飾り棚と、現代住宅事情
ある美術骨董コレクターの顧客から木工品を観察させていただいたことがある。
写真のものがそれなのだが、所謂「飾り棚」あるいは「書棚」と称されるものだ。
ボクはこうしたものを拝観するすることは嫌いではない。
その顧客からはこれがどのような時代のもので、名のある木工家によるものなのかを鑑定して貰いたいということであった。
残念ながらボクはそれほどの鑑識眼を持ち合わせているのではなかったので、とりあえず写真だけ撮らせて頂き、あらためて然るべき人に尋ねてみようということでその場を凌いだのだった。
しかし明らかに骨董としては上物。材種は桑。造りも柱建ての飾り棚、麻の葉文様の透かし彫りが入った開き扉。天、中、地のバランスの良さ。
どう見てもそこらの木工職人の手になるものではなく、手練の指物師によるものであることだけは明らかだった。
ディテール以前にこの品が訴える品格の力というものが、圧倒してくるのだった。