工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

新工房および住居の造作、設備

新装なった工房兼住宅につき、これまで建具の一部につき紹介してきましたが、引き続き、ショールーム、住まいの造作など、私自身が関わったところを中心とし、また関連して設備周りなどを紹介していきます。

リビングダイニング

まず住まいのリビングダイニングから。

現在の日本家屋では、狭隘な国土、土地政策の貧困のためもあり、狭い敷地を家族構成に無理やり合わせたような間取りが多いのが一般的ですが、ご多分に漏れず我が家も同様です。

また全体の床面積では比較的余裕のあるものの、ショールームに大きく譲ったこともあり、さほど余裕のある間取りではありません。

したがってリビングだけを独立させて設けるわけにもいかず、ダイニングキッチンと同一空間とし、ダイニングテーブル、TVボード、ソファなどが置かれるという、良くあるパターンの間取りです。

妻と二人という家族構成でもあり、またリビングとは言っても仕事以外での居宅は、二人ともそれぞれの書斎(私の場合はショールーム一角の事務コーナーでしかありませんが)で過ごす時間が多く、これで過不足無いでしょう。

このリビング、実はまだ完成していません。画像左の壁面、穴ぼこがあるのは、この部分に納まる予定の、収納キャビネットの制作が未着手。
このままでは断熱が効かず、あきませんので、寒くなる前に何とかしなければいけません。

リビングダイニング1

リビングダイニング1


〈概略仕様〉

  • 床:樺材のフローリング(15mm無垢板)
  • 壁、天井:ルナファーザ
  • ダイニングテーブル:ミズメ材(工房 悠 作)
  • システムキッチン:クリナップ(S.Sライト)
  • 照明器具:IKEA他

テーブル

ミズメ テーブル 脚部

ミズメ テーブル 脚部

ミズメの食卓。
甲板:2枚矧ぎ
ご覧のように、赤身の張った良質なミズメです。

これはもう20年近くも昔に、松本の業者から仕入れた原木丸太です。
当時でも、これほどのミズメはとても貴重な材質ということで、惚れ込んで購入したものですが、
4m材、4本の製材のうち、残っているのはわずか。

脚部は4本脚。3寸板に挽いた材から穫り、いわゆるテリ脚をさらに傾斜させ、エッジの効いた造形をほどこした脚です。
断面も45度に傾斜させ配したので、幕板との納まり、仕口は大変でしたが、仕事としてはとても楽しめるものでした。

キャリアを積んだ職人ではルーチンワークになりがちなところ、こうした小難しい仕口のチャレンジは脳を活性化させ。良いものです。

2本のX型に交差させた貫の加工も、それ自体やっかいですが、加えて円弧状に成形したので、はちゃめちゃ、じゃなく、楽しく挑むことができたものです。(要するに遊んでいるわけ)

ダイニングの(キッチン側)造作キャビネット

キッチンと言えば、一般には一家の主婦が立ち働く場所でもあり、主婦の希望、好みで設計することが多いと思われますが、我が家では調理の半分は私が担うこともあり、ほとんど私が設備の設計、機器選定も行っています。

キッチン

キッチン

キッチンは対面式のレイアウト。
対面式は、ダイニングルームとの関係ではオープンになり、調理に伴う油などの異臭、排煙などで問題にもなろうかと考え、これらをシャットアウトさせるため、さらにまた同時に収容量の解決も含め、吊り棚を設けることにしました。

その吊り棚の背部は、シンプルにタモ12mm材をホンザネ接合で張り上げました。

キッチン本体のダイニング側には、L字型にタモのカウンターを設置(2,700mm+1,100mm)
カウンター上部には、もう1枚のサブカウンターを設けています。
配膳などで2段に使うためのものです(傾斜したステンレス脚はIKEA製)


そのカウンター下には、やや浅い奥行きのティーカップ、シルバーなどを収納するキャビネットを巡らせました。
さほど物持ちでも無いので、ここまで収納が必要とも思えませんが、半端な寸法より、全面覆った方が全体の納まりも良いわけです。

キッチン対面キャビネット

キッチン対面キャビネット

家具屋ですので、好き勝手に作っていると言い換えても良いかも知れません。
いわば、ショールームみたいなものでもありますし・・・(妻への方便)

扉のガラスはフロストですね(10数年前から、こうしたキッチンを主体に、オフィスでも、このフロスト全盛です)

キッチン

住宅設備も様々ありますが、やはりキッチンは最も重要なエレメントだと思います。
これは私自身も調理に立つことが多いと言うこともありますが、日に三度三度の食事作りは、健康な暮らしのためにとても重要な場所と言えるでしょう。

実は、このキッチンに関しては、未だに完成していません。基本的な調理、食器収納などは問題無いのですが、サブキッチン、食材収納庫など、未着手のキャビネットがあり、いつ着工できるのかも未定という状況。
そんな状況ですが、現況だけでも紹介する意味はあるでしょう。


さて、キッチン本体ですが、クリナップの【S.Sライト】というシリーズのもの。

数カ所、いくつかのメーカーのショールームを廻ってはみたのですが、当初から考えていたこの機種にしました。
理由は明確で、基本のフレーム、水洗ボール、ワークトップ、すべて上質のステンレスであることに尽きます。
18-8 1.2mm厚という業務用を超える品質のステンレスです。
ワークトップ、ボウルはドットエンボス加工。質感が良いですね。

キッチン本体

キッチン本体

キッチン、ワークトップの素材としては、このステンレスの他、人工大理石、ホウロウ、木製などと様々です。

また木工家具をしていますと、ワークトップも含め、木製でいきたいところですが、水回りであり、食事を作るところとしての衛生管理上から、やはりステンレスを置いて他に無いだろうと言うことです。

加えて、カタログでは気づかなかったことですが、ショールームでのチェックで気に入ったことがあります。Blumの機能金具が使われていたことです。

昨今、ハーフェレ、あるいはスガツネでもblumを意識してか、様々な機能金具(スライドレール、ヒンジ等)を開発製造していますが、やはりblumに1日の長があると言えるでしょう。


さて、クリナップの【S.Sライト】とは言っても、キャビネット、ワークトップのみです。
他、水栓、ガスレンジ、排気フード等は個別に探し、それぞれ別メーカーのものを取り付けています。

限られた予算の中から、もっとも高品質で、デザインも良く、飽きがこないもの。
探せばいくらでもありますからね。

一応、リストしておきましょう。

  • 本体:クリナップの【SSライト】2,550
  • ガスレンジ:リンナイ・デリシア
  • 水栓:シングル混合栓(三栄水栓 K8790JV
  • レンジフード:富士工業 SSRF

中でも気に入っているのが水栓(混合シングル水栓)です。
機能的で、使い勝手が良く、かつデザインの良い(=格好良い)もの。
そうした視点で探しますと、そうたくさんはありません。

しかも、こんな簡単な機構であるにも関わらず、どうしてこれほどまでに高価なのか、と呆れる思いもしましたが、選択したのは3拍子そろった上に、価格的にもさほど高価なものでは無く、決定したわけです。

ただ、残念ながら事前に現物を確認することはできず、ややリスクを負いながらの購入でしたが、そうした懸念は無用で、とても良い製品でした。

ON、OFF、水量、温度の操作が水栓の下部にあるレバー1本でできるというのが、実に使い勝手が良いです。
もちろん、先端はホースごと本体から引き出せ、伸ばすこともできます。


ガスレンジは、リンナイの最上位のクラスのものですが、グリル部は今では標準になりつつある、水無し両面焼きグリル。魚が美味しく焼けます。(外はパリッと、中はふっくらと)

またレンジフードですが、富士工業という、業界屈指のメーカーのもの。
システムキッチンのメーカーも、こうした付属の関連製品は自社では製作していないところがほとんどで、専業メーカーからOEM提供されているものでしょうから、であれば、直接そこから求めるというのも1つの考え方ですね。


なお、こうした諸々の製品価格ですが、一般顧客という制約において、恐らくは考えられる限り、かなり安価に揃えた積もりです。
インターネットでの情報分析、専門家のアドバイス、リアル店舗での確認、そうしたことを厭わなければ、通常価格の半値以下で入手可能です。

一般には、こうしたキッチンにしろ、トイレにしろ、設計士の紹介する1つの施工業者のプランニングのパッケージで仕様が決められ、納入施工というプロセスを取ります。
機種選択での基礎学習やら、面倒な詳細仕様の練り込み、発注手続き等、施主にとって必要な手続きは最小限のところで済ませ、丸投げできるわけです。

こうした従来の手法は、いわば商品を消費するという概念に留まる手法であることに対し、積極的にここに介入し、責任を持って機種を選択し、アフターケアなどを考慮しつつ廉価な販売店を探し、見積を提示させ、検討し、決定する。

さらには取り付け、施工においても、業者任せにせずに、自身も深く関わる。
商品の消費行動というより、施主自身が自覚的に作っていく、という手法になるわけです。

少し長くなりましたので、キッチンのキャビネット等については次回です。

hr

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • PP Meobler では、ショウルームに接客キッチン器材、食器類が備えてゲストの簡単なランチなどもてなし。レストランが近くになく、税金も高いので自家まかないでした。 ゲストが他所にわからいほうがいいんか、顧客をもアピールするほうが
    繁盛するのか。工房のクレジットに対する考え方ですね。
    もてなしは、工房のもう一つの顔かもしれません。

    • なるほど・・・
      一般にはコーヒー(時にはケーキを添え?)でもてなす程度でしょうが、上客には近隣の気の利いた食事処にお連れする、といったこともあります。
      ご案内のように、手ずから調理してもてなすというのは、より高次元の接待でしょうね。
      しかし、卵掛けご飯じゃまずいでしょうから、メニューもネット上に投稿されても恥ずかしくない程度が求められる。
      逆に、玄人はだしだと、顧客に「あんた、家具屋より料理人に向いてんじゃない」なんて茶々を入れられそう・・・(こっちのリスクが高いかも 汗; )

    • どいつも、コペンもハムを切り、ボイルエビなどライ麦パンにのせるていど。+のみもの。直火煙なく綺麗な室内・家具を維持するため。
      食生活と掃除スタイルを真似しないで、家具インテリアを輸入したのがおお間違いでしたョ。デザイナーは暮らしを知りませんから。
      ドイツ友人宅でエビ寝所や天ぷらをやったら味に驚き、キッチン汚れに驚かれた経験あり。旨い物は、汚れゴミ多くでるし掃除が大変。近所からクレームもくるし。
      日本食のイメージは上等です。日本の料理上手の台所は、まさに解体現場です。
      とりわけ綺麗な台所の主はは、うまい料理を出せないないですね。

    • ABEさん、エビ真薯まで作らはるんですか。それは喜びはるでしょ。
      確かに揚げ物は日本固有の料理文化ですね。
      洋食のフリッターなんてのはグルテンの塊みたいなもので、天ぷらとは似て非なるもの。(私もいつもカリッと揚げられるワケでも無いですが 汗; )
      ・・・綺麗な台所と、うまい料理を出すことを両立させてみたい!

  • ドイツの魚屋でエビの良いのがないとつぶやいたら、すぐに冷蔵庫からスカンジナビア蝦をだしてきました。友人のワイフが「といやー。トイヤー高い」と騒ぎましたが、箱買いでまけさせましたね。親父さんは、ドイツ人」はいい魚の味を知らないと肩をすくめて。北欧海老はうまいです。綺麗なのはいまのうちだけよ。掃除時間がないはずだじ。

    • キッチン周りの美麗な管理は、確かにやっかいですし、劣化の一途を辿るのも事実でしょうね。
      でも、素材、機材の選択、日々の管理によっては、それを遅らせることは可能と思います。

      美しく維持するため、IHじゃないと×、揚げ物は×、ロースターで生魚は×、などと制約を掛ける家庭もあるそうですが、そんなあほらしい事はやりたくないですね。

      (ドイツでの海老料理ってのも、確かに浮かびませんね。エビ真薯、私もチャレンジしてみたいな)

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.

Trackbacks / Pingbacks