工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

台風15号の置き土産

土場、屋根直し


ここ静岡県下、至る所で台風15号の爪痕が残っている。
いまだに停電している地域もあるとのこと。
土砂崩れなどで被災地へのアクセスが困難なために、復旧に手間取っている。
皆さんのところは如何だっただろう。

うちの工場、自宅ともにほとんど被害はなかったが、近隣では屋根が飛ばされたりという住宅も少なくない。

画像の土場に隣接する溶接屋の自宅兼工場の親方には笑えない話しがあった。
台風通過の日の夕刻、工場の北側の駐車場に出てみれば、塩ビのトタンが数枚散乱していて、どこの住宅から飛んできたのだ ! と怒りを抑えつつ片付けに追われたとのこと。
一瞬、もしやうちの桟積みの屋根が飛んだのかと緊張が走る。
しかしそうではなかった。

片付けを終え、暫くして自宅2階の南側にあるベランダに出たところ、何と屋根が無い、慌てた。
何のことは無い。駐車所に散乱していたトタンは自宅の物だった。8mほどの高さの鉄工所の屋根を越えて、反対側に飛んできたというわけだ。

余所に飛んでいかなくて良かったじゃ無い、と、二人して大笑い。

そんなわけで、この辺りもかなりの強風が吹いていたことになる。
計測していたわけでは無いが、風速40mを超えていたのではないか。

この溶接職人、生まれも育ちもここで、これほどの風はこれまで無かったのではと漏らす。

ボクは11本のろうそくが立ったその時、今年の台風で一躍名を馳せた十津川村にいたのだが(わずかに数年間のこと)この15号よりもきつい台風被害の経験をしている。
紀伊半島から東海地方を中心に、全国的に甚大な被害を及ぼした伊勢湾台風である。
何と自分の誕生祝いで小さなケーキにナイフを入れたその時に猛烈な風にやられ、雨戸を押さえるのに必死だった記憶が、今も記憶の片隅に残っている。
父親も兄もその時は不在で、母親と弟を守るのに必死だったというわけだ。

さて、昔話しを続けても楽しかろうはずも無いね。
ご覧のように土場の桟積みの山の屋根が7割方やられてしまっていた。
番線、細いロープなどで固定しているだけの簡易なトタン屋根であれば、宜なるかな、だ。

週末、天候が回復基調であったので、濡れた材木を暫し乾燥させておいた。
そして昨日、あらためて屋根を葺いた(とは言っても、トタンを縛っただけの簡易なものだが)

今では桟積みの山も数少ないので、半日仕事で片付いた。
もう一冬超せば、過半は崩し、ブラックウォールナットなどの濃色材はそのまま倉庫へ、
白木材は人工乾燥へと整理されるだろう。

このように材木のお守りは決して容易ではないが、これなくしては良い木工はできない。

こうした材木管理のスタイルというものを備えたのは、松本民芸家具での修業時代のことになるが、雪深い木曽山中での毎月の土場仕事というものは、体力的にも精神的にも木工の厳しさというものを教えてくれる格好の場所だった。
またこれは、そこに潜む職人仕事ならではのストイックで根源的な密かな喜びと言うものも感じさせてくれたものだったが、少しばかりキャリアを積んできてしまった今、やや投げやりな作業に堕ちてしまうのは困ったものではある。
hr

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  • 静岡よりは風が弱かったと思いますので、材木上のトタンなどは
    無事でした。
    工房脇に高さ20m近いサワラの木が3本立っているので、強風の日は
    心配します。倒れると工房がつぶれるので。
    ただ、工房の東側に木があり、関東では強い東風は稀ですので、今の所は大丈夫です。

    ところで、ブルーシートとか荷物結束用の黄色いPPバンドなどは
    太陽光線による劣化が激しく、長期の屋外使用には不向きですね。
    屋外で使うには所謂トラロープのような物の方が良いのでしょうか?

    • 台風影響、さほどではなかったようで、良かったですね。
      >工房の東側に木があり、関東では強い東風は稀
      恐らく、大丈夫でしょう。
      サワラは風呂桶として使いましょう

      ブルーシート、PPバンドなどは仰るように耐候性がとても悪いですね。
      桟積みのトタン処理は、被覆の番線を基本としていますが、トラロープを使うこともあります。

      被災地、除染で出てきた汚染表土が仮置き場に置かれているのですが、この仮置き場が何とブルーシートで遮蔽されているというので驚かされます。

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