工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ブラックウォールナットの壁面収納家具

ブラックウォールナットの壁面収納家具

前回、少し詳しく紹介させていただいたランバーコア材を扉に用いた、複数台のシステム収納家具です。

個々の収納家具の構成は様々ですが、帆立は板差しを基本とし、一部、框組で構成したものもあります。
2,500mmを超える天井の高さまでのものであり、これを1枚の板で構成するのは、様々な問題もあるところから、上下2段に分けたりしています。

画像は今回納品したものの一部で、他も同様の構成であるところから省略します。
また納品時、建築内装も途上であるところから、撮影環境としては望ましいモノでは無かったのですが、ご容赦ください。

構成の特徴

扉、抽斗の納まりですが、全て全被せ、アウトセットです。

私はこうした全被せというのは、普段ほとんどしません。
インセットか、半被せです。

この違いですが、制作サイドから視たとき、全被せの場合は、扉、抽斗ともに、寸法通りに作れば、そのまま駆体に取り付けることが可能なのに対し、インセットの場合は、仕込み作業というのが伴います。

インゼットの場合、制作段階では、かなりタイトな制作で進め、仕込み段階で高精度に削り合わせつつ、納めるというプロセスを取ります。
このプロセスは3次元の摺り合わせが求められるため、相応の経験に即した高度な技が求められるということになります。

未熟な職人であれば、この段階で削りすぎたり、歪にしてしまったりしてしまうところですが、全被せであれば、そうした懸念も無く、作業場から持ち出し、修正対応が難しくなる現場でさえ、吊り込み、仕込むことができます。

丁番にはスライド丁番が用いられ、この金具の付属機能により、上下左右の微調整が簡単にできてしまうからです。

ブラックウォールナットの壁面収納家具

抽斗もスライドレールを用いる事で、仔細な調整は不要で、金具の機能で微調整が可能となります。

現在のような練達した職人など希有な存在になりつつある経済社会状況ですと、仕込み作業などは回避すべきものであり、未熟な職員でもそれなりの納まりが可能であることが求められていることから、こうしたアウトセットが全盛の時代になってきているという背景もあるのだろうと思われます。

また、意匠的にも、プレーンでミニマルなデザインが好まれているところからも、こうした納まりは要請に敵っているとも言えるのでしょう。

今回は丁番も、スライドレールもblumのものを活用。
たぶん、現在、もっとも信頼のおける金具メーカーだろうと考えられるところからの選択です。

素材

駆体の基本は板差しとし、無垢材のブラックウォールナット(いわゆる「なんちゃってウォールナットとは異なる、人工乾燥を経ていない、原木から製材管理したもの)を用いています。

この辺りのブラックウォールナット材に関することは過去の記事に詳細な検証がありますのでご参照ください。①[1] 参照②[2] 参照③[3]

この丸太は全て柾で製材しましたのですが、一部追柾もありましたが、500mmほどの幅の帆立も2〜3枚矧ぎで構成させることができました。

扉は前回お話ししたランバーコア材で構成。
色調は帆立に用いた無垢材と全く変わらぬイメージに納めることができましたので、これはつくりてとしても大変ありがたい出来映えでした。

いずれも透明オイルを拭いただけで、何らの色補正など行っていません。

抽斗の前板は無垢材です。本柾で200mm幅を2連のキャビネットを1枚の連続する板で通すのは難儀な木取りでしたが、キレイに納まりました。
側板は会津桐(柾目)です。

スライドレールですが、外部からは隠れてしまう、底付のタイプです。
この底付のスライドレールは、若干抽斗内容量において、深さが削がれることになりますが、そこを除けば、位置調整も可能ですし、何かと合理的と言えます。

以上です。

この手のモノは、紹介に値するようなところもあまりなく、シンプルな記述内容になってしまいましたがご勘弁を。

hr

《関連すると思われる記事》


❖ 脚注
  1. ブラックウォールナットの色褪せ、退色について(なんちゃって Walnut) []
  2. <なんちゃって ブラックウォールナット(追補) []
  3. ブラックウォールナット材の色、人工乾燥について(再論)追記あり []
                   
    

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