工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

「PPモブラー と 椅子の作り方」講演会にて

うちにはウェグナーのpp501が1脚ある。
15年ほど昔、ACTUSで購入したものだが、ナラ材、籐張り、ソープ仕上げの仕様だ。

数日前、とても美しい、同じシリーズのpp503[1] を観ることがあった。

こちらはチーク材の革張り。当然にもオイルフィニッシュのものとなる。
〈PPモブラー と 椅子の作り方〉とタイトルされた講演会でのこと。

講演会とは言っても前半はPPモブラーの設立当時のエピソード、NCルーター導入時のウェグナーからの受容のされ方など、とても興味深い話しが続いたが、その後ワークショップ的なスタイルに一転する。

持ち込まれた3つの椅子の中のその1つがPP503「The Chair」だった。
チークとは言ってもかなり赤みが増した輝きと、チーク特有の帯状の杢が美しい美品で、とても魅入られてしまった。



また、この「The Chair」のアーム+笠木の加工途上のパーツも持ち込まれていたが、こちらの材種はホンジョラスマホガニー(別称:真性マホガニー)だった。
チーク材とともに、いずれも稀少材であることは当然としても、PPモブラーとしては現在では残念ながら使うことのできない材種であるとのこと。
その多くがアッシュ材、オーク材、チェリー材で制作されているらしい。

講演に立ってくれたのは「スカンジナビアン リビング 東京支店」 代表の羽柴 健 氏だが、チーク材を軍政のミャンマーから輸入することの痛みと、非合法伐採のものをPPモブラーが使うわけにはいかない、との話しにはただ肯くしかない。
PPモブラー社の材料調達におけるコンプライアンスの重視に企業倫理を見る思いがした。

一方、ブラックウォールナットでの制作は考えたらしい。(ブラックウォールナットは潤沢に供給されているからね)
チーク、マホガニーの代替材にはならないとしても、他の白木とは明らかにイメージが異なる濃色材なのでチャレンジングと考えたのも宜なるかな、であろう。

しかしウェグナー没後の権利継承者のファミリーからは許諾を得られなかったとのこと。
ウェグナー本人はウォールナットで制作することは全く念頭には無かったということがその理由だそうだ。
ボクもそれには同意したいと思う。
(理由はいくつかあるが、好みの問題でもある)

質疑コーナーでは、制作上の企業秘密に類すると思われるところも惜しみなく丁寧に語ってくれたが、オープンに、フレンドリーに語ってくれた羽柴氏には深く感謝したいと思う。

*参照
Scandinavian Living 東京支店

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❖ 脚注
  1. pp501もpp503も、同じく「The Chair」と呼称されるもの。
    501が藤張りの方で、503が革張り []
                   
    

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