工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

快適な5月の塗装日和

机塗装
一昨日(土曜日)は雷鳴とともに起こされ、一時豪雨に見舞われたものの、急速に回復し、その後まさに五月晴れの日々が続き、とてもありがたい。
ま、こうした好天についての話は一様に同意してもらえる話題であろうが、当地は田園地域とあって、この週末はどこの田んぼでも田植えに勤しむ姿が見られた。
田に水が張られている光景はとても美しく、東アジア固有の古層の風景としてどこか懐かしい。
木工屋もこの乾燥した大気からは恩恵を受ける。
机の塗装も、これでフィニッシュ ! 。
じめじめした大気と異なり、乾燥したお天気の塗装作業は快適だ。窓、ドアを開け放ち、空気の環流を促すことで良く乾く。何よりも作業者が快適。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

今回はオイルフィニッシュ。Livosを使う。
材種はご覧のようにミズナラ。これは15年ほど前に「全国優良広葉樹協働組合記念市」(正式な名称は失念)で競り落とした、真正の道産のミズナラ。
この当時はありふれた材種であったが、今ではこの品質の楢を求めることは容易ではない。
流通している楢のそのほとんどはシベリア、あるいは中国産であろう。
材種としては属も何も一緒なのだろうけれど、しかし加工を生業とし、木に刃物を入れることでその質感を体得することのできる我々にとってはこの産地の違いからくる品質の差異は、全く似て非なるもの、と言い表したくなるほどのものだ。
目は詰んで均質で、ほのかなピンク色をして、程よく軟調。
私見ではこうした日本の白木にオイルフィニッシュという塗装手法は良好な結果を得られるとは考えにくいところ。
オイルフィニッシュという手法が活きるのは、やはり濡れ色が映える濃色材だ。白木は白木としての本来の美しさがある。
オイルは耐候性が良くない、黄変が激しい。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

でも今回は依頼主からのたっての注文。自然志向の強いお客からのもの。自身でオイルのメンテナンスもしてくれるというので喜んでオイルフィニッシュとした。
ただ、うちでは普段OSMOを用いることが多いのだが、今回は臭いの要素から、Livosという指定でもあったので、地域の塗料屋でオイルなどを手広く扱う「大橋塗料」から求め、施すこととした。
LivosオーナーまだLivosが普及する前の時代、輸入総代理店の池田コーポレーションの池田さんが近くで普及のための講座を開いてくれたことがあり、ここで熱くLivos社創立の志、その品質を語ってもらったのであったが、その弁舌は今も記憶に残っているほどだ。
その後、サンプルを取り寄せたものの、購入には至らなかったが、今回顧客の指定というインセンティヴを与えられ、使ってみる機会を得たというワケだ。(そういえば‥‥かつて大阪で展示会をしたときには池田社長夫人が訪れ、お話しさせていただいたこともあったが、いわゆる一般の企業家というものでは括れない、何ものかを志す意志の強さを感じさせられたものだ)
大橋さんとの付き合いも長いが、今回も丁寧な解説を受けることが出来た(予定外の買い物もしてしまったが、有効に使うことが出来るだろう)。
今後どのような使い分けになっていくかは不明ながらも、オイルフィニッシュの功罪を自覚しつつ、適切な塗装方法を適宜選択していくことに変わりはないだろう。

*写真:Livos社オーナー、ローズマリー・ボーテさん(創立メンバーの一人)

Tags:

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 当方には水楢で出来た椅子が2客あり、10年以上は経っています。オイル仕上げですが、いい具合に色が落ち着いています。樹種にもよるのでしょうけれど、きっといい具合に変化してくれることを望んでおります…。

  • aiさん、水楢の椅子ですか。どのようなデザインのものなのか興味深いですね。
    10年経過でしたら、ぜひあらためて軽くサンディングし、オイルを施してやれば蘇りますよ。

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.