工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

楢の家具調仏壇の品格とは

仏壇aこのBlogで作品を紹介する主たる意図は、こんなもの作ってます、という表明でしかなく、決して営業を念頭に置いたものではない。
もし営業をモチベーションとする記述であれば、つまらない内容に堕することになり、結果読者は激減していくことだろう。
しかしたまには購買意欲を掻き立ててくれるものもあるようだ。
昨年夏頃に小降りの家具調仏壇をアップしたところ、さっそく相互linkさせていただいているギャラリー、CRAFT藍さんから問い合わせがあり、昨年末に話が具体化し、先頃これが完成して納品と相成った。
顧客からの条件はサイズ、内部構成、材質(楢材)、塗装(オイルフィニッシュ)。
要望のサイズは高さにして1mほどのものであったが、あまりデコラティブなものではなく、シンプルに、素材感のあるもので、端正に作りたいと考えたのだが。


仏壇bまず主材の楢材であるが、これには3本の毛色の異なる楢材を用いた。
側板、扉、内部小抽斗には20年ほど前に競り落とし、大事に活用してきたとても趣のある杢を醸す楢材を用いる。
杢については詳しくはないが、このヌカ目に近い楢には玉杢、笹杢などが醸し、独特の風合いを持つ。
原木は3尺を越える太さで長さも5mほどのものであったが、元の方は虫害でほとんど使えないような状態であったので、入札したのは少なかったのだろう。
これを半分に切り落とし製材した。
当時はまだ木口からどのような木目を持っているのか判断するほどの鑑識眼は持っていなかったので製材するまではどのような結果になるか全く判断できなかった。ただ200年近い樹齢で、ヌカ目であることにそそられたのだ。
製材中、見たこともない細かい板目が出てきたので大喜びしたものだった。
その後の乾燥も一般に楢の丸挽きは乾燥が怖い(反ってしまう)と言われるが、全くそのようなこともなく歩留まり良く乾燥できた。これも樹齢があること故のものだったと考えられる。
これまでそのほとんどを拭漆仕上げの飾り棚などに使ってきたのだが、わずかに残った在庫の良いとこ取りで、これを製作することが出来た。
仏壇ディテール2棚板は普通のミズナラ。背板は框組に楢の虎斑がでた柾目材をブックマッチに、中央部分に縮み杢のタモ材を配し、鏡板とした。
天板、地板はやや厚めの楢材のエッジをシャープにカットし、これに側板をほぞ差し。
内部抽斗は造り帆立を施し、納める。上にはお盆。
扉は細めの框にブックマッチに木取った鏡板を納める。
ヒンジはHAFELEのもの(アウトセット)。
キャッチは幕板内部に封じ込めたマグネット。
幕板裏側にLED照明。幕板右端に見える黒いものは扉開閉スイッチ。
引き手はローズウッドの削りだし造形。
仏壇ディテール1全体的な留意点としては端正な納まりをねらったのだが、具体的手法ということでいえば高精度な仕事ということになろうか。抽斗も扉も、ビシッと寸分の隙もなく、かつスムースな動きを確保する。
そうした中でも少し遊びといおうか、縮み杢のタモ材がアクセントとなって、モダンなイメージを与えたかもしれない。
依頼者のCRAFT藍さん対象記事へトラックバックしよう。
奈良千秋さんの仏具をセットしてくれた画像がアップされていた。
*画像はいずれもクリック拡大
関係する過去記事
仏壇あるいは“けんぽなし”のキャビネット
岡崎の個展では‥、

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 仏壇のTBをありがとうございました。
    当方まだTBが全面回復しておりませんので、表示まで今すこしお待ちください。確かなお仕事を見せていただき感謝しております。またきっとお世話になることと思います(^^;。

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.