工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

黄金比

FWW誌は20年ほど購読してきたが、Webからの会員登録は今年になってからのこと。
登録後はHTMLメールが頻繁に届く。
FWW情報のみならず、HomebuildingCookingGardeningなどTaunton社の他のジャンルの媒体に関わる情報も含めてのもので、これらも楽しく見させていただいている。
さてFWW誌のWebサイトだが、英字であることでの困難さは仕方ないにしても、とても豊富なデータで有益なものが多いと感じている。
忙しい業務を縫っての覚束ないサイトチェックだが、それでも興味深い情報に接することができる。
またテキストだけではなく、画像はもちろん、ビデオでの提供も多く、FWW誌の再掲はPDFで提供されている。
PDFであれば、再利用での環境は申し分ない。
今日目にとまったのは、アーツアンドクラフツ関連の情報から「Quintessential Arts and Crafts」(#162)に紹介されている、キャビネットの寸法比率についてのもの。
03年の雑誌に掲載されたものだが、かすかだが記憶のかなたにある。
「DESIGNING USING THE GOLDEN RECTANGLE」とタイトルされた記事だ。
つまりa : b = b : (a + b)が成立するように分割されたときの比 a : bのことだね。
近似値では1:1.618
これをあてはめれば、とても安定したバランスを得られるということになる。
日本では黄金比と言われているね。
古代ギリシャの建造物から、美術品、また自然界にも見られると言われる。
レオナルド・ダ・ヴィンチの草稿にも知られていたことが記されているようだ。
キャビネットにあてはめれば 例えば横幅90cmだと高さは146cmということになるが、さらに上下を2分するとすれば、上の縦横比も同じく1:1.618(横幅を1.618に対し、縦を1とする)
つまり残る下は1:1、真四角ということ。
これがつまり「黄金四角形」(1:1.618という黄金比を持つ長方形は無限個の正方形で埋め尽くされる)ということだ。
ボクはこれを基準としたキャビネットを作った事はないが、興味深いものがあるのは確かなこと。
経験からも伝統的様式の飾り棚などを設計するときは、その全体のバランス、板厚などはとても気を遣うところだ。
こうしたことを意識化しつつ、しかしこれを微妙に、あるいは大胆に外すところから、新たな美しい比率を産み出すこともできるのか、いやいやそうではないのか。
さらにまた『ユークリッド原論』を紐解くことで、少しはキャビネット設計の水準も上がるのであろうか。

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