工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

玉杢・ケヤキの卓(その2)


3尺角の玉杢を持つケヤキの座卓ということであれば、そのフォルムはただシンプルな方が良いだろう、ということで画像のような脚部デザインにした。

甲板は四方を少し太鼓に張らせ、角は大きくタイトにカット(これは脚部造形に相応させるもの)。

これは松本民芸家具のリストにもあるような、やや様式的なものだね。
職業訓練校で修行していた頃、教官から見せられた図面にこのようなデザインがあったような記憶がある。安川慶一のクレジットがあったのだったかな?(松本民芸関係者の方、違っていたらご指摘ください)

脚は四方転び(ただこの場合は対角線に配置されるので、加工は一方だけの転びになる)。
これを三方テーパーに造形し、表は角面を大きく取り、裏はなだらかな曲断面を付ける。

これに幕板を巡らし脚部を構成することもあるが、今回は単独のまま「送り寄せ蟻」で接合させる。

転びでの「送り寄せ蟻」というと、加工はちょっとやっかいな感じを持たれるかと思うが、決してそんなことはない。

もちろんのこと、テーパー加工は後回しにして、まずは木口を転びに切断し、
蟻加工を行う。
前後に転んでいるので傾斜盤での加工は慎重に行いたいが、ただその程度の難易度。

今回は脚の厚みは2寸ほどのもので、したがって蟻桟はわずかに1寸弱の長さしか取れないというわけだが、しかし接合度はビシッと十分な堅さを得られる。
全く緩さもぐらつきも無い。

もちろん蟻桟の精度を高く取ることが全ての前提だけれどね。

ところで、この甲板は樹齢100〜200年を超え、しかも製材後数10年は経過しているし、板の厚みも1.5寸もあるので、さほど反張に気をつかうほどでは無いのでこのままでも良いのだが、丁寧な仕事を旨とする者としては、やはり寄せ蟻での吸い付き桟を付けて置いた。
52×64の断面を持つ奴を真ん中に1本だけだけれどね。
これで完璧だろう。

hr

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  • artisanさん、こんにちは。

    ケヤキを使われるとは珍しいですね。驚きました!
    ケヤキはどう調理してもコテコテの和風仕上げになるかと思っていましたが、なぜか和風には見えません。(ぼくだけかもしれませんが)
    テクニカルな送り寄せ蟻などの工法もさながら、それよりもぼくはatrisanさんが作られるデザインセンス(造形、テーパーなどの取り方)と色使いにスマートな魅力を感じており、個人的に大変好みです。

  • こういう脚の成立のさせ方もあるのですね、参考になります。
    この場合は組立に接着剤を入れるのでしょうか?

    2枚に割った内側にこれだけの玉杢が出ているのはめずらしいと
    思いますね。木表だけが多いですよね。
    やはり銘木なのでしょう。

    • このような接合の仕口は決してめずらしいものではなく、日本では古来から広く行われているものと思いますよ (^_^)b

      一般には接着剤は入れないですね。
      寄せ蟻のメリットは、簡単に取り外せる → メンテナンスがしやすい
      というところにありますのでね。

      もちろん未来永劫にわたって解体する必要が無ければ接着剤を使うのもアリですね。
      ただ、ボンドの接合力に依拠しないフィティングの強さが要求されるということでは
      変わるものでは無いでしょうね。

      >2枚に割った内側にこれだけの玉杢が出ているのはめずらしい
      なるほど、ですね。
      確かに2枚目の木裏には、杢は消えていました。

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