工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

盛岡

東北新幹線の車窓を流れる風景は、やはりこの地域固有のものを感じさせて飽きない。
まず何よりも青々とした田園の延々とした拡がりが美しく、食糧自給率が著しく低下しているとの概念を打ち破りそうにも思えるほどに穀倉地帯が続く。
(先の参院選での小沢民主党党首による農業従事者への税制優遇の公約というものも、その地盤に立ってみればあらためて説得性を感じさせてくれるものがある。)
次に河川である。
コンクリートで打ち固められた河川敷はむしろ希で、そのほとんどは灌木、水辺の植物に覆われた自然の形状を守っており、満々とたたえた水量が蕩々と流れる様は、水の国・日本という国土の豊かさを再認識させてくれ嬉しくなる。
昨日からお邪魔しているのは、みちのくでもよく知られた北上川の東岸に接する街、盛岡。
ボクはこの北上川の下流域に近い仙台郊外の生まれというせいなのか、北上川へは郷愁に近いものを感じさせてくれ、この旅も幻想でしかないのにも関わらず、川への思いというものを満たしてくれ深く安堵させてくれるのだった。
今回の旅はこの地のカスタマーへの納品設置のためのものだったが、他にもこれまで制作依頼された家具を送るだけの関係でしかなかった別の数軒をお邪魔して、納品状況を確認させていただいたり、お話しを伺ったりと、日頃の無沙汰を埋め合わせる重要な旅となった。
本来であればこちらが一席設けて感謝せねばならないところ、仲介の労を取ってもらったギャラリー「クラフト藍」さん、そして顧客の方々による心のこもる接待を受けるということになり、恐縮するばかりであったが、しかし何よりも顧客とのリアルな交流はもの作りの責任の大きさの再確認と、また同時に励みともなる楽しい酒席であった。
皆さんへは心からの感謝を !
盛岡という街の独特の趣と、近代文学史の中で多くの物語(啄木、賢治など)を育んできた風土への憧憬も、こうした交流はよりリアルな実像を結ぶものとなるのだろう。
風土とは結局はその地に暮らし活動する人によってこそ支えられ、醸し出されているのであるから。

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