工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

マシンのドレスアップ

月日の経つのは早いもので、工房の引越から早8ヶ月。

今日は久々に大工さんから電話が入る。
新年明けて早々に打ち合わせしたはずの、工房の外構関連の施工打合せにこの日曜にやってくるとのこと。
おやおや、忘れちゃっていたわけではないのね。

そんなこんなで、工房整備の進捗も思うようにはいかない実態への焦りも慣れっこに。

作業環境も似たようなもので、思い描き、図面に落としはしたものの、望ましい姿になるのはいつのことやら・・・。
妻から居住スペースの調度品(家具、什器関連)制作にやかましく言われてもいて、作業所関連はどうしても後回し。

さて今日はこの作業所のストレージ、機械周りの整備について少し触れて見たいと思います。

まず、何よりも優先させたのは、以前の作業環境水準を復元させること。
こんなことは取り立てて言うほどのものでも無く、当然の判断であるわけですが、しかし実際は簡単では無い。

どういうことかと言えば、ぞれまでは25年を掛け、少しずつ充実させてきたという経緯があるので、これを一気に再現するなどということは、やはり簡単では無い。

無論、完成形へのイメージはあるので、あらためて、まるまる25年を掛けるなどということにはならない(私の場合、果たして25年先まで生きているかどうかさえ危うい)ものの、その1/10ほどでやりぬかねばね。
笑われてしまいますよ。

そんなのんびりな工房整備状況ではあるものの、機械周囲はさっさと整備していますので、家具職人の現場の一端を視ていただくのも一興かと思い、今朝写真に納めたところです。
久々に好天にも恵まれましたのでね。

軸傾斜丸鋸昇降盤

軸傾斜丸鋸昇降盤1

軸傾斜丸鋸昇降盤1


このマシンは地元、静岡のメーカーの「山田機械」というところのありふれた製品。
静岡にはいくつかの木工機械メーカーがありますが、中堅どころの1つです。

軸傾斜丸鋸昇降盤は、家具職人、木工職人にとり、もっとも頻繁に用いられる加工機械の最重要マシンですね。
木取りからはじまり、枘を付けたり、天秤指を加工したりと、木工加工工程のの8割方、このマシンで行います。

ここ静岡では家具製造メーカー傘下に、小さな木工所が沢山ありますが、この軸傾斜丸鋸昇降盤1台だけで下請けしている職人もいるほどです。
つまりあらゆる工程をこのマシンで済ませてしまう。
(無論、削り屋さんという専門業者もいることで、こうしたことが可能となっているわけですが)

さて、この傾斜盤、もっと優れたマシンを造るメーカーもあり、ここ静岡の職人はもっぱらそっちを選択します。
私は腕でカヴァーしますので、これで十分(苦笑)。

一般的な丸鋸盤とはフェンスの構成が違うところが目に付くかと思います。
静岡は、むしろこれが標準。
さらに、静岡では一般には鋸とフェンスの位置関係が通常の逆。
私は松本で修行したので、延長の定盤を逆に取付直してもらったほど。

このフェンスは、マイクロメーター様のダイヤルで位置制御します。
0.1mm単位での設定も容易です(逆に大きな移動は苦手)。

うちにはもう1台の丸鋸盤がありますので、木取りなど、寸法を頻繁に変える作業などはそちらで行いますので、何ら支障はありません。

0.1mm単位での位置制御は、枘加工などにはとても有用な機構ですね。

さてこの昇降盤のボデーにはいろんなものがまとわりついています。

まず正面左から。

  • 左角に活けた2本のボルトには、5枚の口板。①
  • 次ぎに主軸ナット用のスパナ。②
  • SWボックス横にマグネットタイプのデジタル傾斜計③
  • SWボックス上にマグネットで張り付いている押し棒④
  • 傾斜軸回転ハンドル部にぶらさげているのがスコヤ⑤
  • 両面接着テープ⑥

次の画像
丸鋸昇降盤の右側ですね。
同じく左から

  • マグネットが付いた紺色のツールトレー⑦
  • カネ定規(ただ合板をカネにカットしたもの。既製品のスコヤより、よほど使い勝手が良い)⑧

延長定盤にぶら下げているのが

  • 手箒、⑨
  • 30cm曲尺⑩
  • フェザーボード⑪
  • カッター作業などで使う、仮フェンスと、その固定のための2本のクランプ⑫
  • 三日月定規(マイター定規)⑬

軸傾斜丸鋸昇降盤2

軸傾斜丸鋸昇降盤2


まぁ、要するには、傾斜盤加工作業に必要とされるツール、ジグ、定規類などほとんど全てを丸鋸傾斜盤のボデーにくっつけており、一歩も歩かずに、そのままの姿勢でアプローチ可能というわけです。
ずぼらといえばズボラ。

前回、ワークベンチのところで、鉋などのストレージをワークベンチ下部の収納部に収めたことを示しましたしたが、同じ思考法です。

またワークベンチの背面にツールレストを設けたのは、こちらに来てからでしたが、以前と較べ、基本のツール収納什器まで、ずいぶんと距離ができてしまい、いちいち歩くのが面倒くさかったから。
作業所が広いのも良いことばかりでは無いですよ。

私のこうした思考法は、いわば合理主義といっても良いでしょうが、こうしたテクノロジーの現場では、ある種、合理主義を貫徹した方が良いように思いますね。

角ノミ盤

これもありふれた角ノミ盤。

角ノミ盤

角ノミ盤

角ノミ盤では関連するツールは多くは無く、材料固定装置の位置決めボルトのスパナぐらい。
これらはボデーに固着させたツールレストの木のブロックに整理整頓されています。

角ノミ刃

  • 6.4mm
  • 8mm
  • 9.5mm
  • 11mm
  • 15mm

加えて、スコヤ・小

さらに、その裏には2本のスパナ。

それと、スポット照明ですが、こちらに来てから、LED 3wの明るい優れものを取り付けています。
クリップからフレシキブルな長いアームが伸び、明るい3wのLEDランプが手元を照らします。

以前は懐中電灯タイプで1wのものを使っていましたが、3倍の明るさで、しかもフレシキブルの長いアームは刃先部位をターゲットにするに十分です。

LEDですので夏でも暑くないですし、小さな光源ですがレンズも拡散性があり、何かと都合が良い。

こちらです。

今後も、折に触れ、機械周辺の記事を上げていければと考えています。


そうそう、昨年秋に導入したフロアタイプのドリルプレスですが、やはり大変快適ですね。
使い勝手がすこぶる良いですね。
本体の能力、機構もそうですが、定盤に取り付けたT字スロットの移動フェンスの威力はすごい。
レーザーポインターと併せ、位置決めがとても容易ですね。
hr

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • やる気の弟子がはいると おやかた精度 混乱必死ですね。

    • 木工を志す若者も様々ですけど、意外と多くの場合「感性でしょ、大事なのは?」と考える。
      でも現場ではね、プロダクト的アプローチがまず要求されるんですね。
      そこんところがわからん人が多い。
      木工楽しむには、まず基礎を打ち固めることでしょ。
      全体のフォルムと、精緻さ。

  • 私の所は狭い工房ですが、直定規、スコヤ、箒などは機械ひとつに
    1セット揃えた方が効率が良さそうですね。
    参考にさせていただきます。
    私の場合は使った所に戻すかどうかが問題ですが。

    私が角のみ機で使っているLEDは一つのクリップからアームが二本
    出ているタイプで、左右から同時に照らしています。
    コンサートの会場で楽器の奏者が手元の譜面を照らす時に使うための
    物のようです。ただ、ラジオ(AM)に雑音が入ります。

    • おや、acanthogobiusさん、参考になったとすれば嬉しいですね。
      【マシンへのツール取付法】ボルト埋込などいくつかの方法がありますが、パイラックというクリップは簡便で有用です。@ ¥50ほど。

      【LEDスポット】ツインですか、それはとても良い選択ですね。
      影ができません。
      ラヂオ雑音、LEDはやはり電子機器ですので避けがたいでしょう。
      メーカー品ですと、抑制回路もあるのかな?

  • ワークスペースは、主の性格(脳回路)個性や仕事内容が反映しますので、工夫が感じられてG。工房も作品のうちでし。「あて板」を見れば腕前が分かるもの。
    「感性」は初めからあるん?でしょうか。先達・親方のセンスが次世代に染みこみ、影響をうけるはず。スタイル・気分・イメージで入り込むとへたれ安く、修行・基礎なんかパス。ネットの珍裂棚から選択するので実戦力は後回しだが。
    どうも筋の良くない世渡りは長続きしませんね。親方は、怒るし、うっとうしいからすぐ独立しておしまい。副作用のない素敵な仕事ですが、危うい「木工ポスト」灯台ブログ内容礼賛しませう。クラフトが今時は、格好いい生き方のようです。

    • 親方の下を離れ30年近く経ちますが、テクニカル領域、機械の取り扱いなどは、いまだしもべのようなもの。一見冴えない職人ですが、私にとっては偉大な親方ですよ。
      この正統な木工をいかに次世代に伝授するか。

      指摘されるように安易なネット依存、書物依存では、手業の類、機械の扱いを深いところで修得するのは困難。
      この領域のリソースは、テキストで残すことができるのはごく一部。その多くは手から手へ、ですね。

      学びたければ、私がかつてやったように、古老の優れた職人を探し出し、一升瓶ぶら下げ、日参することでしょうか。

  • 静岡のメーカーの機械は、ヨーロッパの鋸盤と同じく左側に立って加工できる方式と聞いたことがありましたが、これがまさにそうですね!

    • ikuruさん、ご無沙汰でござります。

      なぜ静岡が異端なのかは不明。産業技術の地域的な沿革を追ってみるべきかもしれませんね。
      誰もそんなもの興味持たないでしょうから、私にとっても課題ですね。

      欧州のテーブルソー、鋸に対し、フェンスは左なんですか。
      知らなかったなぁ。

      私も土地柄、余所でそうした昇降盤を扱うことがありますが、怖いですよ。
      (材料を押す右手が鋸に当たりそうになる)

      延長定盤をさらに長くするケースもありますね。
      横切りなんて不要になります(海外ではあまろ横切りは一般的では無い)

      J・クレノフは高山のキャビネット講座で、横切りなんてクソ、なんて言ってましたよ。
      分かるなぁ。

  • 左立ちがバックラッシュくらいにくい?ような気がしますが。厚もの縦引きでは
    右に立ちたくなります。メーカー専門異見を伺いたいですね。切味低下すると逃げるのは材と安全。

    • 鋸へ向かう身体的作法ですね。
      加工材へ、手、腕の圧力を与えるには、たぶん正面に立つのが効率的。
      ただ、バックラッシュのリスクに備えるため、左右のどちらかに控えることになるわけです。
      そこから推せば、利き腕の逆の側になりますね。

      因みに、鋸の切れ味、過負荷を覚えた場合、怖がって逃げるのはむしろ危なく、力を加えつつ、鋸の切れ味、負荷との関係性を手先に感じさせつつ、力を抜くこと無く、ゆっくりと押し切ることですね。(リスクが想定できれば、危ない橋は渡らないのが鉄則ですが)

  • いえ、この昇降盤(刃は手前方向への回転ですよね)と同じく丸鋸の右側にガイドフェンスがあって、丸鋸の左側に前後へ動くスライドテーブルが付いています。左側に立つので、右手が刃に近い側になります。静岡の機械も同じだなあと思いました。

    • Ikuruさん、了解、了解! 失敬しました。
      クロスカットソーの移動定盤タイプのことでしたか。

      例えば、こんな奴ですね。

      日本の横切りは確かに逆。
      開発思想の根本に関わりそうな部分ですよね。
      人間工学的にどうなのか、深淵に迫ってみたいものです。

  • はじめまして。

    なぜ国内・海外ではフェンスの取り付けが逆なのか?
    という問題に対しての回答ではありませんが、
    日本のものが逆につく理由だけなら
    鋸刃を傾斜させた場合にフェンスがどちらにあるかだと思うのですが如何でしょう?
    国産のものは左に傾き
    海外のものは右に傾くものが多いように思います。

    この問題とは全く関係ない事かも知れませんが
    鉛筆を小刀で削るとした場合
    日本人は体の外に刃を向けで削り、
    海外では自分の体に向けて刃を動かすと聞いたこともあります。
    真偽の程は分かりませんが。
    そのような刃物に対する扱い方が違っているのかもしれませんね。

    • ゆうせーさん、ドモ、初めまして。
      (一瞬、郵便使わず、ヤマトメール便ばかり利用しているので、お叱りの連絡かとビビッた)

      さて、丸鋸盤(Table saw & Sliding Table saw)での作業位置関係の解析、
      恐れ入ります。

      ご指摘のように、処変わっても、傾斜方向と作業者の位置関係は同じ場合が多いようですね。
      つまり作業者側と逆方向に傾く。そしてフェンスもその方向。

      日本の横切りは、ほとんど全てが移動定盤が鋸に対し右。
      欧米は両方あり、どちらが多いかは不明(しかし、いずれも上述の関係性は同じのようです)。

      ただ不思議なのは、静岡の場合、フェンスが、鋸の傾きとは逆側。
      これはかなり異色ですね(合理性、安全性から考え、私には理解が及びません)

      さらに、ゆうせーさんの〈小刀の使い方〉における《技術文化民俗学》、
      面白い指摘ですね。

      彼らの小刀の扱いは知りませんが、ただ調理でのナイフの使い方は
      明らかにゆうせーさんのご指摘のように、向こうから手前に引きますね。
      私もピーラーなどはそうです。

      鉋、および鋸の場合、日本は引き、西洋は押す。

      まだまだ調べることは多いようです。
      しかし、面白いですね。

      ゆうせーさんの知見の披瀝、感謝です。

  • 前に、縦引きガイドフェンスにつける補助板や口板の材質は真樺柾がベストというコメントがありました。なぜウダイなのか。摩耗やスベリ、耐久性、非変形なども言及を。現物木理・木口・寸法・重さデータも。口板のアジャストは?
    職種によりいろいろなガイド・当てを適時装着しているので右当てが安全かと思います。
    精密木工では、横切り「スライド箱定規」は訓練校テキストにはなく、極めて便利なものですが、現業で使用している人のコメントがあれば軸傾斜盤の実際がもっと分かりますので加工物との兼ね合いなどご教示ください。
    近年の欧米の昇降盤では繊細・微妙なワークはできないので、クールなテクニックを披瀝されると感動Techもの。また、WWM開発が遅れて居るのでは無く、現場で使いこなしているのが明らかになるでしょう。それを記録できないもどかし阿り。
    木工キカイ屋さんが工房を探訪せず量産効率自動機後追いでしたので斬新なモデルが出なくなってきたわけです。今のハイテク満載では人の工夫が衰え、自分の体道具にはなりません。JP昇降盤の使いこなしはまだ現場どまり。
    そろそろ、創作作品・手仕事から、新しい技能センスや異次元発想がうまれるころです。好学部とか脳楽部とか鉄学科での優秀な人物が活躍していますからなにか変わる。知的工房制作者が多く、伝統もまだしぶとく、ジャパンウッドワークは世界のサミット。これから先が有望です。 阿修羅ABE

    • ABEさんご指摘のように、昇降盤はある種万能機的な使い方がされているにも関わらず、その活用方では必ずしも地域を越えての共有化は為されていないのも確かです。

      あるいはFWW誌を視る限りでも、彼らは実に鈍くさい(私の使い方を視て、クレノフ氏は「そいつは危ねぇから、こいつを使いな」と渡されたジグは、日本人の職人にとってはかえって危なく、精度が出しにくい代物だった)。

      昔、児玉某という人が、全国の木工所、組合を歩き、指導していたこともあるそうですが、世知辛い現代ではそんな酔狂な人はいません(木工機械のスペシャリスト)。

      ご指摘の口板、フェンスの材質、「箱定規」、あるいは活用方など、遅くないうちにBlog記事としても整理しておきたいですね。
      親方筋の無い方々も多いようですので、必要に迫られてもいる気がします。(問題は多岐にわたり、レスも途中ですが、とりあえずここまで)

  • 木工機械について悠さんのページで色々調べさせてもらいました。
    機械について、ひとつこの業界で気になることを質問させて下さい。

    家具作りの本場とも言えるヨーロッパでは自動と手押しの複合機(兼用機)が主流のようですが、
    なぜ日本ではその流れになる気配がないのでしょうか。
    万能機というものがありますが、あれはまた別の話として人気がないのはわかります。
    狭い日本ならなおさら複合機が人気になってもいいと思うのですが、何か思うことはおありでしょうか?

    • Aikoさん、はじめましてのコメントですね。
      どうぞよろしくおねがいいたします。

      Aikoさんからの問いへの回答、やや冗長な内容になりますがお許しください。

      Aikoさんご指摘の〈自動と手押しの複合機(兼用機)が主流〉はこのようなものでしょうかね(Felder AD531

      なお、欧米での複合機(combination machine)では、
      一般には、手押鉋盤、横切盤、面取盤のコンビ。
        ※ 代表的事例 (FELDERの小型複合機の代表事例
      あるいはコンパクトなものでは手押鉋盤、自動、横切盤、Holizontal Spindle Machineのコンビ
        ※ 事例(イタリアのマシン
      などを主体として、多様に展開しているようです。(Google検索では

      さて、日本ではなぜこのようなマシンが市場に流通していないか、ということですが、
      以下のように考えられるのではないでしょうか。

      このタイプの複合機は1つの電動機を多様に活用し、設置面積の抑制に繋がるところから、総価格の抑制とともに、市場性があるわけです。

      ただ一方、専用機に較べ、個々の性能はどうしても劣るところから、プロの現場では必ずしも一般的では無いと言うことになります。

      したがって、現在数社が開発リリースしている万能機により市場からの要請に応えている、ということなのだろうと思います。

      また欧米での多様な展開を考えますと、日本とは、木工家具製造における歴史の差、加工スタイルの差も垣間見られますので、そうした側面からもう少し考えてみましょう。

      〈木工複合機(万能機)〉
      日本では、ご指摘のように(手押鉋盤、プレナー、昇降盤)の3種が一体化した〈万能機〉が一般のようで、家具制作工房、あるいは大工さんなどに愛用されていると思われます。

      他方、欧米でも、似たような複合機(combination machine)がありますが、上述のように組み合わせが異なる場合が多いようです。

      これは木材加工における仕口の考え方の違い、加工工程における機械選択の優先度の違い、などが反映していると考えられます。

      日本国内では、万能機に代わり、欧米に視られる複合機の導入はあまり見られないのも確かで、この理由は察するに、
      既に〈万能機〉というものがあり、それに代わるだけの需要が望めない。あるいは欧米の複合機には積極的に取り入れられているShaper(高速面取盤)、あるいはHolizontal Spindle Machineの活用方が普及していない、などの理由が考えられます。

      整理しますと・・・、
      欧米と日本の木工機械の導入、開発の歴史の差異があり、
      そこには彼我の家具産業において製造される家具のジャンルの違い、
      そこから規定される、製造工程の微妙な違いなどの反映を視ることができるのではと思います。

      少し咀嚼して言いますと、
      日本の家具の基本はハコモノです。タンスなどですね。
      そうしたジャンルの製造では万能機のコンビネーションが有用なわけです。

      片や、欧米では古くから脚物(椅子やテーブル)も重要なジャンルとしてあり、これらの製造では高速面取盤(Shaper)の活用はとても有用であり、広く一般的なものとして開発、進化してきたわけです。

      私も以前よりこの高速面取盤を設備していますが(本Blog記事から)、工房スタイルの方々への導入は必ずしも進んでいません。(うちで、その効用を実体験させますと、皆さん一様に驚かれるほどです)

      またHolizontal Spindle Machineは、椅子製造のような3次元造形における枘加工での有用性も日本では必ずしも一般的では無く、こうした複合機は評価の対象にすらならないでしょう(個人的には、次ぎに導入すべきマシンはこれだと考えているところです、もちろんコンビでは無く単体のものですが)。

      おおよそ、こうした説明になろうかと思いますが、Aikoさんの関心領域から少し外れてしまっているかも知れませんね。

      なお、欧米のマシンに関心を持たれていらっしゃるのであれば、
      日本国内で代理店展開されているところからの導入、
      あるいはダイレクトに海外から個人輸入されることも可能ですので、
      それぞれ、アクセスし、試みられるのも良いのではと思います。

  • 考察ありがとうございます。
    なるほど、箱と脚との説明で万能機事情はものすごく腑に落ちました。
    しかし手押しと自動の兼用機(同一の刃を使うタイプ)に関しては箱脚あまり関係なさそうなので疑問が残る・・・ と書いている間に2つほど思い浮かびました。
    私が思い浮かべている「日本の自動と手押し」は昭和の時代の中古機械。「欧米の兼用機」は最新のもの。
    日本のメーカーももっとこの市場が賑わっているのであれば本当は兼用機もどんどん作りたいのかもしれません。

    もう一つは、欧米の工場のスタイルはわからないのですが、
    日本の工場では工程ごとに各作業員がついた流れ作業になる事も多いので、1作業員1機械でないとだめなのかもしれないですね。

    国産中古機械を買うのが当たり前の世界ですが、もうそれもそろそろ限界なんじゃないかと思い欧米の機械についても最近調べておりました。 

    • 〈手押しと自動の兼用機(同一の刃を使うタイプ)〉へフォーカスしたお話しのご様子。

      工場のような作業ラインと少数名での機械作業、たぶんこれらは日本も欧米も変わりません。
      むしろ問題は、機械メーカーとしての経営採算性への期待というより、少ないかも知れないけれど、市場からの要請でコンパクトな複合機を製造し、投入するという木工界における使命に殉じる。
      やぼったい言い方をすれば、木工機械への愛情の多寡の差があると踏んでいます。

      日本のメーカーは以前もコメント氏からもあったように、欧米のコピーは得意でも、
      新奇性のある独自開発への積極性が薄いことと同じで、真摯に木工に向かうワークショップスタイル(工房スタイル)へ向けたコンパクトな兼用機(複合機)開発はやりたがらない。

      愛情が薄いわけです。

      加え、市場の規模も無視できない。
      日本は欧州と較べても、それなりのボリュームを持ちますが、欧米のメーカーは国境を越え、市場を獲得しようと努力しています。
      日本も急速な近代化を果たしつつある、中国をターゲットにしていくことで市場は開かれると思うのですがね。

      Aikoさんの木工への愛と比肩するだけの機械開発へのエネルギーを注いでくれるメーカーの登場を待つしか無いようです(残念ですが、叶わぬ夢でしょうけれど)

  • 角のみのボックス、12.7mmはお使いにならないのですか?うちではわりと重宝してますが。

    • 12.7mm、いいですね。1/2” でしょ。
      6.4、9.5、ときたら、次は12.7 ですからね。
      ただ、枘のオスを0.7という数値で合わせねばならないのが、ちと大変かな。
      これらも、個々の職人による判断(好みも含め)になってしまいますね。

      ところで、御社ではHolizontal Spindle bowling Machine が設置されていましたよね。業務内容からして・・・
      ところで、この刃物サイズの展開はどのようになっているのでしょう?(逆質問)

  • 昇降盤の定規の向きが鋸に向かって右側になれていたので、静岡の機械で左に付いてるモノがあり疑問に思って居ました。
    横切りのスライドテーブルの考え方が欧州とは逆なのも、この定規位置の考え方の違いなのでしょうね。勉強になりました。

    • さえちゃん、さん、初コメントとお見受けしますが、
      コメントありがとうございます。

      丸鋸傾斜の方向、フェンスの方向、作業者の立ち位置、等々、日欧・彼我の関係の違いは面白いですね。
      個々の使用歴による身体作法が身についているでしょうから、安全第一でいきたいものです。

  • 6mm 8mm 10mm 12mm です。
    それに加えある木工房の椅子で脚の木口にフェルトを差し込む仕様があるのでそれ用に13mm。
    あとプラパートを少し沈ませる時の為に18mmがあります。

    • 開陳、ありがとうございます。
      チャックの最大径、13とか16なんでしょうね。
      私も欲しい〜。

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