工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

衆院選投票日を明後日に控え ①

衆院選投票を数日後に控え、ニュースショーなどでは連日候補者の動向を報じ、情勢分析に忙しいが、私もここで少しくこのホットなテーマについて考えて見たいと思う。
決して難渋なものでも無いのでお付き合い願えれば嬉しい。

さて、公示日から行われている期日前投票だが、これまでの衆院選と較べてもかなりの数に上るとのこと。
これが投票率の増加を示すものであれば喜びたいところだが、たぶんそうしたものというよりは、この制度が衆知されてきたことによる活況なのだろうと思うがどうだろう。

私もたぶん22日の投票日には、豪雨と想定される悪天候の中、傘を差し指定された会場へと足を運ぶだろう。
ただここで1つ問題がある。私が選挙権を持っている選挙区での候補者には自信を持って投ずる人物がいないということ。

比例区には各党が候補者を並べており、意中の党の候補者に投ずることができるのだが、残念ながら選挙区にはおらず、さて、と首をひねり、たぶん投票所の記入コーナーでも、鉛筆舐めなめ、思案し、投票所スタッフに「さっさと投票してくださいね!」などとイヤミの一つも言われちゃうのでは無いかと今から心配するありさまだ。

冒頭解散という暴挙

そもそも、この衆院選挙が決まったのは、衆院が任期満了まで1年ほど残しながらも解散してしまったからだが、安倍政権からは解散すべき事由について何ら説得性のある理由など示されること無く、2年後の課題であるはずの「消費税の使徒を問う」であるとか、北東アジア情勢の緊迫化を指すつもりなのか、カビ臭い図書館の奥から引きずり出したかのような言葉「国難突破」であるからとか、取ってつけたような理由での解散総選挙に雪崩れ込み、600億円と言われる選挙経費を投ずるだけの正統性など見いだせないままに突入してしまった感が強い。

先の「仕事人内閣」と銘打たれた内閣改造があったばかりだが、その「仕事人」ぶりやいかに、と期待していたところだし、野党からは連名での臨時国会開催を議長に願い立てられながらも、3ヶ月以上も店ざらしのまま推移し、やっと次期通常国会も控える晩秋・10月冒頭の臨時国会召集が掛けられ、いざ、議論の府も動き出すかと期待するや、いきなり卓袱台返しの「冒頭解散」だというのであっけにとられてしまった。

その事由が、上述したように正統性の欠片も無いものであれば、この国の最上級の議論の府はいったいどうなっているのかと訝るのは私だけではあるまい。


巷間、いわゆる「モリカケ隠しだ!」との見立てがあるが、これには与党野党問わず異論を挟む予知は無いだろう。
安倍首相の記者会見では(モリカケ疑惑については)「丁寧に説明し尽くすのでご理解いただきたい」などと逃げを切っていたはずが、国会での「丁寧な説明」どころか、国会そのものを開かない、いや「丁寧に説明し尽くす」はずの臨時国会を召集しながら「冒頭解散」というわけで、一切の説明から逃げるという、あまりの分かりやすさ。

解散後の記者からの質問に対しては「選挙戦の中でこの問題を争点にすれば良いでしょう」などと嘯いたものの、これまで公示後、旬日が経過するものの、寡聞にしてこの問題を積極的に語られることは無いままに推移しており、信じやすく気の良い有権者はコロッと騙されてしまってるというのが実態だ。


「国難」云々にしても、何やら戦前のきな臭い埃まみれの言葉をつまみ出し、大仰に語っているわけだが、主要にはこの北朝鮮をめぐる北東アジア情勢の緊張を対象とする問題を指しているものと思われるが、1つはっきりさせておくが、北朝鮮の核ミサイル問題というのは、一義的には朝鮮戦争から発する1953年の「休戦協定」の当事国である米国こそがその対象国であり、国の存亡を掛けているといわれる、非人道的な武器である核弾頭を搭載したミサイルを北米大陸まで飛翔させる能力を獲得するための暴虐な行為なのであり、日本などは眼中に無いといって差し支え無い。

百歩ゆずり、日本が北朝鮮のミサイルのターゲットになるとすれば、米国との戦争状態に突入して後、集中する沖縄をはじめ、三沢、横須賀、厚木などの米軍基地への攻撃が想定されるところだろう。

現在行われている日米韓によるところの朝鮮半島を睨んだ合同軍事訓練は、そうした北朝鮮を「挑発」する意味合いを持つものとして展開されており、安倍政権からすれば、自ら「国難」を招き入れ、むしろこれを政治利用し、国民を扇動するところにこそ、目的があるのではとの分析こそが当を得ているのではと思う。

このところ新安保法制共謀法など、戦争体制へと盤石の法体制を整備しつつあるわけだが、この度の衆院選挙は、こうした法整備の延長線上に、与党で2/3の議席を確保し、年内にも改憲への政治日程を組むことこそ、最大の政治目的なのではないかとの穿った見方さえ説得性を増しているように思えてならない。

「希望の党 vs 立憲民主党」

さてところで野党はどうなのだろう。
安倍首相による冒頭解散のその日、小池百合子東京都知事は「希望の党」なる新党を起ち上げ、安倍首相の解散記者会見のインパクトを抑え込むほどのメディアの関心を呼び、それと同時に前原が率いる「民進党」は一瞬にして解党という事態に陥いるという、数週間前までは誰もが信じないようなことが突如起こり、政界から市中まで大騒ぎの事態に。


小説家、髙村薫氏曰く「政権政党だった野党が1日で消滅 まともな国では起きません」と厳しく断じていたが、マンガや小説の世界では編集者からまともに受け入れてはもらえないような非常識なプロットが白昼公然と行われるこの驚きは、まさに日本の政治の劣化を象徴する奇っ怪なる事態と言うべき代物だった。

民進党をまるごと抱え込み「希望の党」は一気に野党第一党へと躍り出るという荒技には、小池百合子その人のキャラとともに、大いに世情を沸き立てたのだったが、果たしてこれはいったい政治的にはどのような意味を持つモノだったのだろう?


小池百合子の政治家としての活動歴や、長らく秘書として苦楽を供にし、一時は都民ファーストの代表まで務めた野田数[1] の思想信条からも考えることはできる。

そして何よりも「希望の党」結成後、「民進党」との合流をめぐる「排除」や「踏み絵」などの彼女の言動からその危なっかしい権威主義、あるいは独善性、極右的体質は一気に誰もが認識するものとなったように、民進党の一部リベラルな勢力とはまさに「水と油」の体質を持ち、現段階では、そうしたヤバイ体質が知れ渡り、当初の目論見など完璧に潰えてしまった。

その後、「希望の党」には交われないとして、独自に選挙戦に挑む恰好になり、支援者、あるいはネット上の反小池の人々からの「枝野 立て!」の呼びかけに応え、慌てて設立した「立憲民主党」の勢いは日を追うごとに枝野本人の想定を超え、増加の一途を辿り、今や「希望の党」を呉すほどの支持を得るまでになり、対し、小池新党の結成と、その後の選挙戦における勢いは「まるで徒花じゃないか」と語られるまでに低落傾向をしめしている。


私の見立てとしては、本人はあわよくば選挙戦を有利に進め、他の野党との連携を図れば、自らも出馬し、自民党政権を打ち倒し、政権交代、そして首相の座を狙うまでに構想したのかも知れないが、それほど甘くは無いワケで、都知事の席を捨てず、代表の座で甘んじつつも、せめて、安倍退陣に追い込み、非安倍の自民党内勢力と大連立を模索し、そこで権力を握るという構想であったのだろうと思われる。

つまり、戦前の「大政翼賛会」と同様の戦争体制へ向けた構想を描いていたのでは無いだろうか。

いいように使われた前原民進党代表も、これに知ってか知らずか、一枚加わったというわけである。
いずれ小池ー前原の会談の実態も明かされていくのかも知れないが、前原は騙されたというメディア一般の理解では無く、むしろ小池の欲望を良く知り、民進党内リベラル派と言われる連中を徹底的に干し上げるという画策を意図した「希望の党」への抱きつきだったのではないかと踏んでいる。


いずれにしても、前原による民進党解党はまるで茶番であったわけだが、選挙戦を通し、急場しのぎの感が否めないものの、枝野をはじめとする民進党内の「希望」から「排除」された幹部を中心として設立された「立憲民主党」への期待は鰻登りのようで、各紙情勢分析では、比例票を含め、「希望の党」を上回る支持を獲得しつつあるとのことだ。

こうして小池ー前原のドス黒い目論見が潰え去りつつあるのは、実に幸甚と言うべきところだろう。

さて、この小池百合子の「希望」ならず、ドス黒い「野望」「欲望」は潰え、たぶん、選挙後、招集される臨時国会、あるいは通常国会過程では、この「希望の党」として赤絨毯を踏む栄誉に輝いた国会議員も、お尻の温まる余裕は無く、ぐっちゃぐっちゃになり、多くの新党がそうであったように、少数政党として生き残るか、新たな政界再編の中でもみくちゃにされ、本来の自分の思想信条がいったいどこにあったのかを自らに問いかける局面がそう遠くない段階で訪れるに違いないと思っている。(続

《関連すると思われる記事》


❖ 脚注
  1. 野田数氏とは? 都民ファーストの会・新代表は「日本国憲法は無効」の請願に賛成した過去 []
                   
    
  • 続きが肝心では内科と
    台風が世上荒らす前に
    慧眼をしらせたまえと

    危うい時代はみじかく
    だまし脅かしながらう
    地上の歴史は未だなく

    先見のひとはかしずき
    声をあげ不業をただし
    末代の汚濁羞恥消さず
    余すところなく伝えよ

    シーダーマウンテンの
    アベストテレス執事

    • 御意!
      ここでの情勢分析は残念ながらほぼ現実化してしまっています。
      小池「希望の党」は茶番であったのかもしれませんが、
      与党圧勝への道筋を掃き清めるものとして奏功したことは間違いがありません。
      つまり、野党共闘に強烈なクサビを打ち込むことに成功したのでしたね。
      その意味では「女性初の総理」をめざす小池としてはしおらしく「反省」しつつも
      野党分断の功労者、「安倍一強体制」の維持強化に寄与したことで
      お褒めに与っており、意外と後ろを向いて舌を出してる姿も彷彿とさせられ、
      気分が滅入ります。
      自民圧勝をもたらしたのは、野党乱立で票を奪い合う「小選挙区制度」にもあり、
      得票数と獲得議席数に大きな乖離があるのは問題が余りにも大きいです。
      若年世代が「寄らば大樹の陰」と与党支持に傾斜しつつある現在、
      有権者の意思を正しく国会に反映するには選挙制度の改革が必要になってきています。

      今の思いをひと言で述べれば、
      今日から明日の損得勘定で政治家を選ぶのでは無く、
      自分が理念的に本当に正しいと思う政治的信条に照らし、行使して欲しいですね。
      まさかそれがモリカケ問題を封じ、許容する政治党派であるとは信じがたく、
      それは世界のオワリだということに気付くべきでしょうね。

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