工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

快適的作業季節到来 ! 矧ぎ作業、ちょっとその前に…

鉋がけ
空は快晴、工房の湿度計は50%あたりを指してる。木工屋にはサイコーの季節到来だ〜っ。
写真は現在進行中のブラックウォールナットの座卓の天板部の鉋がけ作業。良質な厚めの板を再製材して真っ二つに割り、2枚矧ぎで構成(いわゆるブックマッチという奴)。
再製材してからしばらく環境に放置し、シーズニング。
これをそれぞれムラを取り、自動一面鉋盤という機械で厚みを決め、数日前に矧いだものだ。
ここで1つ、技法についての情報を。
圧締を加えた矧ぎ作業を終えて、接着力が十分に発揮され、解放まで要する時間は接着剤によって異なるが、数時間から1日位だろうか。
ボクのところでは大鹿の「PIボンド」というものを使用しているが、数時間で圧締を済ませることができるようだ。
しかしそうした短時間で圧締を解放できても、そのまま削り工程に進むのは問題がある。


接着作業においては接着部位にかなりの水分が供給される。これはボンドが有する水分、さらにははみ出したボンドを洗い流すために加える水分などだ。
図この水分によって、接着部位は視覚的には確認できるほどではないがわずかながら膨張する。(図示)
木工に従事している人はもうお解りだろう。この状態のまま削り作業に入れば矧ぎ部分が膨張しているので、この部分は徐々に周囲の乾いた含水率に限りなく近づいていく。そうすると膨張したところは当然痩せてくる。
つまり、矧ぎ部分は落ち込んでくるということになるのだ。
恥ずかしながら、こうしたことは修業時代あまり教えられなかったことで、良く分からずにいた。
ある時テーブルを仕上げ、塗装したところ明らかに矧ぎ部分が落ち込んでいることに気づき、あわてたことがあった(塗装仕上げ過程の時間的経過、および塗装面で平滑性の水準が見えやすくなる)。
間もなくこれは上述のようなことによるものだと気づき、その後注意するようにしてきたのだが、このことは意外と知られていないのではないかと思う。
(ユーザーの手に渡ってしまってからこの症状が現れているかもしれませんぞ)
含水率計を備えていればこうした作業時に確認することも可能になるだろう。
■ 大鹿振興

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