ウィンザーはボーリングがキモ
ちょっと不鮮明な撮影になってしまったが、ロクロ脚、貫通ホゾへの割クサビ用スリットの機械加工の様子。
ウィンザーチェアの加工の要諦の1つはボーリング(穴開け)だね。
座板、あるいは脚部、アーム、笠木などへの穴開けをいかに高精度に開けるかは基本的なポイント。
ほとんどボクはウィンザータイプの椅子は作らない。
でもたまにはそれらしきことはやる。
今回のものは「ちょこっとハイスツール」と名称された椅子(「暮らしの中の椅子展」入選)だが、脚部の加工順序を間違ってしまった。
加工順序というのは何によらず大切な要素だ。
様々なケースがあるが、うちでは加工を終えた後の仕上げ削りのプレ段階として、一通り水引きをして「超仕上鉋盤」を通す。
しかし例えば平角の一方を傾斜カットさせるとした場合、その状態では「超仕上鉋盤」は使えなくなるので、傾斜カットの前に「超仕上鉋盤」を掛けるというようなこともやる。
他にも様々なケースがあるが、それらは個別具体的に加工順番を考えねば合理的かつスムースに加工が進まなくなることは少なくない。
今回もロクロ脚への足掛け用の穴開けの前に、貫通ホゾへの割クサビ用スリットを付けておきべきだった。
何故なら、座板の繊維方向と直角の関係になるような方向へとスリットしなければならないので、その位置関係は注意を要する。
あらかじめスリットを入れてから、それを基準として穴開けする方が作業上よほどやりやすい。
めったにやらないウィンザータイプなので、これを間違ってしまったというわけだ。
結局、水準器を動員して、ホゾ穴に仮の貫を入れ、これに水準器を置いて、これと直角に空けることで事なきを得た。やれやれ。
(この小さな水準器は様々な加工工程ででよく使われる。小なれども精度において劣るものではない)
繰り返しで恐縮だが、ウィンザーチェアの加工の要諦の1つはボーリングだ。
そこであらためて穴あけにおける2方向の角度の求め方について(下図参照)
tanR= |
tanA |
tanB |
tan2T = tan2A + tan2B
こうしたボーリングの方法についてはいくつかの方法があるように思う。
座板はあくまでも水平に置き、ハンドドリルを2方向に傾斜させて空ける。
具体的には2つの分度器を使う、あるいは角度設定のジグを作って行う、などだね。
でも今回紹介した方法が高精度で確実にいくように思う。
ただ、座板の傾斜角度の設定を間違うリスクもあるので注意を要するかな(そんなん、オマエだけだろうって…… 苦笑)。
ここ数日すさまじい寒さが続く。
工房内はしっかりと暖めて、怪我の無いようにご自愛のほど。
春よ来い !
![ハイスツール1](wp-content/uploads/100206a.jpg)
数式のHTML記述なんて初めて、ということだったがまだまだ学習が足りん。
acanthogobius
2010-2-7(日) 10:19
aritsanさんも、作る機会が少ないと間違えることもあるんですね。
リカバリーもまた技術と経験が必要なのかもしれません。
AとBを入力するとTとRを計算してくれるウィンドウズ用フリーソフトが
あります。座面の高さを入力すると、その角度の時の材の長さも計算します。
上記の式を表計算ソフトに保存すれば同じことですが。
artisan
2010-2-7(日) 18:55
>作る機会が少ないと間違えることもある
そんなこと、しょっちゅうです(苦笑)
性格がaboutというか、学習できないというか……、ムニャムニャ
>フリーソフトがあります
そうだったのですか。HTML記述で苦労することもなかったわけですね。
因みにacanthogobiusのボーリング手法はどのように?
acanthogobius
2010-2-7(日) 20:16
ありがとうございます。
私はラジアルボール盤にレーザー装置を取り付けて使っています。
Tはラジアルボール盤のヘッドを傾けて設定し、Rはレーザーの基準線から
の角度で設定しています。
安いラジアルボール盤なので剛性が今一ですが、設定はすごく簡単です。
うずまき
2010-2-7(日) 21:31
こんばんは。
artisanと同様の方法と、角度ジグ+くりこ併用です。
差し支えなければ、教えて下さい。
足掛けは、回り止め等不要ですか?
artisan
2010-2-7(日) 23:01
皆さんいろいろな手法でされているようですね。
ボーリングの対象と環境に合わせて、適宜というフレシキビリティーが良いですね。
足掛けの〈回り止め〉ですか?
ホゾはかなりタイトなものですし、接着してしまいますので特段の細工は不要なのでは?
この足掛け(貫)のホゾは、いわゆる「プラグカッター」と呼ばれる刃物で作りましたが、同サイズのドリルで穿った穴径とジャストフィットでした。