工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

木取りで決まる(木理を読む)── 番外

2回にわたって「木理を読む」ということで木取りの際に留意した方が良いと考えられることについて記述してきたが、今回は木取りから一歩進んで、その部材に鉋を掛ける、あるいは面取りをする、といった切削加工、仕上げ加工の際に求められる順目、逆目の判断に関わる解説を試みたい。
言うまでもなく順目、逆目についての判断というのは鉋掛け、あるいは面取りカッター(ルーター、トリマーを含む)などでの切削工程において必須の事柄に類する。
したがってこの順目、逆目の判断というものは、木工専門の教育プログラムにおいても初期段階でのカリキュラムに属することだろうし、手始めに鉋の練習をする際にも最初に意識せざるを得ない事だ。
そのような基本のキということであればここであらためて問題にする程のものでもないと思われるが、しかしその認識の実態というものは、かなり曖昧であることが少なくない。
これは自然有機物としての木材の木理の読み方というものが、複雑多岐にわたることでの困難に起因することで、判断を放棄してしまっている、ということがあるのかもしれないし、あるいは自然科学に基づく合理的な判断に類する事であるにもかかわらず、曖昧で、ファジーな概念に類するものとして、正しく指導されていないことによるのかも知れない。
またこれらは経験的に徐々に認識が深まる事でもあるので(ボク自身がそうであったように)、単なる未熟であることによる認識の浅さとみることもできよう。

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クラロウォールナットへ

CLARO
ブラックウォールナットとの付き合いは長い。
17年前CLARO WALNUT(クラロウォールナット)の原木に出逢い、これを製材して以降は、いよいよその魅力に取り憑かれている。
近くまたこのCLARO WALNUTの仕事をすることになったが、これまでにも増して最大にして最高の板になりそう。
その独特の質感は、手鉋を板面に当てるだけで伝わってくる。
過度の堅さはなく中庸な比重だがとても緻密な木理を持つ。
粘り着くようなその肌は、木理の複雑さと、縞状に表れる多様な色調とともに、この加工に携わる誉れある職人を魅了する。
末口、右はじの色調が変化するところに、クラロウォールナット固有の接ぎ木の痕跡を留める。

八月

今日から葉月・8月。
ここ数日天候不順で、突然の豪雨に見舞われたりと不安定だが、その分凌ぎやすい。
しかし甲子園で明日から始まる高校球児たちの熱戦が繰りひろげられるこの時季が最も暑い。
さらに今年の8月はこれに北京五輪開催が重なる。ヒートアップも極限的だ。
北京五輪は世界のアスリートたちの競演とあって見逃せない競技も多いので楽しみである一方、チベット問題をはじめ中国国内における少数民族、人権などの無視できない問題が五輪開催でより矛盾を激化しかねない状況にあり、こちらも注視していかねばならないし、日本チームの編成においても女子柔道などの国内選考会における疑惑など、アマチュアリズム、五輪精神とはかけ離れた実態を見せつけられ、開催前にして早くも白けてしまっているというのも困ったものだと思っている。
なお、8月は鎮魂の月でもある。1945年8月の十五年戦争の敗戦(“終戦”などと呼び習わし、実態をはぐらかすのは如何なものか)から63年目の夏だ。
63年という決して短くない時間の経過からすれば、単なるメモリアルとしてのものであっても良いのだろうが、残念ながら今もなおホットな問題として事あるごとに浮上することも確か。
これは同じ敗戦国であるドイツを巡る周辺国の関係などと比較した場合、突出して特異な状況を呈しているようだ。
そうであれば、やはり戦後を生きてきたボクたちもこれに真摯に立ち向かうことで、問題を背負っていかねばと思う。
より良き未来社会を語るためにも過去に学び、人々の思いを引き継いでいくことからはじめたい。
ちょっとNHKサイトから拾った夏の特集番組を残しておこう。
特集ドラマ「帽子」
  8月2日(土)総合 午後9:00〜10:30
 脚本:池端俊策(広島県呉市出身のフリーの脚本家。今村昌平の脚本助手からスタートして、多くの話題のドラマ、映画の脚本を書く)
■ BS世界のドキュメンタリー
○8月4日(月) 少年の内面(カナダ:「アスペルガー症候群」の少年とその家族の苦悩と葛藤)
○8月5日(火) ネット時代の危うい10代(アメリカ)
○8月6日(水) 人は僕を天才という(英国)
■ NHKスペシャル
見過ごされた放射線〜原爆症63年目の真実〜
8月6日(水)総合 午後8:00〜8:50
■NHKスペシャル
封印されたNAGASAKI
〜原爆を伝え続けるアメリカ人親子〜

 あの「焼き場に立つ少年」を撮ったアメリカ人カメラマンのジョー・オダネルを追う
 8月7日(木)総合 午後8:00〜8:50
■ NHKスペシャル
 証言記録 レイテ決戦 “勝者なき”戦場
 8月15日(金)総合 午後10:30〜11:30

木取りで決まる(木理を読む)── その2

帯ノコ切削
旋盤、ルーターなどで切削加工をしている時、切り取られつつあるその切削面の木理が大きく変わっていくのを感動的に見てしまうことは多くの木工職人が経験するところだ。
木に内在する木理と表情というものはその切削のあり方で様々に表れ、ボクたちを楽しませてくれ、単一ではない木の唯一無二の固有の力というものを感じさせてくれる。
さてところで円弧状の部材を木取るということは比較的頻繁に行われる。
その最たる事例は椅子の笠木、帯といった部材だろう。
例えば上下の画像は椅子の部材・帯である。
(1,200rの円弧状:Topは帯ノコ切削、Belowはルーター仕上げ切削、いずれも手前が辺材)
これを木取るときにどのような板から、どのような方向で刃を入れるのかは当然にも考慮の対象になる。
この円弧状の部材を木取るに当たって、辺材方向から心材へ向けてRにするのか、あるいはその逆にするのか、
結果、どうなるかと言えば、板面に現れる木理、木目は全く逆になる。

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木取りで決まる(木理を読む)── その1

家具制作加工の最初の工程、製材され乾燥された一定の厚みの板を目的とする部材の寸法に挽き割ることをボクは「木取り」と呼称している。
地域によっては、あるいは業種によってはその呼び方も一様ではないようだ。
「板取り」とか「木つくり」とか、様々に呼び習わされているようだ。
ここではこれまで同様「木取り」として話しを進める。
さて、まず1つの事例を挙げてみよう。
昨日取り上げたソファの背のクッションは背部の木部の枠が支えてくれている。
このページにある2Pのものの場合、外枠の上下は柾目、縦は板目の木取りとなっている。
この部位における木取りの考え方としては、必ずしも定まった考え方があるとは言えないかもしれない。
構造的な要請、美的な基準などから個別具体的に決めれば良い。
ボクの趣味では外枠全てを柾目でいきたいところだが、種々の状況から縦框は板目にした。
さて、今日問題にしたいのは、枠の内側の格子部分の木取りの方だ。

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ソファと卓

ソファ&センターテーブル
先に「顧客から教えられること」として取り上げた家具について少し書いておこう。
既にWebサイト「木工家具の工房 悠」のGalleryに納めてある「ソファ 悠 3P」とほぼ同じデザインのもの。
背部クッションの高さを置かれる部屋の腰板の高さ(窓枠下)に合わせ、やや低くしたものとなった。
こうした設計変更というのも、ボクたちの受注制作システムならではの自由さだ。
カスタマーの住宅は在来軸組工法で建てられ、外壁も含め天然木がふんだんに使われた豪壮なもの。
納品翌日、立ち会えなかったご主人から「何か、以前からそこにあったかのような親しみの強いソファですね。想像以上に作りもデザインも気に入りましたよ、ありがとう‥‥」と、過分なお褒めの電話が入る。
実はこの「以前からそこにあったかのような」という形容は、納品時にボクたちも含め、立ち会ってくれた夫人、ギャラリー オーナー共通の思いでもあった。
これは無論、事前に納まる部屋を確認させていただき、デザイン、寸法などを調整させたことも部屋へのフィッティングに寄与していることは確かだが、やはりそれ以上に、堅実な住宅設計、本格的な工法での住まい作りと、ボクの家具つくりへの志向と制作における品質がうまく響き合い、奏でることができたと言い換えることもできるだろう。
これが5年、10年、30年と経過し、それぞれどのような変容を示すのかも興味深い。

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少年の夏

猛暑日が続き、うだるような暑さも午後には大気の状態が不安定となり突然の雷鳴と驟雨によって断たれた。
各地から突風被害なども報告されているが、ボクは工房の窓から見える雷光を見上げながら、少年時代の夏休みの同じような気象条件をふと思い出していた。
小学生低学年の頃、山あいの小さな部落に住んでいたのだが、夏休みだったのだろう、家族、友達などと一緒に付近の川に泳ぎに行った帰路、突然の叢雨に打たれ、ドブネズミのような姿で皆でわぁ〜っと騒ぎながら駆けっこして帰ったシーン。
もう50年以上も昔のこと。何故こんなことを思い出すのか分からないが、長い長い夏休みをたっぷりと遊ぶことのできたあの頃への郷愁がそうさせるのだろうか。

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iPhoneがやってきて2週間

2週間経たとはいえ、実質電源を入れた状態は30時間ほどか。
iPhoneのデータ通信上のの契約条件は使い放題なのでもっと使ってやりたい。
のであるが、生活のスタイルからその必要性は無く、外出する時だけで十分。
そんなわけで以下に記す使用感は短時日に感じた極私的なものでしかないことをあらかじめお断りしておく。
まず冒頭に言っておいた方がよいと思うのは、手に入れてしまったけれど間違いだった、ということは全くなく、正しい選択であったということ。
確かにキャリア・SoftBankからの請求はこれからであり負担感に囚われるのは先のこと、少々割り引いての感想として受け止めた方が良いかも知れない。
さて、どうして正しい選択であったかということであるが、実はこれまでのケータイ、auのインフォバー(深澤直人氏のデザインによる)は、決して積極的に使おうというものではなく、外出時の緊急連絡用のようなものでしかなかったことに比し、この iPhoneは、持っていればいつも何かしら操作していたくなるような魔力を秘めていることに気付いたと言えば理解していただけるだろうか。
いくつか列記してみよう。

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顧客から教えられること

ソファ&センターテーブル
家具つくりの仕事というものは制作依頼があってから、制作し終わり、納品するまでの一連の工程を指すものと考えられるし、確かに消費財として位置づけられるものであればそのような捉え方も決して間違いではないかも知れない。
今日は以前より新居の調度品を作らせていただいているI邸への第2期の納品。
リビングのソファ、およびセンターテーブル、そして日本間の座卓など。
I邸主婦からは過分な評価を受け大層喜んでいただけたが、制作者への信頼を元に様々な調度品をこのように使っていただくと言うことは、当然にも制作者の責任というものがそこに発生する。
家具調度品というものは耐久消費財としてカテゴライズされるものだが、いわばこれが置かれた住宅とともに、ご家族の皆の住まう生活の中に入り込み、何某かの波紋をもたらし、あるいは異化し、生き方におけるクォリティーにも関わる影響を与えるものとなることもあるだろう。
そうであればやはりこのカスタマー(顧客)と制作者の関係というものもそこで使われ続ける家具の生命とともに継続するということにもなるだろう。
これが単一の家具に留まらず、主たる部分を専有することにもなればなおさらのこと。
搬入設置し、梱包材などの片付けを終え、自家栽培のスイカとトマトジュースでもてなしを受けながら、流した汗を納めつつの歓談の中での家具への慈しみを語るI邸主婦の言葉を受けている時、ふと上のような思いが脳裏をよぎり、身体を硬くしてしまうのだった。
ソファ

楢座卓

楢座卓
先にDomino活用・ホゾ埋め込みでの送り寄せ蟻の記事を上げたが、その座卓も仕上がり、本日発送した。
あまり時間的余裕もないために撮影も工房内での簡易なものとなってしまった。
雑然とした工房内、作業台上での撮影。
この座卓のデザインはボクが古くからやっているものだが、自身ではいまだにやっているところからすれば気に入ってるからか。
今回は3種のデザインスケッチをした中で、顧客が選んだのがこれだった。
古くから、ということで例証をあげれば、
例えばこちらの「拭漆楢食卓」
あるいは「楢拭漆小卓」
端正で外連味のないものだし、やぼったくなく、美しいと思っている(こういうのを自画自賛と言うのだろうか)
やや難易度の高い技法も取り入れてはいるが、シンプルで平明なところが良いと思うが如何だろうか。
明日は西へと走り、これとは別のいくつかの家具を納品。
それが終われば、また大きな仕事へと取りかかる。
真夏の工房作業は肉体的にはハードなものとなるが、何故かボクはあまり夏やせすることもなく、活力充実して送ることが出来るのでありがたい。
今日もTシャツを4度着替えるほどのものだったが、熱いお茶に、スイカ、そして食卓には冷えたビールと良質なタンパク質を摂取し、秋に備えようと思う。