工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

みずめ樺・ダイニングテーブル

みずめ
対象の家具が残念ながら椅子があったり、テーブルトップに小物が氾濫したりと、あまり撮影するほどの環境ではなかったが、勘弁して欲しい。
でもみずめ樺特有の赤身と脚部の特徴は判別していただけるだろうから、あえて挙げてみた。
ミズメ樺といえばボクが松本民藝に在籍していた頃からおなじみの樹種だが、どうも最近は入手困難なものだと言われている。
いや困難なのはブツが無いというのではなく、かなり高価な物になってしまっているという言い方が適切だろう。
以前、松本民藝の材料供給関係者から聞いた話で、使われる材種がミズメから、ウダイ樺(=真樺)へ、さらには雑樺へとシフトしつつあると言うことであった。
それだけ供給が安定していない、また価格が高騰している、ということなのだ。
どうもしかしそれだけではなく、最近の職人はミズメを嫌うということなのだそうだ。
確かにミズメは硬質だし、またいわゆる「虎斑」のところへの鉋掛けが容易でない。重いから疲れる。
さんざんな評価だね。
しかし見事に削り上げられたミズメ樺のテクスチャー(質感)のすばらしさは何ものにも代え難い魅力がある。
塗装に頼らずとも、削り上げるだけですばらしい光沢面をもたらすことができる。虎斑に光線が当たればキラリと照り返してくれるだろう。
池田三四郎氏が見出した材種だけにさすがにすばらしいのだ。
高騰している理由は必ずしも確かなところではないが、関西空港の建設時、かなり大量に買い占められた。新宮城建設の際にも同様なことがあった、などとまことしやかに語らられているようなのだが、建築内装にもてはやされていることは確かだろう。(そのほとんどは突き板に加工されてしまうものでしかないのだが)
このミズメは10年ほど前に製材した4mものの1枚から採った。1枚を半分にカットして2枚矧ぎ、1.65mの長さに仕上がった(幅は90cm)
4本製材したのでまだかなり在庫がある。赤身が張ってすばらしいミズメだ。
どなたか注文ください。
脚部はいつもの工房 悠ライン(苦笑)だね。蛙股でエッジを鮮明に出し、シャープにそぎ取った。貫はゆるやかな円弧状でクロスさせた。
天板も妻手方向を円弧状(太鼓)に張らせ、幕板も同様に成型してある。
閑話休題
ところで先に個展への来訪者の振るまいについて苦言のような記事を挙げたのだったが、その当事者と思われる方から謝罪のメールが来た。
その誠実な内容に感銘させられもしたし、同じ生業に従事するものとして、その真摯な対応に心底ありがたく思った。

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  • 個展終了お疲れ様でした。
    もう少し近ければお邪魔したいところでしたが
    私の所からではartisanさんの工房を通過して行くように
    なりますので、次回に期待します。
    ミズメ樺私は使ったことがありませんがある程度の径の材
    でないと白太が多く歩留まりが悪そうですね。
    赤身の美しさは分かります。
    民藝家具が濃い色に着色されている確かな理由は知りませんが剥ぎの枚数が多いことから見ても良材の入手が困難に
    なっているのが判ります。

  • acanthogobiusさま どうも、です。
    ミズメ樺をお使いになるチャンスがあればぜひトライしてください。他の樺とは似て非なる質感を感得できるでしょう。
    白太は使えないわけではありません。白太もしっかりしています。
    民藝家具の塗色の由来についてはここでは語れませんが、かなり複雑な工程で底深い色を出しています(簡単に言えば薬品着色)。
    >矧ぎの枚数が多い
    なるほど、そうした傾向もあるのでしょうね。

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