまだ年内数カ所の大きな受注家具の納品を控えているというのに、今日は地酒を求めて右往左往してしまった。
今や幻の銘酒となりつつある焼津市の酒造所の「磯自慢」を求めねばならず、仕事を中断して隣の焼津市の蔵元まで走らせる。
その途上何度かこの「磯自慢」を購入したことのある酒屋に立ち寄るも、在庫が無い。
あまり期待もしていなかったのでそのまま蔵元へと走らせる。
駿河湾を望む焼津港にほど近いところにその蔵元はある。
果たして‥‥、杉玉とともに墨痕鮮やかな大きな看板が掲げられた天保元年創業の蔵元の板戸は固く閉ざされていた。
曰く「全て売り尽くして在庫はありません。‥‥」とのつれない張り紙。


あらら、やはり無いですか‥‥、と裏に回ったりと未練がましく周囲をうろついていたところに車で若旦那が帰宅。
「どこか近くで取り扱っている酒屋を教えてくれませんか‥‥」と懇願すると、腕を組み、「‥‥近くのスーパーでも扱っているようだけど、うちからの直販ではないので、めちゃくちゃ高いからやめときな、‥‥そうだね、●▼屋さんなら少し残っているかも知れない。ここから向こうに7、8K走って云々‥‥」と丁寧に教えてくれる。
恐らくは営業全般の責任者でもあるのだろう能吏といった感じの若旦那だった。
教えられたまままた数Km走り、●▼屋さんを見つける。
近郊の地酒を積極的に取り扱っている、なかなか熱心な酒屋だ。
確かに「磯自慢」はあった。
しかし1升ビンの「本醸造・搾りたて」がわずかに1本、後は4合ビンの「吟醸 搾りたて 生原酒」が2本。
他の酒造会社の地酒はかなりの数の銘柄がそろっているのに比し、何ともお寒い品揃え‥‥。
「磯自慢」の純米吟醸が欲しかったのだけれど、この店には純米吟醸はそもそも入れてもらえないとのこと。
仕方なく、この3本を頂くことに。(いや、もとい、ありがたくいただくことに‥‥)
昔は市内の酒屋であれば普通に求められる銘柄であったものが、ここ数年困難になってきているようだ。
ましてや、7月の洞爺湖G8の初日の福田首相主催の夕食会でこの「磯自慢 」が乾杯用の酒として採用されたことがニュースでも報じられ、一気に人気に拍車が掛かり全国規模での人気の銘柄になってしまった(無論、以前より左党にはよく知られた銘柄であったのだが)。
近隣の者であればこうして探し回れば入手できるものの、県外ではそうもいかないのではないか。
誤解無きように言っておくが、この3本は自家消費ではなく、いずれも頼まれもの。
でもせっかくだから依頼主には「やっぱり手に入らなかったわ‥」と苦笑して誤魔化し、1本抜いてしまおうか。
「磯自慢」に限らず、この駿河の地には良い地酒が豊富にある。
良い酒に必要な要素は‥‥、
酒米、麹、水、杜氏、の4つ。
最後の杜氏だけは地元調達は無理だが、他の3つは地元で良いものが調達できるからね。
*参照
「磯自慢酒造インタビュー」
Top 画像、iPhoneからのものであまり調子は良くないので勘弁ね。
*追記
なお、1つ言い残したことがあった。
この「磯自慢」を取り上げたのには幾つかの理由があるのだが、ただ銘酒であるだけではなく、この度のサミット御用達の誉れに輝いた銘柄として一気に全国区になったからといって、決して量産へと舵を切り、品質の低下を招くようなことはしない酒造会社であることを信じているからだ。

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