工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

二枚ほぞ

二枚ほぞ画像はテーブルの左右の脚部を連結保持させるH型貫の束部分。
完成すればこんなふう(マホガニービックテーブル)。
うちでは枘(ほぞ)の多くを二枚枘で設計することが多い。
これはこのBlogでも何度か記述してきたことだが、枘の接合度が圧倒的に高まるからだ。
具体的にはキャビネットなどでは棚口、束、などだが、それぞれが嵌め合う部位の経年変化による変形、環境の変化による反張などで接合が緩みやすい個所に積極的に用いることにしている。
この画像の場合も貫の構造的安定度が、ひいてはテーブル全体の構造的強度に関わるので、二枚とした。
一件面倒くさいように思われるかも知れないが、決してそんなことはない。
枘穴の方だって、貫の部材のセンターに穿つのであれば、2個所の穴は1つの設定で左右対称で開けることで精度は自ずから高くなるだろう。
枘の方も至って簡単。
例えば、この場合、部材は40mm角。
二枚枘の割り付けは以下のようだ。
 5-11-8-11-5 (mm)
なお四方胴付きの仕口にするのだが、この肩も5mm。
つまり加工手順としては、四方ぐるりと5mmの深さで胴付きを入れ、
中央の8mmを左右から適宜5or6 mmほどのカッターで抜き、最後にぐるりと5mmを落とせばオワリ。
ちょっとずぼらに過ぎるのではない?
なぁんて言う人は、過度に丁寧すぎる人。
如何に高精度に、かつ合理的に、快適に、加工するのかが職業木工家としての
“美意識”
四方胴付きという仕口は言うまでもなく、構造的堅牢度(捻れに強い)への考え方から積極的に使うべき。
またそれだけではなく、枘に塗布するボンドが外にはみ出ないという副次的なメリットがあることを知る人は、こんなエントリ、無駄だったかもしれない。
以前もどこかで記した記憶があるが、組み終わった後にはみ出たボンドを処理するなどという愚かなことは可能な限りしたくないもの。
美しく、快適に !

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  • こんにちは。
    2枚ホゾの場合ホゾとホゾの間を完全に抜くのが難しく
    私はホゾ穴とホゾ穴の間の方を1段下げてしまいます。
    写真を見る限りartisanさんは、そうされていないようですね。
    ホゾとホゾの間を完全に抜いた方がやはり強度的に
    丈夫でしょうか?

  • acanthogobiusさん、いつもどうも。
    仰るように2枚枘の場合の中央胴付き部分を引き抜くのは少し大変かも知れません。したがってacanthogobiusさんのようにメスの方の中央部を少し彫り込むということは良い対処法です。
    逆に外側の胴付きよりも中央部が高く残るようでは、接合が適正になりません。
    ボクはケースバイケースで選択しますが、この画像のように外の胴付きと同じレベルに引き抜くことはさほど困難なことではありません。
    ただあくまでも全く同一にすることなどできない、ということを前提に、ホンの少し逃げています。
    acanthogobiusさん使用の補助軸の付いた昇降盤では円弧状に引き抜くことができますので、より逃げが利き良い方法です。
    なお、いずれもこの引き抜く個所の胴付きをあらかじめ毛引きで筋を入れておくことはバリを出さないという意味でとても有効です。

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