工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

銑は使っていますか

銑
これ銑(せん)という刃物だね。知っているよね。
手前が新潟三条の刃物屋のもの。後ろが米国から個人輸入のもの。さらに後ろのものはちょうな、だね。
いずれも今加工している甲板のナチュラルエッジ(耳付き)の仕上げでは欠かせない刃物だ。
あまり普段使わないので、フィーリングを掴むまでちょっとタイムラグがあるけれど、すぐに手に馴染む。
シュッ、シュッと小気味よくはつるというのも、別次元の時空のようでいてなかなか楽しい。
ここでもやはり刃物は日本の工具鋼に限るね、とその秀逸さを再確認する。
切れ味が全く異なるからね。
ところで今こうしてタイプしていると、いやに肩が張る感じだ。
今日は天板削りでがんばりすぎたみたい。
若い木工家のSくんから「鉋掛けを見せて欲しい」という願い立てがあって、今朝早くから立ち会っていたのだが、恐らくはそいのせいなのか、年齢も省みずぐぁんばり過ぎちゃったようだ。
2m×1mを越える一枚板を手鉋で仕上げるというのは、決して容易い仕事では無い。
平滑面の精度判断力、繊維の並び方向の判断力、そして台鉋の練熟。
あるいはこうし仕事に身を投ずる意識の有り様。
そうしたものに支えられてはじめて平滑で逆目1つ無いすばらしい板面が獲得できる。
Sくんは初々しく、少しものめずらしそうに見ていたが、どこまで理解してくれたのかは判らない。
自身で同じような削りにチャレンジしてはじめて答えがでるのだろう。
ボクはあまり他人に仕事をしているところを晒すことを由とはしない。
上のように平常心を損なうことは間違いないだろうからだ。
例え請われたとしても、良い指導員にはなれないだろう。
自意識が強すぎるのか、あるいは恐らくはメンタル面における強靱さに欠けるところがあるからだろう。
一方基本的にはオープン・マインドであるし、手業などの領域ではいくらBlogで語ったとしても真の理解には達し得ないことの限界と空しさを知る立場なので、請われればあえて断るものでもないだろうと思うよね。
しかし対象の選択権は渡さない。つまりちゃんと理解し、活用できるだろうという展望がなけりゃダメだね。
それほど浮っついたものではないということ。
もう1つ言っておきたい。訓練校でも専門学校でも、もう少し実践的な鉋の仕込み、削り方をしっかりと教えてから社会に送り出して欲しい。
銑2

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