工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

世界のクラフトマン御用達〈BESSEYクランプ〉コピー商品の悲哀

BESSEY クランプ TG-16
左:コピー商品、右:BESSEY TG-16

我々プロが使う道具の選定においては、よほど吟味し最良の物を使うに限るという、ま、至極当たり前なお話しを少し。
木工作業での様々な工程において使われるクランプもシンプルな機構の道具でしかありませんが、この例に漏れないようです。

8年ほど前、つい魔が差し、この当たり前の掟を破ってしまい、当然にも?後悔する羽目に陥ってしまった失敗談。

TG-12コピー商品 購入からの経緯

ある有名な木工関連グッズの専門店から、機構的にも、カラーリングもBESSEYクランプに瓜二つのF型クランプが安価に提供されていたのです(昔のことではっきりとは覚えておりませんが、たぶん本物の半値以下だったでしょうか)。

私はこのBESSEYのF型クランプは、起業時に25、20と、2サイズのものをそれぞれ6組づつ購入し、30数年経た今でも愛用し続けてきているのですが、その下のサイズのものもあればとの思いがあったところに、この商品が目に飛び込み、キャンペーン価格での提供などと言うキャッチーなコピーにそそられ、購入したのでした。

BESSEYの型式では TG-12という機種の相当品でした。

届いたものはBESSEYの刻印ロゴが無い事を除けば、瓜二つの、まさにコピー商品。

小型ですし、視た限りではBESSEYと遜色のない佇まい?を見せてくれてるので、コピー商品としての自己欺瞞を抱えつも使ってきたのでした。

劣化から役立たずへの移行

BESSEY クランプ TG

しかし、5年経過後あたりから、スライディングアームの顎部分が滑るように劣化してきたのです。
これではクランプとしての基本機能を満たさないので、使い物になりません。

それも宜なるかなでして、この可動アームの顎部分ですが、BESSEYではバーの左右に刻まれた6ヶ所の溝にこの顎をロックさせる機構として、ホーローネジが付属してるのに対し、このコピー商品にはそれがありません。

BESSEY クランプ TG-16

当初から気付いていたのでしたが、小型なのでそうした仕様なのかと思い込んでいたのです。
それは大きな間違いだったことがこの時に気付きましたが、騙しだまし使ってきたものの、この度、ついに6本ともお釈迦になってしまった。

なお、BESSEYでは、例えこのホーローネジが無くても、スライディングアームは所定の位置に固定され、滑ることがありません。

この違いがどこからくるのかは定かではありませんが、とにかく顎の根本部分が経年使用による機械摩耗でグリップが効かなくなったのでしょう。

この原因をどこに求めれば良いかと言えば、iron cast 鋳物の品質です。
両者、同じような鉄の鋳物を素材としていますが、その品質の差です。

大型の木工機械なども含め、鋳物はあらゆるところで用いられていますが、この鋳物には品質に大きなバラツキがあると言われます。
私はこの分野には詳しくありませんが、鋳物の“枯らしが悪い”とか語られるようですが、良質の機械は木工と変わらず、やはり用いる素材が重要であることは変わらないのです。

由緒正しいBESSEYへの買い換え

そこで良い機会ですので、あらためて本物のBESSEYのものに買い換えることに。
数千円をケチルことの愚かさを払拭するかのように、ポチッしたのです。

今回はダメダメなものの1つ上のサイズ(TG-16)にしました。
使える範囲が拡がるでしょうからね。

使用頻度も低く、それで8年しか使えなかったというのは、この種のシンプル構造の道具にしてはあまりにお粗末としか評することのできないものでしたが、今回購入したTG-16は30数年前に買ったものと同様、この先数十年は使い続けられるでしょう。
この種のシンプルな道具というものはそうでなくてはいけません。

あらためて思ったものです。「安物買いの銭失い」は、プロの世界でも変わらないのです。いえプロこそ、正しい識見を持ち、良質なモノ作りに資するための必要にして十分な品質の道具を使う、ということなのです。

BESSEY F型クランプ

①強化可鍛鋳鉄鉄のスライディングアーム

レールの砂時計様の断面に即し、締め付けた際に捻れることの無いような機構を持ち、背部にはホーローネジが埋め込まれ、これが固定レールのserration(鋸刃)にフィットし、効果的に滑りを防止しています。
この機構はとても有意なもので、締め付け個所にアプローする際、あらかじめその締め付けの間隔に近い所にスライディングアームを仮止め保持することができ、ハンドル操作を最低限の回転数にすることができます。

②強化可鍛鋳鉄のアーム

強化可鍛鋳鉄のアームは屈曲、変形圧力に耐えられるよう波形の断面を有し、防錆のために粉体塗装が施されています。
爪のような突起は、垂直に立てるためのものです。

③レール

焼き入れされた鋼鉄の固定レールは上部アームを突き抜け、固着され、断面は砂時計のような形状で、前後の台形の3個所、合わせ6個所に滑り防止のserration(鋸刃)が施されています。
このオリジナルな方式は、ボデークランプのような大型のクランプから、軽量小型のKLiklamp、最軽量のLMUまで変わらず、ホールドの高さを確保しています。

④ハンドル

この画像は樹脂ハンドルですが、私のものは木製。
当て金やパッドの交換も可能。6,000N(612kg)の強力な締め付け力を誇ります。

BESSEY社について

ドイツ、シュトゥットガルトのオーベルトゥルクハイムに1889年に創立された製鋼所が元となり、その後、1936年に、このF型原型となるクランプの特許取得とともに製造をスタートさせています。
現在は、クランプの他、金属用のハサミなども含め、1,600を超える製品を展開しています。
公式サイト

以前、このBlogでは 国内市場展開直後にKliklampという軽量のレバークランプや、SELF-ADJUSTING TOGGLE CLAMPS、あるいは鉄をもカットする万能ハサミなどを紹介したことがありましたが、他にもボデークランプなど、幾種類かのBESSEY製品に助けられ、木工の業務を、これらのおかげで楽しんでこられたということも間違い無いところです。

クランプを新たに導入する機会があれば、ぜひBESSEYを選択肢に入れることをお勧めします。その基本性能(鋼鉄、鋳鉄の高品質さから、設計製造にいたる全てにおいて)、機能性、耐久性、製品展開の豊富さ、ブランド力(企業理念)、あらゆる点において世界に誇る工具メーカーです。

TG-25、TG20,TG16

なお、画像のようにTG-25、TG-20の30数年前からのものにはプラスチックのキャップが欠損しています。
本体はほぼ半永久的な耐久性能を有するとは言え、これらは消耗品ですのでパーツとしてメーカーから供給されているのですが、残念ですが、日本国内での取り扱いが見あたりません。
そこで日本国内の総代理店である大同興業に直接発注掛けたところです。

ただ、国内在庫は無く、独本社への発注となり、何と半年後か、Covid-19感染状況下、それ以上に待たされることになりそう。😵


BESSEY クランプ カタログ

❖ BESSEY 公式サイト
❖ カタログ 2020〜2021 PDF:45.8MB(DL
  公式サイトには13カ国語のバージョンが提供されていますが、日本語のものは残念ながらありません。ただ国内総代理店の大同興業からやや簡略版ですが日本語版が提供されています。ダウンロード提供でのPDFデータです。全16ページ

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