工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

木工家具制作におけるサンディング (その6)

サンディングバナー
(b)ユニバーサルサンダー
機械式ベルトサンダーでは前回解説した「 2点、あるいは3点ベルトサンダー」以外にも、「ユニバーサルサンダー」というものがある。
これは木工所において比較的普及度の高いサンダーだろう。
(しかしうちの製作スタイルでは用途が無いので設備していない)
「 2点、あるいは3点ベルトサンダー」とは逆に2本の縦軸スピンドルに150mm幅ほどのエンドレスのサンドペーパーを装填し回転駆動させるもの。
定盤は水平に設置される(サンドペーパーとは90°の関係になる)。1つは長手方向、またプーリーの円弧状部分にも置かれ、内丸形状部位の研削に活用される。
機種も様々だが定盤が任意にチルティングできるものも多い。
どういう用途があるのかな?
木口の研削には便利かも知れないが他には用途は?
工房起ち上げ前に少しの期間だけ世話になった木工所では抽斗の側板削りに活用されていた(研削ではなく切削としての活用だね)。
番手を #80〜#120ほどにすればがんがん削れるだろう。
でも間違いなく平滑性は損なわれ、木肌は荒れるだけ。
よい子の皆さんはこうした活用法はしないように。
この仕上げ段階でわざわざ切削品質にダメージを与えるようなことはしないようにしたいもの。
精度の高い高品質な加工をすれば、抽斗の仕込みなど、手鉋を数回掛ければバシッと決まる。
これは本稿で述べるのは適切ではないが、良い機会なので家具制作における精度についての考え方について少しだけ触れてみる。
〈木取りから始まる木工加工では全ての加工プロセスで高精度を追求するようにしたいもの〉
抽斗の仕込みに関係してくるのは、駆体の寸法精度、長手方向、妻手方向、奥行き方向、それぞれの平滑性、直角精度、寸法精度が要求されるだろうし、同様に抽斗本体の前板、側板、向板それぞれの精度が要求されてくる。
如何に高精度を要求したとしても、駆体の組み上がりは微妙な歪みは避けられない。
したがってここに挿入される抽斗はこの歪みに合わせて組み立てる必要が出てくるが、これを複数の抽斗において完璧に充足させることは至難だ。
そこで高精度の追求というものを生産性を損なうことなく果たすためには一定の技が必要になってくる。
例えば、前板の木取りを基本的寸法で決めた上で、駆体の微妙な歪みに完璧に合わせることで、その後のほぞ加工は修正された前板に準じて個別に特化した形状で施こされるだろう。
要するに正面左下がやや鋭角になってしまった駆体であれば、その歪みに合わせた前板の木取りに沿う形状で全てのパーツが加工され、組み上がるというワケだ。
したがって仕込みも数回鉋掛けすることでジャストフィットしていく。
無駄な削り、無駄な作業からは縁遠い加工方法ということになる。
またこれらはインセットの場合であるが、アウトセットの場合は仕込みを側板の削りで合わせると言うことは無理であるので、如何に加工段階の精度が重要であるかは推して知るべしだろう。
高精度の要求というのは如何にも非生産的で前時代的な考え方ではないか、というのは誤り。
無駄を省き、快適に製作を進めるという生産性を追求するためにも、高精度な加工プロセスが必要だということを知っておきたい。
さて話を戻そう。
このシリーズの初期に、サンディングと、鉋掛けの特性の違いについて述べてきたようにサンディングというものは塗装プロセスのプレ段階として欠かせないものだが、その方法論をしっかりと把握しておかないと、目的とは異なった結果をもたらすリスクがあることを知っておきたい。
鉋の使用には一定の技量というものも要求されるが、木工に取り組みにあたって、これを回避していては何事もなし得ないものと覚悟すべきことだろう。
意欲を持って取り組めば、誰しもが著しい上達をして、木工という快楽へと自らを駆り立てていく原動力になっていくものだ。
2,ワイドベルトサンダー
上下2個のドラムにエンドレスの幅広のサンドペーパーが装填され、定盤上をゴム状のベルトローラーにより自動送材されるものだ。
幅は450mm、600mm、1,200mmと様々。
1,200mmは合板製作には欠かせないが、最近では大規模の家具製作所にも導入が進んでいるだろう。
一般には450mm、600mmのものが多く普及している。
ボクは以前世話になった親方のところに小型(300mm)のものがあり、少しは構造的認識があるし、1,200mmのものも借りに行ったことがある。
このワイドサンダーは良い機械だ。
パッドの選択にもよるが、かなり高精度な研削規制が可能だ。つまり研削量が規制できるということ。
従って無垢の板などにも使えるということだ。
ただしかし少しの反りでも対応してくれないということにもなるので、留意が必要となる。
良く米国の雑誌などに紹介されているドラムサンダーというのがあるが、これは使えるのだろうかね?
ワイドベルトサンダーとは大きく機構が異なると思われるので、あまり興味がないのだが。
かといってワイドベルトサンダーを導入するほどの仕事量も、工場のキャパシティーもないのだが。
今回は余談が過ぎたので、スピンドルサンダーにまで及ばなかった。次回にしたい。

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  • 初めまして。下請け仕事の木工所で働くものです。
    ユニバーサルサンダーで木口を削るのは危険な部類に入る
    作業です。やるならシャコマンで定規を付けてあげた方が良いと思います。工場に来たデザイナーなんかが木端で何か作ろうとして、吹っ飛ばされるの何度も見てますから。
    それとワイドサンダーは多少の反りならかかります。
    2つのローラーにはさまれてエアーで膨らませてある箇所があり、厚みの規制はローラー部分でしますが、エアーで膨らんでいる所はペーパーが若干下がっていますから。

  • ユマニテさん、ご訪問、お初のコメント、ありがとうございます。
    >ユニバーサルサンダーで木口を削るのは危険な部類に入る
    良く分かります。回転するペーパーに対し、直角を保持する治具を設ける必要がありますね。
    >ワイドサンダーは多少の反りならかかります。
    以前、27mm厚、1,200φの円形天板を数10枚サンディングしたことがありましたが、あまり結果は良くありませんでしたので‥‥。
    でも仰ることはその通りだと思います。
    端をダレさせずに適切にサンディングするには、熟練工による使いこなしが必要ですね。
    適切なご指摘、感謝します。ところでお名前、気に入りました(微笑)。

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