フェザーボードの働き(重要な追記あり)
フェザーボードが竹製?
画像のフェザーボード、もう20年以上も使い続けてきている。
肝心な部分が一部欠損しているけれど。
機能においてほとんど障害もないのでね。そろそろ更新時?
なぜ、こんなありふれた治具を記事にしたかと言えば、起業する前の事、世話になっていたある木工所の職人の一人が、このフェザーボードを竹で作っていたことを思い出してしまったから。
皆さんはどんな風に作っているのだろう、という素朴なギモンが‥‥。
うちには4つほど、サイズ、機能の違いで用意している。
全てはフツウに堅木にスリットを入れ、櫛状にしたもの。
これにボルトを通す穴が開口しただけのシンプルなもの。
しかし件の竹製。
木の板に、丁寧に竹でこしらえたフェザーを嵌合させていた。
竹のしなりにこだわっているわけで、素直にスゴイ !! と思ったものだ。
まぁ、しかしこの画像のような一般的な作りでも十分その機能は果たしてくれる。
用途は実に多用。
高精度な加工を求めるにあたり、丸鋸昇降盤の定盤、およびフェンスに然るべく密着されねば目的とする加工の成果が得られない。
これを補助的に支援してくれるのが、このフェザーボードという治具。
今、フェザーボードとい呼称を使っているが、日本国内のかなり旧い木工関連テキストにも紹介されている。名称は木製スプリング(Wood spring)などと書かれている[1] 。
うちの場合、画像のように丸鋸昇降盤の他、ルーター盤、高速面取盤などに用いる。
ランバーコア木端練り
今回はランバーコア材の木端の加工。
わずかに9mmほどの厚みのものにカッター切削するので、とても手で押さえながらの送材では安定的な加工などできるものではない[2] 。
これを定盤側、フェンス側、と双方から押さえを効かすことで、安全に高精度な加工が確保できる。
ところで、本BlogにLinkしている最近のIkuruさんのBlogでは、こうしたランバーコア材が良く紹介されているようだ。
北欧スタイルの家具製作では標準的なスタイルなのだろう。
無垢材であることが高度な木工の必須の要件であるかのような日本国内のある種の勘違いは改めたい。
このランバーコア材、うちの場合、原木のブラックウォールナットを突き板屋に突いてもらい、スプルースの集成材に練って、在庫している。
1mmほどの厚みに突いて欲しいとの希望は必ずしも叶えられなかったものの、その突き板工場のスライサーという機械の仕様限界、0.7mmという厚みで確保できた。
通常、突き板と言えば0.15mm〜0.2mmほどであるので、いかにこの0.7mmが厚いかが分かる。
0.15mmという厚みだと、どうしてもいかにもベニヤ材という感じが残ってしまうが、対し、これだけの厚みがあれば仕上がりは無垢材と遜色がない。
Face部分に鉋を掛けることも可能。
実際、仕上げの際にはサンディングの前に、一通り超仕上げ鉋盤を通すか、手鉋でサラサラとひと鉋掛けたりもする。
あるいは木端練りとのメチ払いなどにも有用ということ(薄突きのものでは、あんこが出やしないかと怖くてメチ払いもできやしない)。
さらに、今回木端練りした材は、この突き板にした材と同じ原木からのもの。
ブラックウォールナットと言っても、その色調は実に多彩。
色合わせは簡単ではない。同じ原木からであれば安心して使える。
*画像について(上から)
- フェザーボードによるランバーコア材の小穴突き(鳥海義之助著『継ぎ手と仕口』では「本核平矧ぎ」となっている)
- その加工結果
- フェザーボードによる木端練のためのホンザネ加工
- その加工結果
- 嵌め合わせ前の、木端・留め部分へのボンド塗布
- 木端練り後のランバーコア(下画像)
この後、さらさらと手鉋でのメチ払い作業が待っている
ブラックウォールナットらしい良い色調だ
このランバーコアは25mm厚だが、木端の巾は25.4mmで木取った。
つまり片側0.2mm出っ張る計算だが、実際は加工上の誤差、あるいはランバーコアそのものの厚み精度差もあるので、0近い部分も出る。
今回の「本核平矧ぎ」方式というのは、フラッシュの現場ではほとんど採用されない方法だろうと思う。
“決めねばならない”部分が多すぎるからね。しかも練った結果、よほど加工精度が良くないときちんと納まらず、みっともない結果に堕する怖れアリ。
ほとんどの場合、イモで接着するようだ。
今後の材木市況を考えて見た場合、いよいよ良木の入手が困難になる中、積極的にこうしたベニヤリングの手法を取り込むことも選択肢に入れるべきかも。
ところでこの板は何になるかと言えば、今春ピカピカの1年生になる児童の机のワゴンの甲板部分。
丁番で上に跳ね上げて内部にアプローチするという機構のもので、無垢材だと児童には負担が大きすぎ、ということでの選択。重量が3〜4割ほど軽くなる計算だ。
さて、ボクはいくつものコンプレックスを抱えて生きているのだが、こうしたフラッシュ構造のものはとりわけ苦手な分野。
加工手法も鈍くさいだろうし、練り方も下手くそ。
それらの事につき、もう少し書かねばならないが、次回に。
*追記 (2011/01/07)
貼り付けた「木製スプリング」のテキストについて
図、2・126、2・127の説明図だが、丸鋸で小割している図になるが、ボクはこのような切削にはこうした治具は用いない。
つまりあまり意味を持たない。手で押す、あるいは押し棒で押すなどで十分望む切削精度は出る。
必要なのは、今回のようにカッター切削などの場合のように、過度な切削負荷が掛かり、被加工物が安定して送材されない、あるいは送材に伴う作業者の安全性にリスクが伴う、というようなケース。
またジグの押さえもシャコ万(Gクランプ)で行っているが、定盤の2個所にタップでねじ穴を開け、ここにボルトで固定させるのが望ましい。
追記:テキスト、図2・126のような使用法は危険です。
コメント欄参照のこと 2011/01/07
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❖ 脚注
acanthogobius
2011-1-7(金) 13:02
私が木工を教わった先生は、フェザーボードは危険だという
意見でした。
どう言った経験によるものかは分かりません。
確かに、上記教科書のようにシャコ万による固定の場合、加工途中で
動いてしまうと、キックバックを受けることになるのかもしれません。
そんな訳で、私はフェザーボードを使ったことがありません。
ただ、上記のような細い材の溝堀りには、有用なんでしょうね。
このフェザーボードはボルト止めされていて、ナットを緩めることで
スライドできるようになっているのでしょうか?
手押しで、角材の木端面の直角を出すような場合、フェザーボード
は有用でしょうか?
artisan
2011-1-7(金) 13:50
>フェザーボードは危険
その先生、どのようなことを指してのものか不明ですが、本文中にも書きましたとおり、小さな材にカッター切削するような場合であるとか、逆に手で送材がコントロールできないような大きな材の木端などへの加工には欠かせません。
他にも、例えば鏡板(羽目板)の面取り加工にも必須の治具ですね。
あるいはまた被加工材が反っていたとしても、この治具により押しつけられ、反りが一時的にも修正されますので望む加工が可能です。
「危険」ということですと、小さな材への加工はとても危険なものですが、かえってこの治具なしでは良好で安全な加工はできないのでは無いでしょうかね。
>キックバック
むしろ、この治具はキックバックを防止する機能を有することも1つの特徴です(櫛の角度からして想定できるはずですね)
逆送させるのは人の手ではとても困難なほどです。
>ボルト止めされていて、ナットを緩めることでスライドできる
その通りですね。
被加工材の厚みに合わせてスライドさせます。
かなり角度を付けていますので、フェンス側(あるいは定盤側)にやや強く押しつけながら(バネを利かせながら)ボルト止めします。
>手押しで、・・・フェザーボードは有用でしょうか
私は使ったことがありませんが‥‥。
無用ということではありませんが、両手で十分送材が可能だからです。
ただ断面がとても小さな材で、同じ寸法で、かなりの数量があるような場合は有効かも知れませんね。
ぜひ試してみてください。たちどころにその有用性が分かるはずです。
artisan
2011-1-7(金) 17:20
追記。
>フェザーボードは危険
これは恐らくは、間違った使い方への警鐘なのかもしれませんね。
例えば、私のフェザーボードの位置関係で、リッピング作業(板の小割り)をした場合、切り落としが開放されずに、鋸側に押さえつけられ、キックバックしてしまいますね。
そのことを指しているのかも知れません。
テキスト、図2・126もこれにかなり近く、ヤバイかも。
ともかく、本文でも記述していますように、小割のような作業では無意味、どころか危険、ということになりますね。
acanthogobiusさん、良いことを指摘してくれました。
acanthogobius
2011-1-7(金) 17:05
ありがとうございました。
参考にして、今度作ってみます。