工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

魅惑のブラックウォールナットで

Desk:Blackwalnut

ブラックウォールナットの机(脚部)

定まらぬ気象。三寒四温という奴で、春への移ろいであればそれも受け入れよう。

デスクの脚部も完成したので、乾燥した天候の下、塗装を進めている。

甲板はまだ木取りもしていないのだが‥‥。
これは原木から製材し、天乾(天然乾燥)中の桟積みの山を崩して選木していくことになる。
内地産の白木であればこうした天然乾燥の後、人工乾燥を行うことを基本としているが、このブラックウォールナットのような濃色材については人工乾燥はしたくない。

理由は単純、人工乾燥の過程でこのブラックウォールナットの色調が大きく損なわれるからだ。
この魅惑的な色調を留めるためには、人工乾燥が不要なほどにたっぷりと天然乾燥を施し、そのまま工房へと運ばれねばならない。

さて、このデスクの依頼主もBlogをチェックされているので、制作途上ではあるものの、脚部のイメージをお届けすべく一発下地塗装を施し、抽斗も納め、スナップショットとなった。

この4月に小学校入学を迎えるお子達の学習机。
学習机とは言ってもかなり大ぶりなサイズ。5尺(1,500w)近い間口を持つ。
サイズのみならず構成、品質ともに、彼らの人生にずっと随伴していくことになるであろうデスクである。
この脚部下にワゴンが入る。

デザイン的には奇をてらわないシンプルなものだが、いくつかのディテールにおいて丁寧な仕事と工房悠風のオリジナリティーを見せたつもり。

1つだけ取り上げると、正面の板の構成。
上下の棚口と左右の幕板、そして2杯の抽斗前板、それら全てが1枚の板から木取りされ、構成されている(画像下参照)。
どうなっているん?、
これはヒミツのアッコちゃん (^_^;

こういう場合、一般的には鋸で挽き抜いて、空いてしまったそのアサリ代分をぐるりと紐を巻いてフィッティングさせるという方法が取られる。
しかしこの抽斗前板は紐は巻かれず、ただのシンプルな1枚の板。

当初、抽斗前板もこの一体的構成を象徴的に見せるためフラットにする積もりだったが、方針変更。
ここはあえて切り面を付けた。

実は、ヒミツなぁんて大層なものではなく、少しでも木工をかじっていれば、な〜んだ、そんなことか、といって程度のものなので、“言わぬがハナ”だろう。

こういう方法を取るのは数回目となるが、いざやってみると、これがなかなか大変で気苦労の多い作業だ。
しかしこうして仕上がればその労苦も忘れ去るという単純な性格が幸いしているか。

抽斗仕口は前回取り上げたように、包天秤指(つつみてんびんさし)。
抽手は以前このBlogで上げたようにローズウッドの工房悠オリジン。

冒頭に触れたブラックウォールナットの木取り方法だが、今回は全ての部材を1本の原木から獲ったことで、様々な表情、色調を見せるブラックウォールナットではあっても、統一したイメージで納めることに繋がった。

もう数回塗装を重ね、来週からは新たな制作へと入って行く。

Desk front

机、抽斗ディテール


hr

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  • なるほど、こういう形の学習机ですか?
    永く使えるデスクであることは分かるのですが、小学校入学の
    子供がこのデスクを使う場合は、子供の足は宙に浮いた状態になるのでしょうか?
    学習机である以上、子供の成長に合わせて替わって行く方が
    自然なような気がしますが。

    • acanthogobiusさん、ご心配いただきありがとうございます。

      確かに仰られることは懸念材料であるでしょうね。
      今回は親御さんの考えが、こうしたものを、ということでした。

      市場には様々な子ども向け机のジャンルがありますが、そうしたものではなく、高品質なものを、またしたがってそうそう買い換えるわけにもいかないので、大人になっても使えるものを、ということになったわけですね。

      子どもさんのシートハイの問題は疎かにできませんが、トリップトラップチェア、あるいはバランスチェアなど、天板高さが大人向けであっても、シートハイおよび足位置が適切、安定的に調整確保されているものがありますので、こうしたもので対応するという考えになります。

  • おはようございます。 勉強机のスケールのことはずっと気になっていることです。 我々の地域で木工産業振興のために学校の机を木製のもので、ということになり製造したのですが、デザインは県庁所在地の指定デザイナーで、図面は天板はメラミン合板、高さアジャスタブル、椅子はスチールとの混構造といったものでした。  木を使いさえすればいい、ってもんじゃ無いような気がします。
     近年、家具全般に、それぞれの身体や住環境に臨機応変に合わせなくてはいけないという義務が生まれていますね、何だか自分だけのカスタムなものを作るという考えと真逆なことのように思われます。棚板は可変式に、クロークのハンガーレールも可変式に、居間の机を座卓と食卓に高さを変えられるように、果たして皆さん変えられるようにして実際に変えておられるでしょうか。
     本棚の可変式の棚板は個人的には好きではありません、だからこんな風に思うのでしょうか(笑)。
     

    • 小さなお子さんがいらしゃるたいすけさんとしても、少なからぬ関心のある分野ですね。

      適切なレスにはなりませんが、以下簡単にこうした学童机についての現況の一端を。
      多くの地域でスチールの学童机が使われていることは周知のことですが、ここ15〜20年ほど前から、地場に産するヒノキなどを活用し、地元の家具屋、建具屋、大工さんなどが工業試験場などとタイアップして学童机を作り納入するという活動が盛んでした。

      これらの多くはデザイナーの助力を得て、机、椅子ともに、体格が向上していく学齢とともに、数cm単位でのステップアップができるような構造になっているようです。

      これはスチール机から、地元産の木材を使ったものへと転換することで需要を喚起し、また子供達の情操教育の意味合いをも兼ねたものであるようです。

      あまり参照にはならない話しで恐縮ですが‥‥、
      私などの世代が自転車の運転を習うのは、もっぱら大人用のものでして、サドルには腰掛けず、デルタのフレームに片足を入れ、傾斜した姿勢で運転したものです。(年齢がバレバレですね)

      子どもの浅はかな理科の理論で、遠心力を勘違いし、カーブのある強い坂道を下るにあたり、回転外方向へと重心を置いたものだから、当然にも転んで大きな怪我をしたことがあったのは、あれは小学3年生の時でした。(笑ってやってください)
      それ以来、理科が好きになったのでした ??

      話を戻しますと、
      就学前の子どもの家具ともなれば、親御さんの意向がモロに反映しますが、たいすけさんのギモン(問題提起)は、様々なのではないかと思いますね。

      ただはっきりしていることは、あなたのお子さんたちは、お父さんの作った机で成長していくことができるので、とても幸せであるということです。

  •  自転車の三角乗り(我々はそう呼んでおりました)!懐かしい!
     おじいさんの自転車は重くてダメでした、いわゆるママチャリでやってました、僕は左側から入っておりましたので、右カーブがキツかったです(笑)。

     今の所、僕の娘(小2)はじいさん作のライティング・ビュローを使ってます。民芸時代の色が強い、ミズメにアセン塗装、大阪匠工芸仕様のものです。
     勉強部屋が出来たら(いつのことか判りませんが)机を考えようと言ってありますが、本人は工場の工作台のような机がいいそうです、、、。

    • >自転車の三角乗り
      そうでしたね。忘れていました ^_^;

      >ミズメにアセン塗装
      アセン(=阿仙)は私も使うことがありますよ
      民芸色にはしませんが、発色が渋く、好みです。

      >工場の工作台のような机
      悪い考えではないですね。
      もしかして、将来を見越して‥‥?
      なんてことも無意識のうちに潜んでいるかも。

  • こんにちは。
    あまりに美し過ぎる色調とハイセンスなディテールにため息が出ました。まさに魅惑。
    ヒミツの箇所、棚口上の矧ぎが殆ど分かりませんね!

    ウォールナットの色調は経年変化で色褪せると聞きますが、どの程度の退色具合なのかという事は非常に興味が湧くところです。
    材の性質、塗装、保管状態などによって一概の比較もできないでしょうが、年数との対比で見れる写真データなどの過去の公開があればぜひ拝見したいものです。
    今回の作品では退色に関して何か策を講じられていますか?
    (ユーザーへのメンテナンス用オイル材提案などもされますか)

    ウォールナットの場合、他の材種のように経年で味わいのある色になる、といった意見を聞く事がなく、むしろ色褪せと表現されるように懸念されるケースが多いのではないかと感じています。
    それでも、木が好きであれば、色の変化も趣と捉えようとする、ある種の強迫観念的な要請を感じるときがありますが、これだけ美しい色を見てしまいますと、褪せずに永く維持してほしいものです。

    • momooさま、失念しているかも知れませんが、このBlogコメントはお初でしょうか。
      ありがとうございます。

      過分な評価、恥じ入ります。
      実は今日のことですが、大手の材木屋の営業マンが訪ね来て、これを見てその色調に感嘆の声を挙げていました。
      一般に流通している彼らが扱うウォールナットからはこのような色調は望めませんからね。

      さて、家具の退色問題でした。

      >材の性質、塗装、保管状態などによって
      その通りですね。
      濃色材は薄くなり、白木は濃くなり、逆方向ですがそれぞれ同じようなところに落ち着く、というようなことがよく言われます。

      これは材そのものの色が退色するというより、“日焼けする”ことによる変化ですね。
      同じ事を言っているだけですが(笑)。

      >年数との対比で見れる写真データ
      残念ですが、そのようなものは取っていませんが、必要かも知れませんね。

      さて合成樹脂塗装では“日焼けしにくい”シーラーなどで退色を遅らせる、という方法はあります。
      ただオイルフィニッシュなど自然塗料ではそうしたものは無いのかも知れません。
      したがって、momooさんの仰るように「ユーザーへのメンテナンス用オイル材提案」とか、直射日光を極力避けるようにアドバイスする、などになりますね。

      その上で、やはりメンテナンスの重要性を訴える、というのが正攻法と言えるでしょう。

      貼っていただいたLink、少し拝見しました。
      アマチュアとはいえ、本格的になさっておられますね。
      がんばって、また大いに楽しんでください。

  • いつも拝見しておりますが、コメント投稿は少なく本当にたまにです(汗)。ですので勿論お忘れの事でしょう(笑)。
    改めまして宜しくお願いいたします。
    >直近~2010-11-20(土) 13:48 !
    >昨年の秋刀魚刺身のお披露目の時!

    ぼくはただの趣味です。素人の中でも相当下位レベル、本格的とのお言葉は少々恥ずかしく・・・大変励みになります。感謝^2
    ぼくは木という素材が大好きですが、中でもウォールナットは地元産のミズナラと同じくらい大好きな素材です。
    artisanさんの作られる家具をいつか見てみたいです。

    • momooさん、失礼しました。
      かなり耄碌しているようで‥‥。

      >地元産のミズナラと
      今や国産のミズナラはとても貴重な材種になっていますので
      うらやましいです。

      ウォールナットの色調も様々ですが、可能であれば良い原木を探して
      製材から自己管理することが望ましいです。

      機会があればまたご覧になってください。

      もう失念することも無いと思いますので(苦笑)、
      これからもどうぞよろしく !

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