工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

長台鉋は使っていますか

長台鉋
画像はご覧のようにありふれた大小3台の長台鉋。
前回超仕上鉋盤の稿で触れたように甲板を作っていたのだが、ジョインター(手押鉋盤)の刃にほんの少し刃こぼれがあり、矧ぎ口の木端面の精度が芳しくなかった。
こういう時には、手鉋の長台鉋にご登場いただき、さっと一鉋(ひとかんな)掛けるのが常道。
木工のキホンを知っている人にはありふれた話しだが、木端面の鉋掛けは、それ用の削台で行う。平らにおいて、鉋を木端に直角に立て、引く。
しかし甲板ともなればそうもいかず、作業台(Workbench)に垂直に固定して、カネがくずれないように両手でしっかり長台鉋を操作して、掛ける。
(うちではスカンジナビアンタイプのWorkbenchで簡便に固定しているのだが、そのような固定システムのない作業台の方々は、こうした長い距離の木端面を削るにはどのように対応させているのだろうか)
ところで矧ぎ口を取る削り作業に、何故普通の平鉋ではいけないのかと言うことだが、台裏の調整からして良い削りができる機構を持っていないからだ。
2点設置の平鉋で削れば、無限に中央部が削り込まれ、凹んでいくばかり。
3点設置の長鉋台では、それなりの規制が効くので安心して掛けることができる。
さてところで、画像の3台のうち、小さな方はどうするのだろうか。
これはボクのようにあまり大きくもない手でも片手で持ち任意にコントロールできる程のボリューム。(刃口はいわゆる寸4)
例えばあえて作業台に固定しなくとも可能な範囲の木端を削るときであるとか、あるいは抽出の側板の木端を削る際に、この小さな方の長台(ボクは中長台と呼称している)で、削台の助けを借りながら削ると快適に作業ができる。
昨年末、削りを見せて欲しいという若い木工家が訪ねてきたときに、大きな1枚板の甲板を削っているところをみてもらった時のこと、(こちら
当然にも基準面も、厚み決めも機械で削ることは叶わず、全て手作業で行ったのだったが、長台鉋が大きな働きをしてくれた。
基準面が出ていないような状態の板を平滑に削るには、通常の削りのような平鉋では叶うはずもないからね。
この熱心な若者もそれを見て、長台鉋の有用性に気付いてくれたようで、長台の購入に前向きになって帰って行った。
そして先日、燕の「平出商店」が来訪するというので、うちでは商売にならないが、○△(その若者の工房)に行けば長台を買ってくれるよ、との連絡をしたのだったが、恐らく今頃喜々として仕込みの最中ではないのだろうか。
こうして、まだまだ、いやいかに機械の導入が進んでいくとしても、木工の世界から手鉋の有用性が減じていくことはないのだろう。

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