工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

「出羽桜」と小川幸彦の出会い

出羽桜
日本酒も新酒が出回る時期になってきた。

週末、多くの地方の銘酒を取り扱っている酒店から「出羽桜 純米吟醸 “雄町”」を買い求める。
昨年は同じ酒蔵から〈出羽桜 燦々 誕生記念(本生)純米吟醸〉などを楽しませていただいたが、今年の冬も暫くはここの銘酒と付き合っていこうと考えている。

まったく事前のリサーチをしたわけではなく、たまたま手に入れた酒だったが、その芳醇な香りと濃厚な味には酔いしれてしまった。
日本酒の豊かさを再認識させられるとともに、己の無知を恥じたものだった。

まだまだ日本にはこうした知らなかった銘酒があるということは、これからの人生にも希望がもているということに繋がるものとして感謝を捧げよう。

今回の“雄町”は、昨年入手できずにいた入手困難な“限定版”もので、予約していたものではなかったが、今回願いが届いたのか手に入れることになった。
うれしいね。
この “雄町”という名称は、酒米からという。山田錦もこの酒米の流れだという。

ボクは日本酒は燗を付けずに冷酒で頂くことを旨としている。
燗を付けた方が良いものも多いのだそうだが、呼吸器疾患もあるのでちょっと苦手だ。冷酒で本来の芳醇な香りを楽しみたいからね。
つまみはたいしたものは作らない。いえ作れない。

今日は豚三枚肉を大根とともに味噌煮にしたもの。
昨日、近くの農家に所用で訪ねたところ、帰り際に隣の畑から大きな大根を2本抜いて持たせてくれたものだ。
簡単だよ。

  1. 三枚肉も大根もやや大きめの賽の目に切る。三枚肉には塩コショウ、酒を振り、軽く下味。
  2. 深鍋にサラダ油を引いてまず三枚肉をへらで転がしながら焼き付けるように炒める。
  3. そこに適量の味噌(好みで赤味噌、白味噌を混ぜ合わせたもの)を取り、肉に絡めながらさらに炒める。
  4. ここに大根を投入し混ぜ合わせるが、少々底の味噌がこげても構いはしない。
  5. やや多めの酒、少量の砂糖と、水をひたひたのレベルに入れる。
  6. 沸騰してきたらアクを取る。
  7. アクを取る、  アクを取る。
  8. 落としぶたをしながら弱火で煮詰める。
  9. 煮汁が1/3ほどになるまで煮詰める。

三枚肉がほどよく柔らかくなれば、味噌の香りと味が三枚肉特有の身と油の層に染みこみ、また大根に旨みが移り美味だ。
肉も他の部位ではこのような柔らかで旨みが乗らない。あくまでも三枚肉ならではのおそうざい。
味噌という発酵食品を使いこなしてきた先人に感謝しよう。

最後に焼いたネギを鍋の味噌と合わせるとなお風味が立ち美味。

輪花向付、灰釉ぐい呑み、いずれも小川幸彦 作。

手が切れそうなエッジの効いたシャープな器だ。手に取るととっても軽いものだが決して華奢ではなく、軽やかな中にロクロ成型の造形美と、灰釉の垂らし掛けが存在感を与えている。

谷川徹三を驚嘆させたというそのロクロの手業はあざとさとは無縁の枯れた手技の痕跡が残る。
小川さん、もっと一緒にゆっくりと呑みたかったね。

鬼籍に入って早9年。小川さんを身近に感じさせる器があるだけでよしとせねばならないのかも知れないが、悔しいね。
工芸は例え作者が故人になっても、その人の生きた証を愛でることができるという意味では幸せな生業だ。
でも彼はボクに良く語っていたものだ。

木は燃えたり朽ちたりするが、茶碗は欠けはするが無くなりはしない、オマエ、それは恥を100代晒すこことなんだぞ。

“雄町”、昨年味わった〈出羽桜 燦々〉と較べれば、やや物足りないほどの淡麗な仕上がり。
〈出羽桜 燦々〉はすごすぎた。吟醸の過剰なまでの濃厚さがすごかった。
この “雄町”二度目に口に含むと、やはり出羽桜酒造特有の品のある深い味わいを与えてくれた。期待とは異なる新たな味わいだったが、これもまたうれしいことだ。

■ 出羽桜酒造 サイト
■ 小川幸彦 過去記事

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