看板制作は楽しからずや
「看板倒れ」「看板が泣く」「看板を下ろす」「看板に傷がつく」と、看板が付く熟語には、数多くのネガティブな用法があります。
この否定的な用法から考えても、看板というものがポジティヴで重要なものであることを逆に言い表されていることに気づかされます。
またこれらの用法は、単に看板そのものを指すだけでは無く、そのお店、事業体が持つ、社会的な位置づけ、信頼性をも付与されていることが分かります。
それだけに大切なものということなのでしょう。
うちでは、以前の工房では玄関の上にロゴを彫り出したA3版ほどの小さなケヤキの看板を置いていただけでした。
工房の立地は周囲の住民が通るだけの道筋でしたので、アピールと言うより、主が何者であるかをささやかに示していただけでした。
新しい工房は、市道ではあるものの、交通の激しい2車線道路に面した立地ですし、比較的大きな建物ですので、それに見合ったものが必要とされていたというわけです。
枕木の枠材
枠材を含めた本体のサイズは 1,600w 2,400h
先にこのBlogで触れた、枕木を枠材として用いました。
看板そのものは 1,300w 750h 60t という、それなりのボリュームを持ち、木目が賑やかなケヤキを使いましたので、枠材としても本体とのバランスから重厚なものをと考えていたところ、ふと枕木という材木に着想が及んだというわけです。
枕木の物理的特性が耐水性、耐候性に強いのは当然としても、その粗野な感じに惹かれたわけです。
世の中に、枕木を看板の枠材に用いるのがどの程度あるのか分かりませんが、悪くない選択だと思いますが如何でしょう。
以下、少しその仕様、制作などに触れていきます。
一般に枕木の寸法仕様は、200w 140d 2,200L です。
これをそのまま使いました。
挽き割ると、注入された防腐剤の効果が減じますし、そのボリューム感からも、大胆に使った方が良いわけです。
また表面はプレナーも掛かっていない荒材ですが、そのテクスチャーの風合いが命ですし、また削ってしまえば、防腐剤の効果が減じてしまいますので、そのまま使うのが良いと判断しました。
ただ、加工と、設置は大変でした。
1本、50〜70kgほどありますので、機械加工は無理で、ハンドルーター、手鋸、手ノミなどを駆使するしかありませんでしたし、
設置もやっとの思いで、ふらふらとさせながら、壁面にボルト(4分)固定したものです。
本体のケヤキ看板も重厚であるため、トラック荷台に、高さを調整するための枕木を履かせ、何とか無事に固定。
周囲の方々からは概ね好評。
いわゆる看板屋が制作したものではなく、木を扱う職人による高品質なものですし、枕木のイメージを含め、迫力がありますので、好感を持って観てもらえると思います。
ケヤキにロゴ
20年ほど昔、地元で開催された原木市にて競り落とした、ケヤキの原木から採った板を使いました。
杢があるわけでも無い、100年に満たないほどの樹齢の木でしたが、こうして板目での看板に設えますと、いかにもケヤキらしい迫力で看板の価値を高めてくれますね。
加え、あえて一部に両耳(自然なエッジ)を残したのも、同様の意味合いからです。
ロゴの彫刻ですが、コンパクトルーター、手ノミ、彫刻刀などで彫り込みました。
当初、ケヤキの彫刻は簡単では無いので、専門業者に依頼しようかとも考えました。
レーザー彫刻、サンドブラスト、様々な手法があるようですが、さほど字数も多いわけでも無く、自分でもやってみたかったという声にしたがい、チャレンジというわけです。
思いの外、さほどの困難な作業では無く仕上がりました。
ロゴをトレースし、ルーター加工のための型板を準備しておくことで、思い通りのものになったと思います。
ケヤキは確かに硬いですが、繊維がしっかりしているので破綻はむしろ少ないわけです。
そして何よりも業者に委託するのではなく、自作するということの価値は、この看板が朽ち果てるまで持続するものであるでしょう。
このロゴは、篆刻字体に英字のコンビで作られ、起業した1987年に作成し、その後一貫して使ってきたもの。
Webサイトを起ち上げる際、URL表記を含め、あらためてブラッシュアップしました。
地域の方々にも馴染んでいってくれると嬉しいですね。
塗装ですが、ケヤキの板には撥水性の高い透明塗料を塗りましたが、枕木は無塗装。
プレナーも掛かっておらず、塗装には不向きなテクスチャーですしね。
経年変化をチェックしつつ、今後に備えましょう。
看板下部のサブ情報の板
この看板だけでは何を生業にしているのか判然としないでしょうから、看板下部に業務内容、施設内容など記したインフォメーションの板を付設。
これは中空のポリカ板で制作。
左右の枠材に止めているだけですので、ある程度の剛性が求められますが、耐候性、耐水性などとともに考えた場合、やはりポリカは有用です。
これに透明のフィルムに印字し、貼り付けたものです。
たぶん、数年は劣化せずにがんばってくれるでしょう。
なお、道路側壁面にも、アルミと樹脂でできた看板用の素材でロゴなどを切り抜き貼り付けようかとも考えていますが、あまり派手にはしたくないのが基本ですので、熟考中というところ。
キコル修羅ABE
2015-8-19(水) 20:54
小児
も大人も覗きたいでしょうね。困ったときに頼れる鳶木工第九土工。
職人のプレゼンスは、いざ地震・被災と言うときに炸裂してきましたね。
どんな時代でも生存に役立つ基本技能・道具設備は木の仕事でした。
artisan
2015-8-22(土) 07:54
地震、津波被害への対応として、木工屋は有用ですが、とりあえず、都市ガス推奨を断り、プロパンに、
市の水道と共に、井戸水汲み上げも設備。
自力更生!
あっ、そうだ !
3.11緊急災害ボランティアの際の写真も掲示しよう。
「働かせてください」
キコル修羅ABE
2015-8-21(金) 08:34
「看板を彫る。看板を掲げる」目出度い。いいかんじ。
ケヤキなので 木槌でたたけると禅房みたいで面白い鴨。
「看板をたたく」新広辞ことほぎ。
「目をさませる、屋主に気合いをいれる」意
白樫木槌は、加茂樫材のがいいですね。
「工房たたき」
壊れるくらいに客がきた —-
ストレス界塩装置 —-
etc.
「看板を書き換える」再スタート
「看板をはずす」
不悉
END
artisan
2015-8-22(土) 07:56
「看板をたたく」は、訪問を知らせる方途として、
仰るように禅房や庵ではお似合いですね。
大型機械ブン回していれば気づかないのでダメですけど、その代わり
張り紙・「下ノ畑ニ居リマス」(宮澤賢治)ならず
「奥ノ機械場ニ居リマス」と貼り付けておく、とか。
(ここ数日、コメント投稿困難な環境にいまして、レスが遅れました _(_^_)_ )