工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

メディアなどから見るJames Krenov氏の訃報(続)

NewyorkTimes

米国メディアでは、昨日『New York Times』に比較的詳しい評伝が来ていた。
『New York Times』(09/09/19付)

この『New York Times』の記事は形式的な評伝に留まらず、クレノフの家具制作の本質がどういうものであったかを具体的事例に沿った解説を試みるなど、踏み込んだ良い内容となっている。

同居していた娘、Katyaさんによると父親クレノフは死の床で白檀の木片を手にしていたという。
“a pre-Kerouac hippie,”は、どのように訳するのが適切か分からないが、クレノフ氏の精神世界、思考スタイル、行動規範などの本質の一面を語るものなのだろうね。

「TOOLCRIB.COM」
このサイトでは、ネット上の関連ページが網羅的にリンクされていて、良いガイドになっている。

以下、そのリンクからこれまで触れていなかったサイトをいくつか。

「transcripts of Krenov interview done by the Smithsonian」
ちょっと旧く2004年のものになるが、スミソニアン博物館による長時間のインタビュー記事は深く読み込むことができありがたい。

「WoodCentral Interview with Krenov」
木工従事者としては興味深いものかもしれない。
WoodCentral という木工コミユニティーにゲストとして呼ばれ、ここでチャットをした時のログだね。

「A Conversation with James Krenov」
これは「FWW誌」#162(2003年)に掲載されたインタビュー記事。

サブタイトルにも引用されている文言だが、インタビューの最後に「どのように記憶されたいか」との問いに対し、
“stubborn, old enthusiast”(年老いた熱中頑固オヤジ ?)と応えていたのが、彼らしいというか、つい微笑んでしまうものだった

なお、あらためて書くのも辛いものがあるが、残念ながら日本国内では紹介すべき新たな記事は見あたらなかった。
Blog読者の方で、他に良い記事があるようであれば、ぜひご案内いただきたい。

なお、「FWW誌」では、最新号に「Sam Maloof」が特集されていたように、次号あたりでJames Krenov氏の特集が組まれることも大いに想定され、期待したい。

しかし、考えさせられる。
このスミソニアンのような国家レヴェルの機関(スミソニアン博物館は私立で設立されたものだが、現在運営資金の多くは合衆国政府が負う)が一木工家を高く評価し、その作品を保存に値するとする、評価基準の在り方にはただただ驚かされる。

art’s & craft’s への社会的要請、芸術的評価への彼我の差異はあまりにも大きい、ということと、それを担う作家、作品の力量、資質の差異もあるということか。(相補の関係だよ)

* 追記(09/09/23)
知人の木工家・大竹工房さんのサイトに「カレッジ・オブ・レッド・ウッド」訪問の時のエピソードが上げられていた。
http://www5f.biglobe.ne.jp/~woodwork/
から、左メニュー「週刊マルタケ雑記」 >>過去のマルタケ の最後段からたどってください。
(対象頁URLは長すぎて、このBlogレイアウトを崩しますのでTopから辿ってください)
検索で拾われなかったのも、サイトのページ構成がフレームであったためですがお許しください。

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • a pre-Kerouac hippieはビートニクで有名なジャックケルアックよりも早いヒッピーだとちょっとおどけたつもりの表現では無いでしょうか。

  • どなたか存じませんが、“a pre-Kerouac hippie,”の意味するところを示唆していただき感謝であります。
    恥ずかしながら、この世代のビートニク(ビート・ジェネレーション)についての知識はありませんでした。(北米文学、北米戦後社会、全般について無知)
    そうしたものがベースとなって、60 – 70年代のカウンターカルチャーの息吹とともに、Krenov氏の著書(木工家としての半生)がアメリカ社会に熱く迎えられたということなのでしょうね。
    ありがとうございました。

  • 国内からの反響を1つご紹介。
    検索でひっからなかったものですが、大竹工房さんのサイトに記事がありました。
    本エントリ本文に「追記」として案内させていただきました。
    大竹さん、遅くなってごめんなさいね。

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