工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

器のためのミズメのチェスト

先日来制作していた器のチェスト、塗装もほぼ最終段階。

この依頼者は器のコレクションをしており、これを納めるためのチェストとして設計。

最上部の浅い抽斗はシルバーを整理するため、細かく仕切られる。
抽斗は半被せ。インセットで隙間が空くことを嫌った。
またフルエクステンションのスライドレールを用いる。
器の収納ともなるとかなりの重量になるためである。

こうした框組構造でのチェストは自家薬籠中のもので、全てがスムースに運んだが、最後思わぬ伏兵に悩まされることになった。
ミズメチェスト2

塗装も終わり、スライドレールを取り付けて仕込もうとしたのだが、いくつかの抽斗がとても堅く入って行かない。スライドレールの嵌め合いがおかしい。
抽斗から金具を取り外し、単体でテストするも、同様にやはり堅い。

あらためてレールをつぶさに見るも、これといった変形があるわけでもなく、判然としないな不具合だった。

販売店に訊ねても、お前はクレーマーか、と言った雰囲気の応対で埒があかない。

何とか自力更生で行うしかないと、あらためて検証。
思わぬ事が原因だった。
Lotが異なることで、嵌め合いに違いがあったのだ。

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iPhoneショット・美と食

昨日はこの日が最終日という美術館の企画展を2つはしごした。
まず開館時間に間に合うようにと急いだのが、静岡県立美術館。
6月中旬から開催されてきた「トリノ・エジプト展」

行かねばという意思は持っていたものの、日常の活動範囲の場所でもあり、いつでもいけるだろうという無計画さが、最終日まで繰り延ばすことになってしまった。
この報いか、朝早くから異様な混雑ぶりで驚く。
静岡県民がこれほどにも古代美術に関心が深いとは、ついぞ想定することさえしなかったボクが馬鹿だった(こういう場合はなぜか自分を埒外において考えるのが習わしだね 笑)

トリノ・エジプト
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戦後を生きるということ(続々)

今日も映画の話しから説き起こすことにしよう。
なぜなら、描かれた対象はボクたち2010年の北東アジアの国に生きるものにとって無関心ではいられないはずのものだが、〈あたかも質の悪い戦争報道であるかのように、「脅威としての敵」か「笑止の沙汰としての敵」の姿しか提示しない〉(08/12付朝日新聞夕刊・テッサ・モーリス=スズキ氏のコラム『北朝鮮の未来 想像を』から引用)メディアに代わって、この映画は隣国、北朝鮮の1つの実相をリアルに描いているからである。

『クロッシング』とタイトルされたキム・テギュンという韓国人監督による力作。

描かれるテーマは脱北者問題。

北朝鮮の炭鉱の町に住む三人家族。炭鉱で働く元サッカー選手のヨンスは、妻・ヨンハと11歳の一人息子のジュニとともに、貧しいけれど幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、ヨンハが肺結核で倒れてしまう。北朝鮮では風邪薬を入手するのも難しく、ヨンスは薬を手に入れるため、危険を顧みず、中国に渡ることを決意する。
決死の覚悟で国境を越え、身を隠しながら、薬を得るために働くヨンス。
脱北者は発見されれば容赦なく強制送還され、それは死をも意味していた。
その頃、北朝鮮では、夫の帰りを待ちわびていたヨンハがひっそりと息を引き取る。
孤児となったジュニは、父との再会を信じ、国境の川を目指す。
しかし、無残にも強制収容所に入れられてしまう…。
    (パンフレットより引用)

韓国人監督キム・テギュン氏は大勢の脱北者に徹底取材し、北朝鮮の民衆の日常生活、そして徹底した人権弾圧の象徴としての収容所をとてもリアルに描く。

経済的困窮、悪化する一方の食糧事情、公安警察により張り巡らされた監視国家。
東西冷戦が崩れ20年が経過している時代に唯一残った分断国家、朝鮮半島は戦後体制というものの一方の過酷な現実を象徴していると言って良い。

  ■ 蛭子能収さんの紹介Blog記事

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ミスと経験の蓄積

前回、ドジな加工ミスについて書いたが、お恥ずかしい話しだった。
いわゆるケアレスミスという領域のものだが、こういうミスは単純に不注意であることに起因する。
誰しもこういうことはある、このように猛暑が続くと集中力を欠くのも仕方がない ‥‥、などと居直るのは良くないだろうな。
こうした思わぬミスを避けるための決定的な考え方などあるとも思えないが、唯一あるとすれば、経験の蓄積だろうか。
職人の力量とは多くの仕事をこなす過程で技法を習得し、あるいはたくさんのミスを犯し、兄弟子にポカンとゲンコツを喰らい、もらったたんこぶの数だけ賢くなっていく。
つまり学習していくことでつまらないミスを避け、贅肉が絞られていくその量だけ熟練した職人として成長していくというわけだ。
“家具作家”などといった活動スタイルがあるとすれば、そうしたこととは無縁かもしれないが、職人という概念で考えれば圧倒的な経験に裏付けされたプロとしての誇り高い人といって良いだろう。

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ドジッた(“かんざし”も様々で)

かんざし1

キャビネット制作依頼に、FAX台をオプションで付加することになり作っていたのだが、額縁の留の接合、かんざしでドジった。
ルーティンワーク的姿勢であったための帰結。オヨヨ
反省、反省 !!

課金しないサービスオプションということもあり、シンプルな額縁に地板を落とし込んだだけの構造。
それだけであればミスとはならなかったが、見込み側を上下に大きく切り面を入れたことで“破調”をもたらしてしまったという次第。

うちではかんざしのための鋸入れは画像のような手法で行っている。
最も簡便、かつ安定的な切削ができる加工法だろうと思う。

  1. 縦挽き鋸をセットし、然るべき高さまで刃を出す。
  2. 必要とされるかんざしの深さに合わせ、前後方向、上下方向で同一寸法になるように曲金をあててストッパーをセット
  3. 被加工材の枠をフェンスに沿わせ、定盤上をストッパーまで運行させる。

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戦後を生きるということ(続)

(承前)
昨日《キャタピラ》を観る。第60回ベルリン国際映画祭で主役の寺島しのぶが最優秀女優賞を受賞した映画だね。

公開前に若松孝二を迎えてのステージ挨拶の機会もあったのだが、忙しく出掛けられず、全国封切りの翌日となった。

撮影期間わずかに12日間という若松組ならではの早撮りで、その舞台は帰還兵士夫婦の茅葺きの住まい、近隣に広がる田んぼ、そして竹槍訓練の場としての神社のみという実にシンプルな設定だが、描かれる時空の濃密さには圧倒されてしまった。

軍神として帰還した兵士は四肢を失った肉の塊でしかない芋虫状態(タイトル、“キャタピラ”の意)。この異様なプロットがまず衝撃的で、若松ワールドに強引に引きづり込まれる。
これを迎えるのは対比的に美しく貞淑な妻(寺島しのぶ)であるのだが、この二人の日常を通して戦争というものの非人間的な実相、そして国家というものの非情さを描く。

もはやヒトの原型を留めないほどの無残な姿にも人間の欲望(食と性)はあり、無為な日常の中にも食と性だけは過剰なまでに発露されるが、この帰還兵には四肢を奪われた中国戦線の内実が時としてフラッシュバックし、苛ませる。
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戦後を生きるということ

ボクは戦後間もない1948年の生まれ。いわゆる団塊と言われる世代だ。

3人兄弟の真ん中だ。兄や弟は生後間もない頃のスタジオでの記念写真がいくつも残っているのに、ボクのは無い。
何だ、オレはもらわれてきたのか? と、訝しく、あるいは自嘲気味に家族が集まった席で話すこともあったが、親父、おふくろにそっくりの顔だちからすればそれはない。
次男坊への期待の薄さも幾分含まれた処遇であったかもしれないが、むしろオシャレして写真館に出掛ける余裕など無い、とても貧しい時代だったということだろう。

戦後経済社会の荒廃状況下、人々は皆貧しく「貧困平等」のような時代だった。

1945年8月15日、いわゆる15年戦争と言われた日本の戦争は敗北を持って終わりを遂げた。

ボクが生まれた1948年という年は、サンフランシスコ講和条約までにはまだまだ届かないGHQ占領下であり、何もかもがカオスのような混沌とした時代だったと思う。
無論嬰児に記憶など留めようも無いわけで、脳裏に登場する最初の記憶は講和条約が結ばれる頃の断片的なものだ。

父親との二人の旅の途中、連れて行かれてた上野動物園の虎の檻の前で、とうちゃん、でっかい猫だねぇ、と周囲を笑わせたという笑い話は成人してからも嫌になるほどネタとして使われたが、ボクの鮮明な記憶はむしろ上野公園でのある光景の方だった。

白装束に身を包み、肩からアコーディオンをぶら下げ、軍歌を鳴らす数名単位の人たちだったが、彼らは片手が無かったり、粗末な台車に乗った両足が切断された状態だったりと異様な雰囲気で、判断も付かない小さな胸を苦しめるに十分すぎる光景だった。
傷痍軍人という人たちだ。

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Festool Domino、円高差益還元価格販売、だそうです

テクノトゥールズ株式会社はFestool社のドミノ本体を大幅に値引き、特価販売するようです(メルマガ報)。
米国から入手する場合との差をあまり感じさせない価格設定になっていますね。(米国内本体価格:$775.00)
ただ“限定仕様”という表記があり、これが何を指すものなのか、やや不明な要素もあります。
直接ご確認ください。

8月16日から3カ月間、フェスツール社のドミノ本体(ほぞ組み加工機)を円高差益還元価格にて販売します。
定価190,000円(税込)を99,750円(限定仕様、税込)にて。
その他の付属品類はお問い合わせください。
お引き渡しは9月に入ってからとなります。
今回は円高差益以上の特価となっています。


テクノトゥールズ株式会社
〒208-0035
東京都武蔵村山市中原1-30-10
tel. 042-569-1502
fax. 042-569-1572
e-mail: shioi@techno-tools.co.jp
Skype:techno-tools
mixi community:テクノトゥールズ
Twitter:technotools
facebook fan club:テクノトゥールズ
home page: http://www.techno-tools.co.jp

円環状の桟積み

桐下駄1


これ、何だか分かります?
今日はお盆ということで、父、兄らが眠る墓前と、仏壇があるる実家へと出向いた。
時折台風の余波を受けた横殴りの強い雨が降る中を車で走らせたが、実家近くの市道沿いのこの光景に目が留まり、慌てて車を停めiPhone4でパチリ。

ボクより上の世代なら見慣れた光景かもしれない。
下駄にする桐材を乾燥させているところだね。
井桁に組む、という言葉があるが、これは輪積みと言う。
荒木取りした桐材1枚1枚を井桁に組み円環状に積み上げていく。
梅雨時を含め、十分に雨風に当ててアクを抜きながら乾燥させていく。
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ミズメを想え ─「COP10」を控えて

ミズメ1

画像はミズメを鉋仕上げしているところだが、無垢板を加工素材とする木工所でもこうした光景は急速に消えつつあるようだ。

ボクがこの世界に没入する四半世紀前、すでに兄弟子からそうした懸念が漏らされていたが、今では市場に流通しているものはごくごく稀なものとなっているようだ。
兄弟子とは松本民芸家具傘下の木工所でのことで、この家具会社が用いる主たる材種がこのミズメだった。

ここではミズメは高く評価され、これを素材とすることの優位性と自覚をカタログなどで誇らしく語っていたものだ。
しかし既にその頃でも潤沢な供給量があるというわけでもなく、製作の全てをこのミズメで賄うことは叶わず、ウダイ樺(いわゆる“真樺”=マカバ)を併用することで凌いでいた。
ミズメという材種は分類としてはカバノキ科に属するが、カバノキ科の他の樹種のほとんどが○▽カンバと称するのに対しこのミズメという単独の呼称はめずらしい。(ミズメザクラという呼称も市場では一般的ながら、“桜”とは異なる分類であるので区別すべきだろう)

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