工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

3.11のあの頃から、はや一月が

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東日本大震災が起きたあの日は、翌週末に迫っていた納品設置予定の家具の組み立てなどに忙しくしていた。

数日後には震災から一月が経とうとしている今、それを再開している。
組み上がった書棚にオイルを掛けるのだが、空気の流通こそオイル乾燥の要とばかりに春めいてきた外の風を入れようとしていて、はたと迷った。
放射能汚染の大気を積極的に入れて良いものかどうか‥‥‥(苦笑半ば、マジ半ば)。

大幅にずれ込んだ制作スケジュールだが、これは現地へと赴いたことからのものであることはもちろんだが、同時にまた納入先が被災地域の1つであることもその理由。

今ではロジスティックは回復しつつあるものの、少し落ち着いてからにしたいとの顧客の要望を受けてのもの。

延期の方針とともに、その間に新たな家具制作も、との要望も加わり、石巻市からの帰還後もその疲れを癒やす間もなく、連日遅くまで工場に入って制作に打ち込む日々が続く。

他からも、昨年夏に頼んだはずの座卓はどうなっている?
4月中にと約束していた座布団椅子は間に合うのか、などとあちらこちらからプッシュが掛かる。

一方数日前、2ヶ月ごとの喘息定期検診では、そんな身体で被災地へ?
もう、面倒見切れん ! と、苛立たせてしまう、ドクター泣かせの悪い患者だ。

しかし、こうしていつものように工房生活の日常に戻ってみれば、いかに深夜まで勤しもうが、少々の疲れが出ようが、そこには良いドクターもいるし、風呂があるし、好きなものを作って食べられるし、旨い酒も呑める。

然るに被災地ではろくなモノも食えず、風呂もなく、酒も旨かろうはずもなく、こうして全くの非対称の断絶がある。

さて、せめて日延べされた家具納品に向けて、せいいっぱい良い仕事をして喜んでもらおう。
本来であれば、既に納入された机を前にして、希望に燃える新1年生のスタートを切ったはずの子供たちのはやる気持ちに応え、怠りなく準備を重ねよう。

週末は当地でも雨だと予報されているが、雨には濡れないように注意しよう。
カッパは欠かせなくなるのだろうな。

例え官房長官に「ただちに影響がでるレベルのものではない、云々」と言われようとも、ドイツ気象局、オーストリア気象局が証す放射能汚染予測で示される飛散影響下にある当地に降る雨を避けるというのは、自己防衛におけるイロハのイである。

現地から戻り、こうしてBlog更新するのも、実はいささか白々しいというか、虚無感に近いものがあり、自己嫌悪に襲われる。
    言葉の何と軽いことか。

hr

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  • ご無沙汰しています。相模原の多田です。
    そういえば、3月11日に揺れたときは悠悠さんのテーブルの下に隠れたことにふと気付きました。わが家の頼れるテーブルです。

    喘息お気をつけてくださいませ。

    • おや、多田さんでしたか。お懐かしゅうございます。
      お住まいの地域では、かなりの揺れがあったのではないですか。
      ご主人とお二人で隠れるには、ちょっとサイズが小さかったかも知れませんが、抱き合えばダイジョウブだったでしょう  (^^ゞ

      またおいでください。

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