工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

Lamelloは使ってますか?

Lamello Top10

ボクが20年ほども昔に購入したLamello Top10という機種もその後何度か更新が繰り返され、今ではクラシックなバージョンになってしまっている。

更新内容については詳らかにしないのだが、恐らくは基本機能において大きな改善があるとも思えない。何故ならとてもシンプルで既に作り込まれた機種と思うからだ。
ただ1つ不満を挙げるならば、L型ジグの高さ設定において寸法決め、左右の誤差の極小化が機械精度の制約から苦労するところ。

最新機種においてこの点についての改善が見られるのかどうかは判然としなかったのでメーカーサイトで確認したら「Lamello Top20」という最新の高度仕様のものは高さ設定が0.1mm単位での微調整が可能となるダイヤルゲージ付きになっていた。(左右のズレの改善は不明)
他にも「ストップスコヤ」なるジグも付加しているようだ。(メーカーサイト、下記Link)

話題がそれるが基本的システムにおいてよく似ているDominoではこの高さ調整の設定機構はとても良いシステムとなっている。
被加工材の厚みに対応させいくつかのステップで設定することがイージーであり、左右のブレも気にする必要がない高精度。
さてクレーマーまがいの物言いはほどほどにして‥‥、

「Lamello Top10」所有してはいるのだが残念ながら稼働率はとても低い。うちの電動工具で一番出番が少ない。
しかしそうは言っても大いに働いてもらう時もある。
例えばうちの定番の椅子「アームチェア大和」の加工にも使われている。
どこにだろう?
隠す必要も無いから書くのだが、背束の2枚の板の剥ぎ部分。

この2枚の板はそれぞれ2度の傾斜を持たせてある。合わせて4度の傾斜で背あたりの快適さを確保しているというわけだ。
この椅子を積極的に販売していただいているあるギャラリーのオーナー夫人の販売トークには必ず次のような段落がある。
「この椅子の掛け心地を見てください。掛け心地を良くするためにいくつも作り込まれたところがあるのですが、例えばこの背当たり部分。微妙にカーブが付いているでしょう。しかもとてもシャープなラインでモダンに処理されて‥‥」

つまり背束の4度の傾斜を持たせた造形処理が座り心地に寄与しているということなのだが、決してボクの方からアピールしたわけではない。彼女自身で発見して、アピールポイントとしたようなのだ。

Lamello加工工程さて、こうした傾斜の剥ぎ部分は雇い核(やといざね)というものが一般に良く用いられる。

傾斜だからといって決して加工の難易度が高いというわけではなく、傾斜盤でやれば良いのだが、ここは「Lamello」ならではの得意とする工程になる。

簡単にその工程を‥‥

  1. 木取り
  2. 傾斜させながら剥ぎ口を取る(手押し鉋盤)
  3. Lamelloでの雇い核加工
  4. テーパー成形(厚み、幅方向それぞれ)
  5. 下部成形
  6. 剥ぎ口部分(表側のみ)に角面を施す
  7. サンディング
  8. 剥ぎ圧締
  9. 解放後再度のサンディング

〈この剥ぎ口部分の角面について‥‥〉
傾斜の内面であるため剥ぎ接着加工後の平滑仕上げは困難。こういう箇所は意匠的な処理も合わせ含め、あえて面処理をすることで解決する。少々の目違いがあっても何らそれが問題になることはない。(画像下、参照)

なおこの2枚の板はもともと1枚の板の中央部を割き加工後再接合する、あるいは1枚の柾目の厚い板(全幅/2)を必要な厚みで割いていき、これをブックマッチで剥ぐ、など様々。


ところでこれまでこのLamelloを使用しての他の部位の加工ということになると‥‥、
留め部分の雇い、主材と副材の接合箇所、コーナーキャビネットの接合箇所、
それと‥‥、スツールを複数台繋げて長椅子にしようという要望の際の接合金具部分(Lamelloの専用金具使用)といったところ。(* 過去記事

背束部分こんな稼働率ではLamelloがかわいそうではあるが、一般に日本の木工職人は丸鋸昇降盤を自由自在に使いこなせるので、あまりこうした工具に依拠する必要性が無いということからすれば、Lamelloに悲嘆されるのも仕方がないところだろう。


* 参照
■ Lamello メーカーサイト
 ここではLamelloを用いての様々な加工方法を動画で紹介している

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  • ラメロのファンです(笑)!
    これは本当に便利ですね。剥ぎ作業を繰り返す時などや、位置決め(特に一人で作業していると助かる)でとても重宝します。確かに微調整が難しいのですが、それを補うだけの魅力があると思います。

  • 超速コメントのIkuruさん、今晩は。ではなくストックホルムではまだ日が高いので、こんにちは ! だね。
    雇い核用の道具なので、組み終わってしまえばどこに使われているかは分からない。Ikuruさんの素敵なキャビネットのどこに使われているのか探してみましょうか。
    用途からすると、家具制作者よりも造作屋、設備屋といった現場作業者の方が重宝しているかも、ですね。
    類種は多いけれど欧州ではやはりLamello社のものがスタンダードなのでしょうね。
    コメントありがとうございます。

  • こんにちは。
    LamelloとFestool Dominoが目に入りましたので
    またお邪魔させて頂きました。
    実はちょうど、板の矧ぎ接ぎのために
    ビスケットの導入を検討していたところなのです。
    今までは手のかけられる物には蟻ざね・本ざね矧ぎで
    他、相じゃくり(平・いすか)、ダボ矧ぎや矢筈矧ぎなど。
    あ、雇いざねを使わないのは単に薄いさねを作るのが
    面倒というか苦手だったからなのですが
    「ビスケットを使えば精度・効率よく十分な強度の板接ぎが出来るなぁ」
    と思い至りまして(今更ですが;)。
    また何で今頃?と思われるかもしれませんが
    きっかけはテクノトゥールズ社からの案内です。
    Lamello製品が9月から「多少大幅な値上げ」とのことで。
    前々から気になっていた道具ではあるので
    「今ならUSAで$750〜$850のTop20S3が¥98Kか」
    「個人輸入と同程度か、かえって安い。」
    「値上げ前に思い切って買ってしまおうか」
    などと貧乏性なことを考えたわけです。
    となると気になるのがDOMINOです。(またかとお思いでしょうが)
    先日、artisan様のコメントに在りました発売キャンペーン価格は
    私が聞いていた価格=約$1500のことでしたが
    更に夏期限定で$1400を少し切るくらいの価格で出すとのこと。
    私はテクノトゥールズ社のポリシー、価格設定、
    サポート体制にはある程度、信をおいていますので
    こうなると正規サポートを受けられるという点で
    どうにか許容できる価格かも。
    (そう思えるのは発売元H社の設定定価が$2100!!!
    という事を知ったせいかもしれませんが;)
    今後もユーロ高基調はそう変わらないでしょうから
    輸入工具の購入を考えている私にとっては
    今夏が正念場です、色んな意味で。
    そうだ、オービタルサンダーも更新しなければ(先立つものが・・・)
    ※コメント内価格は税抜。ドル表示に深い意味はありません。

  • こんばんは。
    最近、輸入電動工具を扱うP-TOOLSがDOMINOの扱いを
    始めたようです。
    価格はどこも同じようなものですが。
    それにしてもDELTAの日本向け商品の供給はどうなって
    しまったのでしょうか?
    どこも取扱を中止しているようです。
    こういうことが続くと輸入電動工具の信頼を失う原因に
    なると思いますが。

  • AUDINさん、ようこそ。決断されるようですね。
    ビスケットジョインターは汎用性も高い工具ですので“一家に一台”ってな感覚でしょうか。
    Top20 S3は進化しています。ボクも欲し〜い。
    Dominoジョイントカッターの方は、これをさらに高度化したものになりますね。
    テクノトゥールズ社からの購入も、サポート体制等考慮すれば選択肢たり得るというお考え、理解できます。
    (Lamelloの内外価格差と較べあまりにも違いがあることは納得いきませんが)
    ユーロ高も徐々に影響してきていますので、決断は早めに ! ですね。

  • acanthogobiusさん、情報が早いですね。
    >P-TOOLSがDOMINOの扱いを始めた
    供給元はどこなのでしょう。HAFELEとは違うのかな?
    しかし我々個人が海外から輸入手続きして、これに利潤を載せて売っても十分ペイする価格帯ですね。
    >DELTAの日本向け商品の供給はどうなってしまった
    他のところでも同様の懸念が指摘されていましたね。
    残念ですがボクのところではDELTAのものは皆無ということもあり、お助けできるような情報もありません。どうぞ悪しからず。
    (FWW誌の広告を見る限りでは販売態勢の大きな変動を感じさせるものではありませんがね?)
    詳細判明しましたら教えてください。

  • こんばんは。
    うちは巾矧ぎはラメロです。
    やっぱりあんまり使いませんが・・・
    巾のひろ〜い材を使うようなものを
    そもそもあんまりやりませんしね。
    それより使用頻度が少ないのがボッシュのジグソーです。

  • ユマニテさん、コメントありがとうございます。
    現代の板剥ぎのポイントは“雇い核”よりも“剥ぎ口の精度”と“ボンドの選択”ですからね。
    したがって“雇い核の効用”は接着強度の増強ということもありますが、記事のような傾斜物のような特殊なケースを除いては、“めちを無くす”、という方が大きいかも。
    またうちも同じようにBoschのジグソーを持っていますが、帯ノコが使えないような条件で働いてもらう、という感じですね(でも無いと困る)。

  • やはりDELTAの中で日本のマーケットの占める割合が
    非常に小さいということでしょうね。
    剥ぎ口部分の角面に面処理を施すとは私には考えつかない
    かもしれません。剥ぎ面はただただ面一にと言う考えは
    単純すぎますね。
    しかし、artisanさんのウォールナットはいつも、きれい
    です。材の良さもさることながら面処理が適切なのだと
    思います。参考になります。

  • acanthogobiusさん、いつもありがとうございます
    海外からの木工機械でテーブルソーのシエアを考えればDELTAが圧倒しているとのではと認識していますが、メーカーの栄枯盛衰も時の流れ?
    面処理はとても重要です。表情を与えるだけではなく、接合部をなんでもかんでも“さすり”(=面一)にするのではなく、面処理で上手に逃げるのが巧いやり方の1つですね。
    また機会があったら詳しく記事にしてみようかな。
    実際ブラックウォールナットは美しいです。画像のものはナチュラルのオイルフィニッシュです。(レタッチで色調整しているわけではありません ^_^; )
    産地、植栽にもよるでしょうが、しかし通常市場で流通しているものからはこのような発色はしてくれません。
    原木を求め、自身で製材・乾燥(天然乾燥)しなければちょっと無理かも。

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