工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

新聞とネット世界

(承前)
今朝になっても夕刊は届かなかったので、販売店に配達するようFaxしてやっと手元にきた。
スミマセン、と言って、謝罪の意味なのか購読紙2紙にスポーツ紙を抱き合わせて持ってきたが、それはいらないから事情だけ説明してください、と押し返す。
やれやれこんなことなら新聞購読やめて情報収集はネットで済まそうか?
なんて、考えももたげてくる一件だったが、果たして昨夕刊の地元新聞社の印刷ミスとは一体何だったのか。
ネットで検索してもなかなかたどり着けない。
通常より18時間遅れて配達してくれた、その配達員から仄聞する。
県下のある事件を報ずる記事の見出しで容疑者の所属名を間違えたらしい、と漏らしてくれた。
手元の夕刊紙を見れば3面記事のトップにその事件と思われる記事がきていた。
5段ヌキの記事、その見出しは白抜きで最大ポイントのサイズだ。
県下の事件とは言っても全国的規模で広がる、ある社会問題に関わるもので注目度は高く、間違えられた所属先としては社会的逸失は少なくないものがあることは容易に想像できる内容のものだと感じた。
他紙の報道によれば既に間違いを気付かずに配布してしまった地域があるらしい。
恐らく今頃は間違われた所属先からの抗議にたじたじとしているのだろうか。
菓子折1つぶら下げて謝罪するだけでは済まされない誤謬だろう。
新聞メディアの影響力というものをあらためて自身の不手際で感じ入ったかもしれない。
記者、編集部、デスク、整理部、入稿、いずれのミスなのか、全てに問題があったのか、なんとも早お粗末な新聞社ではある。


さて、この18時間遅れで届いたもう1つの方、「朝日新聞」夕刊には、今月初旬から連載されてきた企画ものが終了したことが記されていた。
〈ネットはいま〉第1部、である。
ほとんど欠かさず読んできていたが、もしかしたら読み忘れた回もあるかもと、asahi.comを検索。asahi.comにあるとは余り期待しなかったが、テーマがテーマであるためか、ちゃんと漏れなく再掲(という表現はヘン?)されていた。
さらには新聞紙面では為し得ない、高精細な動画(前後編2つ)まで付いていたのでちょっと慌てた。
この18回にわたる決して少なくない数の連載だが、ただ毎回400字詰め原稿用紙で3枚ほどの分量であり、かなり多岐にわたるテーマを取り扱っていることもあり、必ずしも個々の取材記事に十分な分析と検証が加えられているものとは思えないというのが正直な感想だ。
しかしそこは朝日新聞ならではの取材網を駆使した記事と編集であるので、なかなか読ませるものとなっていることは否定できない。
Google検索がもたらすネット世界の現在というものを切り取り、アフェリエイトでぼろ稼ぎする若者がGoogle検索アルゴリズムの改変で凋落してしまうことなどを取り上げるなど、解りやすく編集していると言って良いかも知れない。
これらは今日気付いた2本の動画を視聴することでより理解しやすいものとなっていた。巨大メディアならではの取材であり、またネットならではの手法での編集だ。
(どうでも良いことだが、新聞紙面と見比べ、段落、改行の基準の違いが勉強になったね)
しかし、やはり食い足りないのである。ネット世界が今後どのようなメディア社会を造っていこうとしているのか、技術的な展望に留まらず、世界を激変させていくかもしれないネットの持つ怖ろしいほどの力というものを、メディアの王座の位置を誇ってきた朝日新聞が分析・展望するにふさわしい企画内容であったのか、疑問に思わざるを得ない。
もちろん来年2月から第2部をスタートさせるというので、最終的な評価はそれを待たねばならないことは明らかだが、ただやはり1つの懸念は言いおいて置くほうが良いかも知れない。
ネット言論に興味のある人は既にお判りのように、毎日新聞のネット言論との一連の抗争に関わることだ。
「毎日新聞」2007年1月1日号「ネット君臨 第1部失われていくもの」からはじまる一連の企画が、ネット言説空間で「毎日新聞がネットに宣戦布告 ! 」という扱い方をされ、大騒ぎになったのは記憶に新しいことだし、さらには今年に入って、まさに毎日新聞の経営存続さえ危うくなりかけた「毎日デイリーニューズ」(英字新聞)上のコラム「WaiWai」の記事をめぐる、まったく不手際極まる対応に関わる問題だ。
詳しくはネット上にすざまじい分量の記事を見つけることができるだろうからここでは触れない。
こうした問題は決して毎日新聞社だけがターゲットになっているというものではなく、紙メディア全てが明日は我が身の危機意識を持っているはず。
今回の朝日の企画もそうした背景を全く意識していないかと言えば嘘になるだろう。食い足りないという問題の背景にあるのが、やはり紙メディアのある種の萎縮があるとすれば残念なことであるが、しかし考えてもみれば、所詮商業メディアの限界と言えば理解できないものではない。
ネット社会と共存しつつ、紙メディアの特性というものを活かす手法はいくらでもあるはず。
玉石混合のネット言論とは異なる、知を集積した真のジャーナリズム(←皮肉だよ。そんなものホントにあるの?)精神を発揮し、大いにがんばってもらおう。
(販売店もがんばってね)←(いつも「ご苦労様、大変だね〜」と声掛けしているけれどね)

《関連すると思われる記事》

                   
    

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.