工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

東日本大震災・災害ボランティア活動日録(9)

被災地・災害復興支援活動

3月26日(地震発生から15日経過)天気:雪のち雨

ブルルッと震えながら目覚めたのは5時過ぎくらいか。
テント幕を通しての周囲がいやに明るい。



テントのジッパーを外して外を見やると、一面の銀世界。
寒いわけだ。
静岡では桜も開花もしているというのに、この地では真冬の気候が続く。
避難所の人々はちゃんと暖を取れているのだろうか、などと思いを馳せるが、まずは自分たちもストーブを焚いて暖まらねばならないが、この朝にロケットストーブは石巻ボラセンに託すことになっているので、使えない。

コールマンストーブでの煮炊き兼用で腹から暖めることに。
その前にテントの雪を払い、タープの雪を下ろす。

静岡から農家が託してくれた採れたてのレタスでサラダを拵え、α米を暖め、ラーメンスープで口に押し込む。
暫し、ボランティア登録手続き開始までの時間、寒え込む空の下ではあるがコーヒーを啜りながら、周囲の他のボランティアで駆けつけた方々と交流を図る。

食後、これまで同様にボラセンでの登録手続き。
日に日にボランティアの人数も増加している様子。
多くは学生のようだが、駐車している車両を見れば、かなり遠方から駆けつけた様子も伺える。

それぞれ、「東北大震災 ○▽緊急支援部隊」などと大書された幕などが雪まみれ、泥まみれでの車体に貼り付けてある。

我々も「災害ボランティア エスペランサ 木工隊」としたマグネットステッカーを貼り付けてきたのは大正解だった。
決して高速料金が安くなったり、GSでの優先扱いなどがあったわけではないが、被災地での運行にあたり、我々の運行目的を明示することで、周囲に分かってもらうのは必須のツールだった。

石巻市でのボランティア活動の最終日、今日これからの活動は昨日に引き続いて蛇田地区の家財道具の片付け、泥カキなど。
そして支援物資をこの地域の避難所に託す。

物資満載で蛇田地区へと向かい、まずは避難所で民生委員のSさんに出迎えを受け、避難住民の代表の方々に託された支援物資を渡す。
お米、海苔、ラーメン、水、レトルト味噌汁、味噌、醤油、食用油、缶詰、シチュー、お茶、チョコレートなどの食材。
赤ちゃん、女性、お年寄りの衛生用品、化粧品、洗顔液など。
カイロ、ティッシュ、トレペ、ペーパータオル。
Tシャツ、靴下、タオル、

その後は前日に引き続き、3軒の被災者住宅で浸水し使えなくなった家財道具の廃棄作業を中心に片付けを行う。
この一帯の借家の家主としては、店子との入居契約を解除し、ともかく出て行ってもらいたい。
そのためには全ての物資を運び出し、空の状態にして欲しい、との条件を付けてきたということである。

突然の大震災を受けての辛苦に留まらず、行く当てもない状態での立ち退き要求は実に過酷だ。
“構いません、みんな捨てちゃってください ! ”とする決然たる物言いは、諦観と、刹那と、ヤケと、ないまぜになった言葉として、これは聞く方も辛く、涙腺も決壊間際になるほどのもの。

降り止まない小雨の中での、ネコを使ったかなりの距離の搬送作業も、なかなか過酷なものだったが、メンバーも今日が最後のご奉仕とばかりに健闘し、全ての作業を午後3時過ぎには終えることができた。

最後にこの借家一帯の世話人でもある民生委員のSさん、被災者との終了確認の挨拶をさせていただき、撤収する。

がんばってください ! といった常套句は似つかわしくない。

十分なことはできなかったかも知れませんが、せいいっぱいやらせてもらいました。
二日間にわたりお世話になりました。
これでお別れとなりますが
どうぞ元気に、生きてください。

これだけの言葉を掛けるだけが精一杯。

少し後ろ髪を引かれながらではあったが、石巻ボラセンに帰還。

すると、テントが吹き飛んでいる。
かなりの強風でやられてしまったようだ。
骨が折れてしまっている。
とりあえず応急の処置を施し、1晩だけでも凌げるようにする。

そして明朝の撤収へ向け、荷物の整理、あるいは燃料の補給など。

そのうち大型バスが到着し、若者を中心に、外国人を含む大勢のリュックを背負った人々が降りてくる。
ピースボートが募ったボランティア一行の到着である。
ピースボートとしては、これまでは先遣隊的規模での派遣であったようで、この辺りから本格的な動員となっていったようだ。

そしてボラセンに出向き、活動報告を提出。
暫し、社会福祉協議会のSさんとお話しをさせていただき、明朝、予定通りにここを経つことを告げ、世話になったことなどへの謝辞を述べ、辞する。

夕食は残った食材をふんだんに使う。
パスタに各種豆の煮込みスープ、サラダ添え。
借家での片付けで出てきたヘドロまみれの頂き物の高級スコッチも、洗ってみれば、熟成された味わいで快い疲れを癒やす。

それぞれに感想を述べあい、また明日の撤収態勢の確認、そして明朝の別れとなる山形から加わってくれたSさんへの感謝と、今後の健闘を祈り、止まぬ余震の中で夜遅くまで語らう。

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