工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

なんちゃって ブラックウォールナット(追補)

本件、ブラックウォールナットの退色(褪色)変化の話しですが、異論反論が押し寄せるかなと、ビクついているものの、音無しですね。

もう既に皆さん、お気づきのことであった事なのかも知れませんね。

ただ、その後、ネット上での関連する記述を(ビクつきながら 笑)探しても、私の知見と同様の記事は探せ出せず、暗澹としているところでもあります。

以下、関連記事で、代表するいくつかの知見を上げて視ませうか。

  • チョコレート色ですが退色して少し薄くなります。
  • 紫褐色した木ですが、経年変化で色が少しき明るくなり落ち着いた色へと変化します。
  • 経年変化によって(日焼けなどによって)色が少しずつ退色し、濃淡の縞も相まって、落ち着きのある、チーク材に似た様な色味、見た目に・・・

営業トークのような表現もありますが、褪色変化については購入客から、クレームとまでいかずとも、問い合わせもあるのでしょうか。

無論、置かれる環境によっても異なるのは当然としても、基本的には、前回記述した私の考えは、30年ほどの実体験からのものであり、ある方式の人工乾燥による人為的な操作もまた事実ですので、それらにふまえたエビデンスとして信頼頂いて構いません。


なお、乾燥方式に関わらず、ブラックウォールナットを用いたオイルフィニッシュの家具は、経年変化、日焼け等で制作時からは質感が劣化することは当然ですね。

ただ、天然乾燥だけの材木であれば、たぶん、再塗装すれば、制作時の瑞々しさが戻るはずです。
他方のスチーム・ドのものは褪色が進み、例え再塗装しても、制作時の色調には戻らないでしょうね。

因みに、うちのショールームに置かれているいくつかのブラックウォールナットの家具は制作時にオイルフィニッシュしただけで、13年を越えるものがありますが、色調としてはまったくと言って退色変化を見せていません。

本件、差し支え無ければ、皆さんの体験、知見、情報等、ぜひお寄せください。
私の間違いを指摘するものであれば、なお歓迎です。


ところで、人工乾燥ですが、可能な限り、用木は人工乾燥した方が良いです。

一般には、天然乾燥では所定の含水率まで下げるためには、かなりの時間の経過が求められ、この時間を大きく短縮するために「人工乾燥」という強制的な方法が開発され、それを使うのが当たり前になっているわけです。

他方、じっくりと天然乾燥で攻めている私たちとしてはどうなのでしょう。

私も国産材のほとんどは、天然乾燥をしっかりと施した上、あらためて人工乾燥を施す、という方法を基本としています。

天然乾燥でも時間を掛ければ、かなりの含水率まで下げることが可能ですが、実は湿潤な環境に置くと戻りやすいという性質があります。

とこどが、人工乾燥を施しておくことで、この戻りを最小限に留めるというメリットがあることは知っておきたいところです。

人工乾燥は大変高度な技術でもあり、ここで私がこれ以上の有為な話しをできるほど安易なもので無いので止めておきましょう。

❖ 追記(2016/07/04)
本記事のコメント欄でも記しましたが、米国のサイトに本件ポストに関連する、少し詳細な記事(Steaming Walnut for Color 、A description of Walnut steaming methods. )がありますので、ぜひご参照ください。(こちら

ここで開陳されているメソッドの認識は、2度にわたって書き連ねてきた私の見解を補強するものとして展開されていることが分かります。

なお、今後もさらにブラックウォールナットのSteaming方式を含む、人工乾燥について関心を持ちつつ臨んでいきたいと思います。

いずれにしましても、2種類のブラックウォールナットを自覚的に弁別し、その特性を良く理解し、それぞれ有効に使っていきたいものです。

hr

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 「樹木 材色論考001 」
    ①自然素材は地域、個体差あり 定性など例外、幅があるので言い切ると誤解を海増
    ②BWやPadoouk は、人工乾燥すると芯材色素が重合反応するので安定し酸化退色しにくい ハズ
    ③BW突板は北三が国産をやめてUSA生産したときから退色するようになった
    熱源ヒート方法が変わったため、突き板色がぼけやすい(特に天然木化粧合板)
    ④AHEC 米国広葉樹協会のガイド・マニアル、サンプルもバラバラで
    Eastern Walnutのような明るい材もBWとして掲載している 厳密ではない
    ⑤国産鬼ぐるみも同じような色幅、個性の違いあり
    ⑥シーダー真運天工房の用材は、とりわけ丸太買い濃色で縞入り良材が多いのでビスポークした人は幸運
    ⑦kiln-dried人工乾燥炉で熱風乾燥と水蒸気乾燥では材の内部応力・色素変化がかなりちがう
    ⑧紫系の材色は酸化、紫外線で退色が早い
    ⑨亜麻仁油のオイルフィニッシュでは含浸塗装独自の濃色になるので効果的 毎年オイル拭き手入れを要します。
    ⑩濡れ色の持続が良好なのが、一液性ウレタンオイル。乾燥早く手入れもしやすいのでお勧め。
    但し、分子を架橋、酸化反応・乾燥促進するために添加されている重金属ドライヤーがどの塗料にも
    成分含有しており、100%自然塗料は漆、イボタ蠟・蜜蝋・櫨蠟・くるみオイル、米油、カルバナムワックスのみで溶剤が精油自然油練りが一番安全。桐油は太陽光で乾燥硬化しますがドライヤーを併用。

    今晩は、こんなところでスカに、

    キコレーズ半世紀ABE

    • 広汎な知見をご披露頂きました。
      さすがにABEさんです。

      材色は材種固有の性質で、実に多様なものを持ち、かつその変化の在り様も様々ということですが、
      加え、人工乾燥の方式でさらなる偏倚を。

      したがって材色の固定、あるいは変化を狙う場合もあるでしょうが(アンモニア蒸着なども含め)、これらはかなり実証的に検証し、選択する必要があるということでしょうね。

      ただ、一般には材木屋もトレーサビリティの規格化でも無ければ、その出自も、その後の変化も把握していないケースの方が多く、末端のユーザーとしても確認のしようがないということになります。

      やはり丸太買いから介入し、その後の人工乾燥においても、協力し合って目的とする材色を獲得するということになります。

      ーーーーーーーーー

      ①確かに、同種のものでも地域差は認められますが、アメリカンブラックウォールナット(=Juglans nigra)、ということであれば、材色を含め、一定の属性を共有していると思われます。
      ②Paddockは変化しやすいと聞き及んでいますが
      「重合反応」での材色安定、ですか。なるほど・・・
      ③北三は静岡にも突板工場を持っていまして、私も突尻を分けてもらったり、良い交流がありましたが、15年ほども前に工場は畳まれ、倉庫と事務機能のみと。
      (当地には、他にも、数社の突板屋がありますが、いつまで操業するのやら、って感じです)
      ④AHECも、アカデミックというわけもなく、十把一絡げでしょうか。
      ⑤鬼グルミ(本胡桃)も仰るように、実に多彩で、ブラックウォールナットに近似するものもありますね)

      ⑦このあたり、少し学習したい分野です。
      ⑧パープルハートなどですね。
      ⑨⑩ 一液性ウレタンオイルは作業性も良いわけですが、耐水性含め、ユーザビリティが高いです。ただ濡れ色感ということでは、亜麻仁油主体のオイルフィニッシュに譲ります。

  • そうそうデンマーク高級家具のTRANEKAER社 では
    Wenge Teak Cherry ローズ エボニー など挽き板を熱風炉にいれて
    材色固定をしていました。 パーケット寄せ木パターンの天板など
    色の退色が長期ありませんでした。無垢材はノウハウがあるのです。

    キコリースABE

    • 人工乾燥の工程管理事態、たいへん高度なものと聞いています。
      加え、材色固定に有用な方法があるとすれば、たいへん興味深いものがあります。
      やはり日本の白木文化とはかなり位相の異なる北欧木工文化ならではのノウハウですね。

  • 夜があけました。
    それもさておき、
    パドックも有馬
    あの朱赤緋血色
    材色固定難しく
    熱風式絶乾処理
    がベストです。
    貴重材も無い唐
    無垢材の処理も
    かないません。
    迷ボクやさんが
    儲けて廃業した
    歴史的贅沢時代
    パリサンダー・
    シタン・ローズ
    紅木・琉球黒檀
    マホガニーも幻
    木の仕事の愚弄
    遙化の御粗末。

    きおれーズABE

  • この種の記事はこのブログで何度か拝見して来ました。
    現象としては、あーそうなのかな、という理解ですが、結局の所
    その現象に対する科学的な理由付けは皆無ですね。
    スチーム、ドと呼ばれる乾燥は、一般に言う蒸気乾燥と同一の物
    なのか、ブラックウォールナットに特別に行われる乾燥方法なのか
    どういう理由で赤身の色が白太に移るのか、なぜそうすると退色し易いのか、何も分からないですね。
    まあ、誰かが考え付いた方法でしょうから、知っている人はいるんでしょうけどね。

    • ここでは、ブラックウォールナットは褪色する、という通説が流布されているところ、
      私のブラックウォールナットのものはほとんど、この褪色が視られないという違い、
      対し、一部には製品で求めたブラックウォールナットのものは、確かに褪色が視られるという「実態」から、その背景を探ってみたというところです。

      丁寧に天然乾燥を施したものは、決して褪色するものではなく、制作時の魅力を放ちながら、ブラックウォールナットの魅力を長年に渡って留める、ということを知って頂きたいという意図からのものです。

      ここには明らかに異なる2つのブラックウォールナットが存在する、ということですね。

      確かに、ご指摘のように「科学的裏付けが無いじゃ無いか」とのお叱りは甘んじて受けるしかありませんが、

      ただ、市場には赤身から白太への色調移行を狙った乾燥材製品が出回っているという現実があるわけです(赤身は本来のブラックウォールナット固有の色調は失われ、本来であれば白いはずの白太が、薄い灰褐色に変化している)

      こうした問題へのアプローチは決して無駄ではなく、個人的には有為な知見(例え十分なものではなく、限定的なものではあったとしましても)だと信じます。
      それを認識していながら、他に公開せず個人的に抱え込む、と言うことと較べ、どちらが誠実な態度であるかを考えてみてください。

      もちろん、それにacanthogobiusがどのような見解を持とうとも自由です。

  • このブログでは、スチーム、ドは人工乾燥の一つの手法として
    説明されていますが、以前、大阪の材木屋さんから赤身の色を白太に
    移すために、煮るんです、という話を聞いた事があります。
    これはブラックウォールナットではなくチェリー、または桜だったように記憶しています。
    スチーム、ドとは色を白太に移すための一つの手法であって、乾燥方法とは別物ではないですか?
    スチーム、ドを乾燥方法だとする根拠は何処にありますか?

    • Steamingは一般にはチェリー、、ブナなどを対象として行われていたようです。
      米国のサイトに、少し詳細な解説がありますので、ご参照ください。
      ブラックウォールナットの場合、辺材の白色をいかに黒くするのかの苦労話が記されているようですよ。

      Steaming Walnut for Color

    • なお、Steamingの工程は、その後Dry、人工乾燥へと移るわけですが、確定的なことは申し上げられませんが、多分、同じ窯の中で、1連の工程として行われていると考えられますね。
      いわば、人工乾燥の工程の一環として、このSteaming工程が予備段階として行われていると言えるかも知れません。(これはあくまでも私見ですが)

      〈訂正、および追記〉(2016.07.04)
      米国サイトの解説に依れば、同じ窯ではなく、それぞれ別の窯のようですね。
      ただこれら一連の工程を、製材会社、あるいは乾燥専門業者が担っているのだろうと思われます。

      日本国内での乾燥システムでは、こうした高圧、あるいは大気圧での、100℃の蒸し上げをしているのかどうかは不明ですが、過去、私が入手した国内による乾燥材では、こうした詐術は行われていなかったという認識です。

      中国の製材会社から輸入されるブラックウォールナットでは、蒸す方式の乾燥が行われてたものを使ったことがありますが、ここでは、白太が心材より、より黒いという逆転現象すら視られ、驚いたことがあります。
      ・・・過ぎたるは及ばざるがごとし、ではあります。

  • 他人がどのような見解を持とうとも自由だと言ってしまうと
    異論反論は来ないですよね、多分。

  • 赤飯の原理となずけませう。蒸し器式。
    古いヒルデでは、芯央色素の仕上がりは問題にならなかった。
    むしろ、その後のシーズニングが問題でしたから。
    内部歪を軽減する蒸気併用から少し広葉樹色素移りがでてきた。
    「山派」の池谷技師より教わったスケジュールは楽器材の難しい
    操作を自動化した1970 頃だったかも。建築材と家具材では少し
    乾燥システムが違いますね。濃色・超堅木材は人乾不可でした。
    Webではあいて先が分からないので的確なコメントは梨の木平。
    記憶レーズABE

    • 赤飯蒸しの原理から援用ですか。おもしろい、分かりやすい例えです。
      蒸し上げることで、小豆が固有に持つ色素成分が蒸溜され、白飯へと移る。
      全体的に赤くなるわけですよね。
      一方、本来有していた小豆の赤色は薄くなる。

      紹介したWebテキストでは、心材の色は均一化する(The heartwood more uniform in color.)と解説していますが、
      要するに、ブラックウォールナットが本来有する、多彩な色調は失われ、平板なウォールナット色に「落ち着く」というわけです。

  • それもさておき
    大正時代から鉋台や鑿柄も赤樫に見せるため煮・似ます。
    高く熟れるから、油台もそんな工夫でした。
    イチイガシなどが使われていました。

    記遅レーズABE

    • そうですか、知りませんでした。
      材木を扱う現場では、いかに価値を高めるかに心を砕いていたわけですね。
      古今東西、考えることは同じです。

  • またまたさておき
    電子レンジでパドック木っ端を5-10 /Min.
    繰り返すと油分が煮え立ち動くのが分かります。
    材色は安定します。
    ワークトップ厚板の埋木契りや撮みには効果的です。
    学生時代に電磁シールドが厄介な低周波乾燥機がありましたが
    時間がかかり、不安定ですたれました。
    古い話ですが案外本質を教えてくらました。
    木味シレーズABE

    • 人乾方式には「真空乾燥」という方式もあるようで、一般的な高温蒸気窯による色調変化、油成分の抜けを嫌い、低温真空窯で乾燥を行うとのこと。

      今回のBlogエントリを機として、木材乾燥についての知見を深めるものにしていきたいものです。
      加え、退色に関しても、さらに情報を収集し、あるいは実証的なデータを取得する方向で考えていきたいです。

  • 山のストック材も平衡含水率まで下がり熟成
    ナガメ長雨せしまに日干しになりそうです。
    元来、火山灰と腐葉土に立つ樹木は色気少なく
    ハッキリしない淡色系樹体になりますから
    木工職は赤黒紫にウットリ惹かれます。
    それもさておき
    阿寒刺すの葉っぱには棘がありますかね。
    図案の先生は、実物見たことも無いのに
    教えていただきおかしな生徒を沢山作り
    ロック学遠逃走をおこしたのであります。
    文句をいわず、腹に矯めてはイケマセン

    呼ばれなくてもお茶に行く
    楽しみな木樵の見習いより

    • 松本という風土は、材木乾燥における指標ともされる適地だとか聞いた記憶も。

      日本の唐木好みは古代からのものでDNAとして継承されていることは間違いないでしょうが、
      他方、BWですが、当時は当然にも米大陸との交易は無く、誰も視たことは無かったはず。
      唐木に加えて、BWが銘木への仲間入りしたのは近代。

      アカンサス、よく似たアザミにはトゲがありますが、アカンサスには無いはず(でもアカンサスという名称はトゲという意)?

      ロック学園(=全共闘による学園封鎖?)
      アザミで抽出した茶でよければいつでも歓迎です。

  • 受け入れ飢え入れ売れ入れしてくれるところがないので
    寄りつくらしい。美人までも・
    スイスイのように
    高等専問校を
    創らないと
    あぶれる
    若モノが
    よたる
    かな

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