工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ホゾ取盤の効用

ホゾ取り盤

4軸ホゾ取盤


画像は4軸ホゾ取盤という木工機械。
個人工房でこうした機械を設置しているところは多くないかも知れない。
しかしある程度のボリュームでのキャビネット制作、ドアの制作などにはその能力を使いたいもの。
ぐぁんばる家具屋はもちろん、建具屋には必須の機械というわけだ。

ホゾ建ての無垢の家具を量産するためのもので個人工房には無縁な機械、などといった見識しか無いような御仁には意外かも知れないが、小Lot生産を旨とするところにも有用な使い道があることは知っておきたい。

一般には框組(かまちぐみ)の仕口を加工するためのものとして開発された機械だが、椅子などの、いわゆる曲者(クセモノ)と言われるような複雑なホゾの仕口成形に大いに活躍してくれる。
ボクの導入設置への動機もそうしたところから。

通常ホゾ加工は丸鋸昇降盤を使って行うものだが、椅子などにおいて角度処理が必要であったり、被加工物が円弧状であったりと、異形なものへのホゾ付けは困難を伴う。

こうした時、このホゾ取盤では適切な治具を用いることで、高精度に、安全に、簡単に、高能率に加工を進めることができる。

まずこのホゾ取盤の構成だが、

  1. 端切りための丸鋸
  2. 上下のホゾ切削のための2枚のカッターブロック
  3. 面取りのための縦軸カッター

と言う構成。

つまりホゾの端切り、胴付きの切削と、ホゾ取りの3工程を一気に行うことができ、さらにはそこに馬乗りなどの面形状を施すことができる能力と特性を持つ機械である。

こうした特性は他にも様々な汎用性があり、例えば椅子の笠木、帯などの円弧状部品のホゾ付けなどにはとっても有用。

うちには「座布団椅子」というラダーバックの椅子があり、このラダーは1組、12本が必要。
この「座布団椅子」を制作する時は10本単位を最低Lotで行うので、120本のラダーが必要ということになる。
これをいちいち丸鋸昇降盤などでやってた日には朝からやっても日が暮れちゃう。

このホゾ取盤でやれば、1回10本単位でセットしてスライドテーブルを12回〝行ってこい〟すれば高精度な加工が終わってしまう。

このように椅子を中心に制作している家具屋であっても、Smartな頭脳を持っている人であれば、導入意欲を掻き立てられる機械ではないか。

さて今日は、そうした複雑なホゾではなく、スタンダードな活用法、キャビネットのホゾ加工の紹介である(脱力させてしまった?)。

馬乗り加工

馬乗り加工

ホゾ取り盤

ホゾ取盤解説

小さな框組のキャビネットなのだが、帆立框を蛇口(馬乗り)で納めるための加工。

ボクの框組キャビネットにおける帆立構成は、面チリの場合も少なくないが、最近ハイアマチュアのacanthogobiusさんが丁寧にも蛇口で帆立を作っているのを拝見して、ワシもまじめに取り組まないと、ということになった。

一品もので仕口の数が少なければ同じ蛇口でも丸鋸昇降盤で専用カッターを装着して行うことも多いが、今回はちょっと量もあったので、ホゾ取盤を使うことに。

この機械はセッティングまでが大変で、少ない本数だと昇降盤の方でやれば全ての加工が終わってしまっているのに、まだセッテイングで右往左往ということになりかねない。
いや、事実そうなのである。

今日も久しく使っていなかったということもあり、セッティングにやや手間取ったが、首尾良く蛇口の仕口を作り終えることができた。

画像から解説すると‥‥

  • ① 上カッターブロックで馬乗りの反対側のホゾを切削加工(矢印 白)
  • ② 下カッターブロックで馬乗り側のホゾ切削加工(馬乗り部分とと干渉しないようにカッター先端位置を後退させておく。カッターの毛引きの筋が見える)(矢印 黄色)
  • ③ 縦軸に馬乗り専用カッターを装着して面形成(矢印 青色)

馬乗りカッター

馬乗りカッター

家具職人であれば、1つの加工目的への道筋も、多彩に持っているのが望ましいよね。

その要求されるLot数はもちろんのこと、最も安全に、高精度に、合理的に到達するためのプロセスは多様であり、これらのオプションの中で最適なものを見いだし、これを使いこなせる柔軟な頭脳と、豊かな経験を獲得しておきたい。


hr

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  • 家具用には、もう少しコンパクトでも良さそうですが
    基本的には建具用にできているので、この大きさが
    必要なんでしょうね。
    この機械をもってしても、さすがに4方胴付きを一発で
    切削することはできないんですね。
    始めから、2方胴付きで設計することになりますか?

  • 確かに小さな機械ではありませんね。
    縦軸が省略された機械もあるようで、こちらは少しコンパクト。

    ホゾ加工は胴付きを基準としなければならず、どうしても被加工物対応で移動テーブル側の長さが必要ですのでね、仕方ないかなと。

    四方胴付きは確かに一度ではできません。
    もちろん、設定を変えれば可能で、2回分の操作が必要ということですね。
    また2枚ホゾも3枚ホゾも(笑)縦軸にスペース分のサイズのカッターを装着することで可能となります。
    ただ、今回のような馬乗りは仕口の構造デザイン上無理ですね。

    それと、例えば訓練校などにはほとんど設置されていて、OBは一通り学習してきているはずのものです。

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