Fine Woodworking 誌が届く
今朝 FWW No.210が届く。
今号、実は密かに期待していたものがあった。
ハハ、隠すまでもない、J・クレノフ関連記事。
前々号(No.208)でも簡単な訃報とともに、クレノフキャビネットの制作方法の紹介があったのだが、残念ながらそれはしかし業績を振り返るにふさわしい内容というものではなかったとの思いは強く、次号に期待しよう、というものだった。
きちんと特集でも組んで編集すべき対象であると思うからね。
何となれば、雑誌メディアにおいて J・クレノフをそれにふさわしい内容と分量において紹介してきたのがこのFWWであったし、さらには彼の教え子に負う記事がなければこの雑誌の構成・編集もできなかったのではとも考えられるし、またそのことによって雑誌のクォリティーを規定づけるものとなったとも言えるわけで、そうした貢献度の高い木工家への信義の尽く方の作法というものがあろうと思うからだ。

さて、そしてページをめくれば、確かにいくつかの関連記事が上がっていた。
目次のすぐ後の「Letters」というところに1本の投稿、そして「readers gallery」は「THE KRENOV LEGACY」とタイトルされたCR・Fine Woodworking program」の卒業生の作品の数々で占められていた。
それぞれ個性豊かであり、Fine Woodworkingのスピリッツを秘めたものだ。
ざっと見た限りでのチェックだったが、今後においても「特集」などという構成はもはや期待すべきものではないのかも知れない。
その理由を考えてみれば、1つには、インターネット社会という時代背景が少なからず影響させているのではないのかな。
このFWW誌自身がWebサイトを設置運営しているのだが、その活用の手法は半端ではない。ほとんどのFWW掲載記事がPDFとして提供され(雑誌購読者を対象とした認証が必要)、掲載できなかった取材記事が「Online Extra」として編集されていたり、Webならではの機能、動画がふんだんに提供されている。
したがってJ・クレノフ関連記事、訃報に関しては既に様々な記事がWebに上げられており、隔月刊という発行スタイルからして、時事性の強い事象は雑誌での扱いが難しいという側面はあるのだろうね。
つまり、紙メディアと、Webが有機的に連携し、読者は双方へとアクセスすることで、編集者の意図をより深く理解する、ということであろうか。
今朝未明、サンフランシスコで発表されたApple社の新しい革新的なデバイス、iPadはそのクールなデザイン、機能で市場に大きなインパクトを与えるであろうことを多くのメディアが伝えているが、実はあまり触れられていないところで大きな影響を及ぼすとみている。
どういう事かと言えば、書籍など紙媒体の流通販売形態を大きく塗り替えるエポックになるのではと考えている。日販、東販といった取次店などは無用となり、あるいは印税の70%はライター、エディターへと振り分けられる(既存システムの7倍)といったように。(近く、別記事で考えてみたい)
そうした時代状況に先駆け、FWW誌は周到にWebに大きな投資をしているとも言えるだろうね。

しかしこの素人解釈には半分納得しつつも、おそらくまた次号でも記事を探し求めるのだろうな。
なお、FWW No.210「Letters」への「Anissa Kapsales」という笑顔のすてきな教え子の投稿は、とても良いものだった。
「・・・Perhaps what struck me the most was his enthusiasm for wood and woodworking, undimmed after so many years.」と結ばれていたが、
こうしてクレノフのスピリッツは、若い木工家へと継がれ、そして豊かに熟成され、発展していくのだろう。