フェザーボード(続)
誤った使われ方は何故?
一昨日上げた記事「フェザーボードの働き」では追記を余儀なくされるという失態を演じてしまったが、少し補足的に記述した方が良いと思った。
昨日、産地でもある静岡市の著名な伝統的木工職人の下で修行している人が所用で訪ねてきた際、このフェザーボードが話題となったのだが、意外にも彼の親方はそうした治具の存在を知らないのだと言われる。
なるほど。確かに以前一時世話になった木工所にはそうしたものは無く、この親方からもめずらしそうに見られたことを思いだした。
一昨日は「こんなありふれた治具」という枕詞で始めたのだったが、どうもそうではないらしいということが徐々に分かってきたのだが、ぜひ知見のない方にはこれを機会に関心を持っていただきたいと思う。
こうしたものに限らず、木工の世界には意外にも標準的なスタイルと考えているものが実はそうではなく、とても地域的な偏倚があるように感じることが少なくない。
伝統工芸の世界などでは「一子相伝」という伝承が当たり前ということからすれば、こうしたことは決して不思議なことではなく、近代化以降も、そうしたスタイルが踏襲されて来ているという側面もあるのかもしれない。
ボクはこれは決して封建遺制などという文脈から捉えようとは思わない。
工芸世界という独自の発展を遂げてきた分野では、ある種1つの制度的システムであっただろうし、近代化以降、徐々にそうしたものが薄れつつ今日に至り、工芸世界というものの自律した展開の困難も、そうしたものに起因するという側面もあるだろうから、一概に否定できるものでは無いと考えている。
一方で、ネット社会の到来は、海外からの情報が溢れかえり、誰しも「featherboard」に手軽に触れ、またアクセスすることが可能となり、しかし残念ながら、その本来の機能を誤って捉えることに繋がり、危険な治具だとの風評が出てしまうと言うのも、情報フリー社会の悪しき実態であるのかもしれない。
これを国内でのキャリアの木工職人が使いこなし、その本来の使われ方を熟知し、また次の世代へと伝承されていくには、まだまだ多くの時間が必要なのかも知れない。
あらてめて整理すれば
部材のリッピング、小割などにfeatherboardを使うものでは無い。
あえて使う場面を想定すれば、かなりの長尺もので、フェンス密着が上手にいかないような時、ぐらいのものか。
それ以外では手で、あるいは短尺材では押し棒で送材するのが、もっとも安全で高精度にできる方法だ。
つまりこうした作業ではfeatherboardの力を借りる意味合いは無いと言うこと。
こうした作業において、下手にこれを使うことでキックバックのリスクを高めてしまう。
確かに無意識に送材するのではなく、フェンス側に圧力を加えつつ送材するという、少しばかりの緊張と、経験も必要となってくるかも知れない。
昔、このBlogでも触れたことがあったが、ある訓練校では、こうした丸鋸昇降盤での小割作業は危険だからと言って、やらせないところがあるということだった。
これは俄には信じがたい実態であるにしても、確かにある程度の経験が必要とされることを認めるとしても、なお、あらためて確認すれば、「丸鋸昇降盤をいかに使いこなすかが、木工職人としてのイロハのイ、であることを銘記すべき」ということに尽きる。
小径材、薄い材などへのカッター切削など
このfeatherboardが圧倒的にその加工目的を叶える補助治具として有用であることを知っていただきたい。
羽目板(鏡板)への面取り加工にもとても有効。
(これは高速面取盤、大型ルーター盤を除いての話になるが)
アメリカンスタイルの木工技法では、ハンドルーターでこうした作業を行うというのが見掛けられるが、およそ、その切削肌、切削作業の安全性、セットアップの容易性、等々、全ての領域において丸鋸昇降盤で行うのが賢明なやり方になる。
長尺もの、ボリュームのある板の木端、木口へのアプローチ
これはとても困難で、「親方 !、そっちを支えていてくださいな〜」などと人の手を借りるより、このfeatherboardを使うことで、よほど安全でより高度な加工が果たせるというもの。
簡単な事例を挙げれば、複数枚で構成されるテーブル甲板の雇い核の小穴を突く作業は、このfeatherboardが無いととても無理な相談、といっても過言ではないほどだ。
電動工具のカッターというのもあるが、これでは木端へのアプローチはとても難しい。
おおよそ、こんなところでご理解いただけただろうか。
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