工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

自宅から300mのコンビニに強盗 !?

三面ベタ記事からは時代の裏側が読み取れたりするものだが、今日の夕刻のニュースにはホントにびっくりした。
そして次に顔を覆いたくなるほどの恥ずかしさに襲われ、何故か悪寒までしてきた。
いよいよ日本社会はとんでもない状況に陥りつつあるのかもしれない。
事件は35才の若い青年が自宅から300mの距離にあるコンビニに強盗に入り、非常ベルに驚いて、何も取らずに逃げ、翌日怖くなって警察に出頭、という事件。
師走を迎えて、要するにどこの地域でもよくあるような強盗未遂事件なのだが‥‥。
ちょっとこの事件の背景というものが、とても身につまされるようなものを持っていて、簡単にスルーすることもできないものではないのではと、立ち止まってしまったというわけだ。
昨日から今日に掛けての事件なので未解明な要素が大きいだろうからあれこれと分析できる状況ではないのだが、現段階の報道によれば‥、ということで少しだけ触れてみる。
この35才の青年、派遣社員として働いていたところを仕事が無くなり退社。
他の仕事も見つからず、カネが無くまともに食事もできず、水だけで凌いでいた。
住まいの家賃の督促状が来て、家を追い出されるせっぱつまった状況でコンビニ強盗を決意。
自首した時の所持金9円。


自宅から至近の場所への強盗。非常ベルで驚くような愚かしさ。
このおよそ犯罪の体を成していないような強盗には何とも笑えてくるような〈おかしさ〉があるが、しかし笑ってこと済ませるほどに単純なものでもないようだ。
所持金9円で、水しか口にできず、止むにやまれず、強盗か。
憐れだ。
いや、この強盗が憐れと言っているだけではない。この社会がこれまでかつてなかったほどに憐れなものとなっていることの怖れを感じる。
恐らくは仕事熱心な若者であっただろう35才の青年。
論理的思考のかけらも見えない、笑えてくるほどの思考停止に追い込まれての自暴自棄的な犯罪への「逃亡」。
ここから透けて見えるのは、派遣社員に対してはまともな人間扱いなど不要として切って捨てる企業の倫理。
苦境に追い込まれているこの若者を孤立から救い出すことのできない社会。
あるいは、危機に際し、生存を求めて、犯罪ではない、もっといくらでもあり得るであろう、受け入れてくれる身内、友人、先輩、そして公的機関へレスキューを発するルートさえ探し出せない、その愚かさである。
もちろんこれは個人の生存能力の問題でもあるのだが、同時に社会的なセーフティーネットによって受け入れることができなかったことも事実であれば、
やはり本来あり得べき「社会的包摂」の場というものが消えてしまっていることの1つの証なのかもしれない。
薄っぺらい若者の思考と、薄っぺらい社会。
こんなにも俺たちの社会はカサカサに乾き傷つきやすいひどいものになってしまったのか。‥‥‥本当に泣けてくる。
この国は相当にヤバイところまで来てしまっているのかも知れない。
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