工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

歴史的な1日だった(オバマ氏圧勝が意味するもの)

全米は沸き立っている。支持者の誰かが語っている「暴力無き革命だ」との、やや過度な評価も、シカゴの・グリーンパークに集まった20万人を超える支持者たちの“新大統領”オバマ氏からの「チェンジ」、「イエス・ウィ・キャン」という呼び掛けに対する涙をこらえながらの唱和を見れば、なるほど、それほどまでに位置づけたくなるのは、よ〜く分かる気がした。
またそれは決してお祭り騒ぎのそれではなく、オバマ氏が発する言葉を一つも聞き漏らしたくない、との氏への熱い眼差しが痛いほど伝わってくる、という印象的なシーンだった。
こちらも目頭が熱くなってしまうほどだったからね。
一国の政治指導者とはかくあるべき、という典型を見る思いだった。
ほぼ勝利を手中にしてのシカゴの・グリーンパークでのスピーチを聴いていたが、天性と言われるそのすばらしいスピーチには米国民だけではなく、多くの人々に感銘を与えたのではないだろうか。
民主主義という政治参加のシステムが見事に機能し、かつてでは考えらもしなかったアフリカ系の候補者が共和党ブッシュによってずたずたにされたアメリカを再構築しようと立ち上がり、これにこれまでは政治というものに関心を持てずにアウトサイダーだった、黒人、ヒスパニック、様々な被差別者、そして白人の若い層たちが応え、徒手空拳のオバマ選挙を担い抜いた。
暫定の数値ながらもその投票率は記録的な数値66%に示されるように、アメリカ国民の現状への強い不満と、新たな政治への強い期待というものをこれら支持者たちが掘り起こしたものと言って良いだろう。
米国による一極金融支配体制と正義無きアフガン、イラク戦争、それら共和党ブッシュによるネオリベラリズムのもたらしたものは、全世界の疲弊と明日無き未来という荒廃した状況。
このあまりのひどさにノーを突きつけたのが全米の人々だった。
それまでは無名のバラク・オバマをとうとう新大統領にまで押し上げた。
まさにアメリカの希望を体現したのがオバマ氏であり、そして彼を壇上に押し上げた多くの無名の人々だった。


それにしてもアメリカ合衆国大統領選挙結果は、多くの方の予想をはるかに上回る結果をもたらし、まさしく米国建国史上に歴史的な快挙を刻印したものと言って良いだろうね。
大統領選挙だけではなく、上院、下院とも民主党が議席数を伸ばし過半数を抑えた。(こちら
さて、問題は年開けての1月20日の就任以後。懸案は山積。
ウォール街の疲弊は、一米国のみならず世界経済を疲弊、収縮させている状況というものをどう打開していくのか、イラク、アフガニスタンへの派兵と戦争行為の継続をどうするのか、中東危機もまったなし、グルジアも硝煙冷めやらず、共和党ブッシュによる北朝鮮との対話路線の置きみやげはどうなるのか、いずれも決してその選択肢が豊富にあるわけもないだろう。
どうもオバマ氏も、選挙戦での政策を聞いていた限りでも必ずしも定見があるようでもなく、プラグマチストのようでなかなか読めないだけに、様々な懸念はついてまわることになるだろうね。
おおよそ、米国一極支配という時代ではなくなったというのが、この度の世界金融危機が教えるところであり、その後の多極化の世界に、米国がどのような位置どりを模索しようとしていくのか、新たなポジションを固めるまではまだまだ多くの時間と様々なクライシスも必要となるのかもしれない。
いかにあがこうが、基軸通貨・ドルの権威を立て直すことはとても至難だなことだろうからね。
そうした荒波が待ちかまえる困難な状況へと船出するオバマ氏へ、栄光あれと、とりあえずはエールを送らせてもらおうと思う。
ところで、この歴史的な新大統領の圧勝が明らかになった報を受けての我が宰相によるメッセージは次のよう。
「誰が米大統領になっても、50年以上も双方で培ってきた日米関係を維持していく」(5日夕、官邸内で記者団に対し)
シカゴでの全米を奮い立たせるようなすばらしいオバマ氏のスピーチの直後に聞く、この麻生総理の、おめでとうのひと言もなく、「誰が米大統領になっても‥‥」には、あまりの素っ気なさに唖然とし、次に、ただ悲しくなってしまうばかりだった。
政治家とは、その発する言葉。言葉は理念。それがより明確になったのがこの度のアメリカ合衆国大統領選挙だったように思うが、この彼我の差異をどうバランスとって受け止めればよいのか、凡夫のボクにはわからん。
一方で「同盟関係」を声高に叫びながらも、この外交儀礼らしからぬシニカルな「御祝い」メッセージを寄こした麻生日本に、果たしてバラク・オバマ“新大統領”はどのような関係を求めてくるのか。
大いに期待をしていようと思う。
*REUTERSの関連スライドショーはこちらからどうぞ

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