工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

新工房および住居の造作、設備(その5:トイレット)

トイレット

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ショールーム脇にレイアウトされたトイレ、化粧室です。

2m × 2mの1坪強のスペース。
ここに大小の便器。壁面には大きめの洗面ボウルが載る、収納付きミズメ材のカウンターを設置。

床は濃青色のテクスチャー感のある磁器質タイルを張りました。(テクスチャー感:ツヤ消しで、ランダムに凸凹があり、石材のようなテクスチャー)

これはイタリア産のタイルですが、クールなイメージでGood !

洗面ボウルは82cm幅というトイレ付設のシンクとしてはかなり大きめのサイズで、オーバーフロー付きですので、安心してしっかりと手荒い、洗面ができます。

壁面にも一部、磁器質タイルを張っています。
衛生面、メンテナンス面で重要な仕様です。

空間デザインとしても、パウダールームとまではいかずとも、快適に過ごせるよう設計デザインしたつもりです。

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センサー付きの快適さ

レバー水栓はセンサー付きです。不特定多数の方々が使う場所ですので、こうしたセンサー付きというのも重要な仕様でしょうね。

加え、天井、およびミラーTopの照明も同じくセンサー付き(明暗+人感)の自動です。
このセンサー、照明と共に、換気ファンも連動します。

便器も事を済ませ、起ち上がると洗浄がはじまる自動式。

つまり、トイレットのドアを開けると、照明と換気扇のSWが入り、事を済ませ、手を洗う。この一連の動作はSW、レバーなどに一切手を触れること無く終えることができるようにという設備にしました。

洗面ボウル下のカウンター、および収納キャビネットはミズメカバ、真樺などを用い、ガッチリと作りました。
床からは15cmほど浮かせ、壁を貫通させたボルトによって堅固に固定されています。

キッチンの回でも触れましたが、木工をしているとはいえ、やはりメンテナンス、あるいは美観から、設備、施工、素材は考えるべきですし、衛生設備が置かれる部屋であると言うことからもなおのこと、床を木でという考えは当初から排除し、最良の選択としてタイルを選んだわけですが、この考えは正解だったと思います。

清掃、メンテナンスが楽ですし、空間デザインとしてもクールで、何よりも衛生的です。
キャビネットを浮かせたのも同様の理由ですね。

収納キャビネット扉のミズメですが、松本民藝家具に納めている材木業者から、虎斑(トラフ)指定で取り寄せたもの。
こうした杢は好みが出るところですが、あえてミズメを強調しての施主の考えです。

床のダークな色調に、ミズメの赤身の明るさが引き立ちます。
(施主と施工主が同一というのは、えてして独善的なものになりがちかもしれませんが、他業者、あるいは周囲の方々からは概ね好感を持って評価して頂いています)

便器は可能な限りに不要な機能などは考えず、コストカットで選択しましたが、リモコン式、タンクレスの温水洗浄一体型便器。
快適ですね。

中国人による、いわゆる「爆買い」の対象として「ウォシュレット」が挙げられ、これに中国共産党が過剰とも思えるほどに腐したことへは、苦笑とともに、衛生概念の文化的差異と、キャッチアップ過程での歪みを考えさせられ、興味深いものがありましたが、日本国内ではすっかり浸透、定着してきているようですね。(WSJ

これらの設備、施工ですが、便器取り付け、電灯配線だけは業者に任せましたが、後は自力更生。

なお、これは余談ですが、うちは化学製品を極力排除したライフスタイルを基本としていまして、したがってトイレットのハンドソープも無添加の100%純石鹸を使っており、また、芳香剤、化学由来の消臭剤などは一切使っていません。

その代わりと言えるかどうかは分かりませんが、消臭効果のあると言われる、珈琲豆の出し殻を置いている程度です。

実際、換気扇、便器本体などの脱臭機能の効果と併せ、異臭は全く残らず、快適に過ごせます。ご安心を。

タイル張り

150301b経験の無かったタイル張りですが、最初は施工経験の豊富な設計士のカーポスさん、および地域のプロに教わり、専用ボンドを取り寄せてもらい、設計士から借りたタイルカッターの機械[1] を使ったりと、皆さんに協力して頂きながら、楽しく張り上げることができました。

素人の施工ですので、多少は目地が合わなかったりするのは避けがたいもの。しかしそれも味わいというものです。

なお、タイルの供給ですが、個人通販でも様々なところがありますが、できればショールームで現物を確認してから発注したいものです。
テクスチャーや色調は、やはり画像から判断するのは難しく、現物チェックが必須です。

クールな商品選択

このトイレ室の設備費用(大、小便器、洗面ボウル、自動水栓、センサー照明、タイル、ミズメ等材木、ミラーなど全て)ですが、丸々¥150,000ほどで上げましたので、このクオリティーの相場からすれば、かなりのコストカットで納められたと思います。

こうした設備に詳しい方でも、このコストには驚かれるほどのものがあると思いますよ。
(温水洗浄便器1つだけでも、通常このトータル金額でも納まらないというのが相場ですので、業者の方でも驚かれるはず)

クールな商品選択で建築費用はかなり抑えられるという、好い事例の1つですね。

資金的な余裕が無く、しかし審美的な側面からも、決して恥ずかしくない仕様、空間デザインで設計するということは容易ではありませんし、私のような建築素人であればなおのこと困難なことです。

しかし、設計士と相談しつつ、施主側の住まい方、デザイン嗜好、素材嗜好を伝え、アイディアを出してもらい、それらを元に、建築関連のデザインブックなどを図書館で漁るなどで、武装することは可能です。

しかも現在はインターネットという強力なツールがありますので、最善の選択をすることは決して困難なものではありません。

求められるのは審美的感性と、与えられた状況下でそれを適える柔軟な頭脳、そして様々な業者との連携と調整。言ってしまえば建築への意志です。

例え妥協の産物ではあっても、与えられた状況下で最善を尽くすことです。
施工業者側も、そうした施主の意志を量りつつ、臨んでくるわけですので、強い意志を見せ、自らフットワーク軽やかに動くことです。

建築は高い買い物であるわけですが、在り合わせのものをいただくのではなく、自ら作り上げて行くという意志の熱量こそが、内実を決めていくことになるわけです。

窓枠材

150304m右画像は、トイレ小窓の窓枠台のカット。
42cmの奥行きがありますが、ミズナラ材で、しかも矧ぎ無しの柾目1枚板です。
原木にすれば、100cmを越えようという代物から穫ったものですね。

建築施工時、ひっきりなしに大工の棟梁から材木の供給を指示されてきたのですが、建築仕事の経験の無さから、これほどまでに材木を使うのかと、あらためて驚かされることしばしばでした。

家具のキャビネットであれば、一般には9分仕上げあたりが普通ですが、建築では薄いものでも1.2寸ほどが当たり前。長さも3m、4mはざら。

この窓枠もミズナラからタモの良材まで、ド〜ンと注ぎ込んでしまいました。
ハウスメーカーであれば、こうした個所はほとんどの場合、集成材ですし、安価をうたったところでは張り物でしょうね。

例え無垢材であったとしましても、良く見掛けるのがアガチスといったような南洋材。
私の親方に言わせれば、あんなものは木じゃなく、草だから、絶対使うんじゃないぞ、と強く念押しされたものですが、確かに、ボソボソと崩壊するような脆弱な物理的特性であるようです。

いかに国産材が良質であるかを教えられる、いわば反面教材です。

この建築での窓枠は、ミズナラの他、タモ材を使いましたが、在庫していた1.5寸のお宝タモ材をほとんど全て供給し、費やしちゃいました。

このシリーズの最初の頃に触れたと思いますが、階段材も2寸板のタモを供給。
当初の仕様ではゴムの集成材と言われたわけですが、トンデモ無いわけで、慌ててストックしていたヤチダモを供給することに。

これらはかなり贅沢な仕様であることは間違いが無いでしょう。
材料を確保していなければ、こんなことはできなかったと思います。

大工の棟梁も、国産材を相手としたことで気分良く、快適に加工、施工に勤しむことができたようですよ。


〈新工房および住居の造作、設備〉シリーズですが、ここでいったん中断します。
今後は断続的に更新するかも知れませんし、無いかも知れません 笑

なお、記事中、関心のある設備、資材、素材等、より詳しく知りたいことがあれば、メールでお訊ねください。

また、現場をご覧いただくこともできますので、お気軽にお越しください。
ではまた〜。

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❖ 脚注
  1. 施工現場に運び込み、タイルを直線的にカットするためのコンパクトな工具。冷却水の注水と、これを受けるバケット付き []
                   
    

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