工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

3.11東日本大震災から9年

Jヴィレッジ近傍での住民らの抗議活動(AFPBBからお借りしました。謝謝!)

COVID-19(新型コロナウィルス)に翻弄される日本社会と世界

世界は今、COVID-19(新型コロナウイルス)の猛威を前に震え上がっている。

エチオピアでの公衆衛生担当として大きな実績を引っさげての事務局長就任となったWHO(世界保健機関)テドロス事務局長。
私の印象としては信頼を託するるにふさわしい人物と観たのですが、このテドロス事務局長は9日、「パンデミック(世界的な大流行)の脅威が非常に現実味を帯びてきた」と警鐘を鳴らす事態となっています。

中国湖北省武漢市で発生したCOVID-19ですが、世界いたるところで勢いを増しており、感染者数は11万3千人を超え、死者は約4000人に達したとのこと(日本時間10日早朝時点)。

日本ではクルーズ船の横浜港接岸以降、船内感染から「市中感染」への疑いを孕みつつ蔓延しているようで、メディアは連日Topニュースで新たな感染者を伝えるという状況。

その感染者数は1,000人を越え、死者も14名と、政府が先月24日「ここ1〜2週間が山場」と語った時期を越えた今も、未だ衰えを知らない勢い。

これへの安倍政権の対応はPCR検査の強い抑制措置(感染疑いのある患者であっても検査してもらえない)であったり、「市中感染」の疑いが濃厚になってきていた2月下旬段階での今さらながらの「水際作戦」とされる小中高の一斉休校、さらには「緊急事態法」発令など、もうその発令時期、効果のほど、政治経済的判断の賢明さなどから考えれば、全てがチグハグ、ハチャメチャ・・・。

イラン、イタリアなど、日本以上にCOVID-19が蔓延している国をよそに、中韓2ヶ国のみを対象とした入国制限の一連の措置(2週間の待機と公共交通機関の利用自粛、ビザ効力停止など)ですが、安倍首相取り巻きのネトウヨからの強い進言に促されての生来の排外主義による規制など、実に恥ずかしく、おぞましく、醜い対応に終始。
しかも口では「先手 先手」と言うものの、目に見えて著しく「後手 後手」。

専門家の科学的所見など無関係に「政治判断」なる歪んだ独善性で日本列島をCOVID-19感染列島へと追いやり、リーマンショック以上の経済的疲弊と社会的混乱を促すかのような指令の数々。

よく分かりませんが、【2020東京五輪】を何としても開催させることを至上命題とするところからの「政治判断」とも言われている。(IOC(+WHO)のメッセージなどからは開催可否を5月末頃に判断するとされ、現時点では何とも分かりませんが、IOCは無観客試合を前提とした場合の諸方面の影響を検討中との報道もあるものの(NYT)、開催間際まで決断を躊躇し、関係諸方面で傷を深める結果になるより、この際いち早く中止しちゃうのが最善なのでは思ったりします)

日本社会と人々はCOVID-19からの脅威もさることながら、この安倍政権による地金丸出しの「無秩序」な対策により翻弄され、疲弊し、先が見えない状況に陥りつつ、安倍晋三を宰相として神輿に担いだ有権者の一人としての悲哀を覚える昨今ですが、皆さま いかがお過ごしでしょうか。

安倍政権だったとしたら

さて、長すぎる前振りはこの程度としタイトルに戻りますが、3.11東日本大震災から9年を迎え、まず初めに胸に去来したのは、このCOVID-19を巡る安倍政権の危機意識のあまりの欠如と場当たり的対応を見るに付け、あの時の政権がもし安倍内閣だったら、いったいどうなっていたのだろうかとの思いで、背筋が凍り付くのでした。

安倍首相は所信表明演説などで「民主党時代の悪夢」などと、あからさまに野党をこき下ろしますが、トンデモ無い。3.11フクイチ事故を振り返れば、今般のCOVID-19抑制対策にことごとく失敗してる あんたが指揮を執っていたとしたら、果たして日本列島が一体どうなっていたのか、マジ震える思いですわ。

聖火リレーのスタート地点・Jヴィレッジ

さて、3.11東日本大震災から9年を迎える状況につき、数点のみですが、少し具体的に見ていきます。

今月下旬、3月26日から(開催が危ぶまれる中)2020東京五輪の聖火リレーがスタートします。

2020東京五輪開催は3.11東日本大震災とF1事故処理を抱えた日本が「アンダーコントロール」されてると大ボラを吹き 勝ち取った五輪だったのですが、そのこともあり「復興五輪」と名付けられ、聖火リレーのスタート地点として設定されたのがフクイチに近い楢葉町と広野町に挟まれた〈Jヴィレッジ〉であることはご存知のことだろうと思います。(例えば こちらの記事)

「復興五輪」の目玉でもあることから、聖火リレーのスタート地点となる〈Jヴィレッジ〉出発イベント会場をはじめ、周囲一帯徹底した除染作業を行ったようですが、未だに国の除染基準を超える放射線レベルの地点がそこかしこにあり、またリレーコース道路脇でも0.3〜0.4μSv/hなどが多くあり、ところによっては1.0μSv/hのところもあるようです。(朝日:2020/02/22グリーンピースジャパン:2019/12/17

一方、この「復興五輪」へ向け、3月14日に強引にも全線開通する常磐線ですが、9年ぶりに再開される双葉駅のある双葉町は良く知られてるとおり「帰還困難区域」で、既に4日に先んじて避難指示が初めて一部解除(駅前広場など拠点区域が対象で、全域のわずかに3%)されました。

ただ、周囲一帯、線量はまだまだ高く、とても人間の活動、居住が可能な場所では無く、町でも町民の帰還を前提とするものでは無いとのことです。

「OurPlanet-TV」に優れた取材記事がありますので、ご紹介します。

Cs137の半減期は30年

「復興五輪」のイメージアップを図り、聖火リレースタート時のTV映りを良くするために、関係者はコース周囲のみを除染させ、きらびやかな箱物を建造させてはいますが、実は周囲一帯汚染されたままの状況を糊塗しようとやっきになっているというのが実態なのです。
一歩 道路脇から奥に足を踏み入れれば、2011年3月から時が止まったままの崩壊した家屋が残され、猪や猿がが闊歩する街並みがあり、1.0μSv/hを越えるようなところばかりなのです。

当たり前でしょ。
Cs(セシウム)134の半減期は2年ですので、既に9年経過した現在はかなり低減していることは確かですが、フクイチから放出された放射線の中で最大の核種であるCs137の方は半減期が30年です。
読者のあなたも計算してみてください。9年経過した現在、単純計算でも、わずかに15%低減したに過ぎないのです。

あらためて考えて見れば、F1事故前の状況に戻るには数百年という単位での時間軸になるのですから。わずか9年で何を期待できるというのでしょう。

しかし聖火リレーの報道では、こうしたところは隠蔽され、きらびやかな「復興」住宅や人のいない商店街を背景に、動員された人々の拍手を浴びながら笑顔の聖火リレーランナーが走り抜け、「復興」をイメージアップさせていくのです。

35兆円の「復興予算」の使途

これらのハコモノ復興は、そのほとんどが35兆3千万円といわれる「復興予算」からジャブジャブと投入することで起ち上がっものですが、その原資は言うまでもなく納税者、法人からの税収によるもの。
所得税額に2.1%の上乗せで課税される「復興特別所得税」、および10%上乗せされる「復興特別法人税」によるものです。

ただ、これらが被災地の復興に投じられるならばと、快く納税したものの、実はトンデモ無いところへと流用されていることはこれまでも報じられたとおり。

日本政府。経産省によるベトナムへの原発輸出は頓挫したことは知っての通りですが、この調査費、約5億円を含む、インフラ輸出促進に90億円が復興特別税から流用されたり(こちらの指摘)、

調査捕鯨の安定化対策事業とするシーシェパードによる妨害活動への対策費として23億円がこの「復興予算」からもぎ取られるなど、もう何でもアリの様々な役所、業界が「復興予算」に群がるという醜悪な様子が見て取れるのです。(兵庫・憲法県政の会

▼復興予算1054億円、国に返還見通し(日経

▼さらには「防災」であればなんでもアリだろうとばかりに、中央省庁の改修費などに数百億円が注ぎ込まれるなど、役所はもうやりたい放題。(復興税の「不正流用」、中止のフリをして今も執行されている現実

「復興予算」とはいえ、このような無関係なところへの無駄な支出を含む流用であったり、執行されずに返還されたりと、被災者への直接的な支援に届くと思ったら大間違いのようなのです。

また直接的支援に近いところでは、遅ればせながらも被災地の嵩上げや復興住宅の建設が進んでいるようで心強いものの、こうしたハード面への支出は目立ちますが、平行して大切なのは、これらの被災地に住民を帰還させ、持続的な生活維持を確保ならしめる施策なのではないでしょうか。

つまり、10年近い過酷な流浪の人生を終え、明日から希望に燃え、再び豊かな自然に囲まれた故郷に帰還し、生業を営み、子を作り、例え苦しくても希望を紡ぎながら生きていく、そうした「人と暮らしの復興」へと手を差し延べられるような内実が伴ったもので無ければ、何のための巨大な「復興予算」であるのか、一見きらびやかなハコモノ復興を見せつけられるとき、あらためて思いを強くします。

(この復興予算の使途不明問題については、今月号の『世界』「復興予算26兆円の行方」として古川美穂氏が追及しており、参考にさせていただきました)

原発再稼働の姿勢から脱却できない日本社会

3.11東日本大震災から9年、最大の問題はやはりF1事故からの「復旧・復興」だろうと思いますが、ここでは私の手には余ることから数点指摘することしかできません。

世界の潮流が〈再生可能エネルギー〉への転換へと確実に施策を講じている中にあって、どういうわけか、当事者の日本だけは未だに原発を「重要なベースロド電源」として位置づけ、再稼働へと前のめりに邁進してる姿は醜悪としか思えませんが、どう考えても世界から「日本はバカなの?」と辱められる状況はいったいいつまで続ける積もりなのでしょう。

汚染水問題・「思い切って放出しちゃえ!」(原田義昭 前大臣の妄言)

Reuters からお借りしました(謝謝!)

現在、福島第一原子力発電所過酷事故処理問題にあって、喫緊の課題として浮上しているのが汚染水の海洋投棄問題です。
昨年9月の内閣改造において原田義昭環境相兼原子力防災担当相が任期を終える直前、100万tという膨大な量に貯まった汚染処理水について「思い切って放出して、希釈する他に選択肢はない」と発言したからです。

これはALPS(多核種除去設備)という除去処理装置を通し、敷地内に保管していた処理水の処分方法が漁業者など地元の理解を得られず貯まり続けているものの今や限界に近づいてるとされることでの危機意識の表れ。
これまでも報じられているように、ALPSでの処理ではトリチウムという核種は除去しきれないとの認識が広く共有されているからですが、

どうもトリチウムだけの問題ではなく、一昨年2018年の9月、ストロンチウム90などが、基準値の2万倍ほどの濃度で検出されたことを東京電力が明らかにしています(「福島「汚染水」から基準値を超える放射性物質」2018/10/12 Reuters)。
その際には分析した汚染水のうち、8割強が基準値を上回っていたと公表。
これが「アンダーコントロール」の実態というわけです。

こんな実態を放置したままで、原田義昭前大臣のように「思い切ってやっちまえ」と言えるというのが不思議でなりません。
そんな無謀な事をすれば、世界から指弾され、日本はオワってしまうでしょう。
就任時に議論を起こすための提言であればともかくも、辞任を前にしてのヤケのやんぱち発言というのではあまりにも無責任。(安倍政権ってのは、こんな愚にも付かない ろくで無し大臣ばっかり¯\_(⊙︿⊙)_/¯ )


こうした東電の公表は、冒頭の画像のような住民らの監視と分析、指摘により、甘い姿勢の東電を覚醒させたことによるものだったわけですが、3.11福島第一原子力発電所事故の当事国の一員として今後も注視しつづけ、多くの被災者の悔しい思いを忘れてはいけないでしょう。


参照

▼ 「オリンピックどごろでねえ」 聖火リレー出発地・福島、「復興五輪」に喜べず(AFP BB

▼福島第一原発の汚染処理水の海洋放出の知られざるリスク「サンデーモーニング」が指摘した“不都合な真実”(Yahoo!ニュース/水島宏明

▼汚染水、浄化後も基準2万倍の放射性物質 福島第一原発(2018/09/28 朝日

▼東電が汚染水を海に流してはいけない4つの理由(2019/07/23 GreenPeaceジャパン


最後に、3.11のその年の秋、除染プロジェクトに参加した際、共に学習し、訪ねた二本松の有機農法のリーダー格、菅野正寿さんのたんぼと、元気なお姿に接することができましたので、その動画を貼り付けます。(FoE Japan さんの取材記録です)

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