工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ワークベンチ・ショルダーバイスの効用

ショルダーバイス

圧締工具というものは木工作業には欠かせないものだが、作業台においても圧締機能はとても重要な要素となる。

手鉋で削る、手鋸で切る、ノミで穴を穿つ、さらには電動工具での切削工程でも被加工材の圧締は重要だ。
これらの作業の基本となるのが、被加工材の安定的な固定だ。
これが不安定では目的とする寸法精度、平滑性など高精度、高品質な加工は前提において崩れる。
そもそも作業者は快適な加工環境になければ疲れ、ストレスがたまるだろう。

ところで、いわゆる日本の当て台と呼ばれる作業台にはこうした圧締機能は付属していない。
ボクが基礎を学んだ信州松本地域の当て台には、木工作業に便利な万力を取り付ける機構があり、従来の当て台を改良して補助的に圧締機能を付加させているところがユニークだった。

一般には立ち台の作業台に万力を取り付けたりして、補助的に圧締機能を備えていることが多いようだ。

これに対し、欧米ではあらかじめ様々な圧締機能を持たせた設計と構造のワークベンチが一般的だ。

今日の画像は、そうしたワークベンチの中でもより使い勝手が良く、木工作業の快適で安全な環境を提供してくれる、スカンジナビアンタイプのワークベンチの「ショルダーバイス」を用いた工程の1つ、扉のヒンジ取り付けのためのルーター切削工程である。

ご覧のように板状の扉と、ヒンジのテンプレートを大きな面で確実に咥え、安全で高精度な加工に寄与していることが分かると思う。

一般の万力では咥える機構の下には1+2本の棒が待ち構えており、これが邪魔して上下に長いものは咥えられない。
ところがこのショルダーバイスは咥える個所には機構部分が皆無で、どのような形状でも、長尺ものでも咥えることができる。

今日はヒンジのための切削作業で、1.4Kwのプランジルーターを用いての作業だが、被加工材が確実に固定された安定した環境であり、高精度な切削作業を容易に行うことができる。

1つの部材の仕上げまでは機械加工後にも様々な手加工が必要となるが、これら一連の作業が、この1台のワークベンチ上で行えるというのは合理性、作業性も高く、また快適であることは言うまでもない。



昨日は台風6号がここ静岡でも記録的な豪雨をもたらし、ゆっくりと南方へと去っていったが、こんな環境ではとても怖くて工房には入れなかった。
怖いというのはもちろん、板がめちゃくちゃに反張してしまうからだね。
機械という機械、すべての定盤面を合板、布団などで覆い隠し、ひっそりと立ち去るのを待つだけだった。

今朝はうって変わってこの時季とも思えぬさわやかな快晴。
台風は、湿潤な大気を連れ去ってくれたのか、スカッとした乾いた大気に覆われていた。

早朝は湿度70%ほどあったものだが、窓という窓を開け放ち、大気を入れ替えたら間もなく50%を切るところまで乾燥してくれた。
遅れを取り戻すべく、がんばったさ。
hr

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