工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ウォールナット 筺

チーク筺
梅雨入り宣言したというのに翌日からは晴れ上がり、少し湿潤な空気がまとわりつくもののまずは快適な仕事環境で迎えた週明け。
今週は筺作りで楽しもう。
これは展示会用に複数個準備する予定のもの。
以前ほぼ同じデザインのものをチーク材にて制作したが、これを一部改良してブラックウォールナットの良材で制作しようというもの。(写真はチーク材のときのもの)
収納サイズはA4が入る大きさなので、文箱としても良いし、内部にマットを張り、ジュエリーボックスにも良いだろう。
家具の展示会というとどうしてもキャビネット、テーブル、椅子といったものが中心となり、木工ファン、工房 悠ファン(そんな人いるかな)が来場してくれても、なかなか手軽に買ってもらうものがないということになりがちで、双方困ってしまうということになる。
そこでこうした気が利いた小物は重要で必須のラインナップだ。
仕様は上述した通りだが、仕口は側板の接合を天秤差しという手法を用いるところがミソ。
いずれ完成したらご覧いただきたいがここを美しく高精度に加工するのがポイント。


ところでこの「天秤差し」という呼称は一般にあまり用いられないようだ。
「アリ差し」「蟻差し」などといった方が通りがよいようだが、江戸指物の仕口呼称では「天秤差し」という方が正確な呼称だ。(因みにアリというと「吸い付き送り蟻桟」というようなものを指す)
冒頭、「楽しもう」と言ったのはこの部位の加工のことを指して言ったのだが、「美しく」「高精度」に加工し、組み上げるのは木工職人の快楽の一つと言っても間違いではないだろう。
さて、他にもこうした小物の指物では、良く乾燥した材を用いること、4枚の板を極力目が通るように木取りすること、蓋の鏡板には吟味された美しい木目の部分を使うこと、などといった配慮がより重要となる。
小物だから簡単だろう、というのは間違いで、小物だからこそ精緻な加工と美意識が問われるということになる。
チークの時はその材の性質からくる加工の困難さがあったが、今回はブラックウォールナットなので、かなりスムースにいくだろう。
(チークは現在原木での入手が困難になっている)

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