工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

木取りで決まる(木理を読む)── その2

帯ノコ切削
旋盤、ルーターなどで切削加工をしている時、切り取られつつあるその切削面の木理が大きく変わっていくのを感動的に見てしまうことは多くの木工職人が経験するところだ。
木に内在する木理と表情というものはその切削のあり方で様々に表れ、ボクたちを楽しませてくれ、単一ではない木の唯一無二の固有の力というものを感じさせてくれる。
さてところで円弧状の部材を木取るということは比較的頻繁に行われる。
その最たる事例は椅子の笠木、帯といった部材だろう。
例えば上下の画像は椅子の部材・帯である。
(1,200rの円弧状:Topは帯ノコ切削、Belowはルーター仕上げ切削、いずれも手前が辺材)
これを木取るときにどのような板から、どのような方向で刃を入れるのかは当然にも考慮の対象になる。
この円弧状の部材を木取るに当たって、辺材方向から心材へ向けてRにするのか、あるいはその逆にするのか、
結果、どうなるかと言えば、板面に現れる木理、木目は全く逆になる。


これを目的的に意識してその方向を決めるのか、そうでないのかは結果として当然にも大きな差異となって表れる。
古来より日本ではこの木目の配置には固有の解釈があるようだ。
一般に“昇り杢”と言われるようにタケノコが山形になるような配置を良しとする。
その逆は嫌われる。
無論これは一般的な解釈であり、デザイン、構成によっては意識的にこれに準じない場合もあるかもしれない。
結論的に言ってしまえば、辺材方向から心材へ向けて円弧に切っていくと、このような木理になる。
確かにこの逆にすると、とても落ち着かない木理が出てしまう。
既に前回の記述で有機自然素材としての木が内在する木理を読み込むことの重要性を語ってきたところなので、あらためて基本的な考え方を繰り返す必要もないが、木工家たるもの、木に鋸を入れる前に、その切削の結果、どのような木理が表れるのかをどこまで予測できるのかということも、常に意識下においておくのは無駄ではないだろう。
無論、内在する木理には想像を超えるものがあり得るのは当然で、それだけにまた魅力があると言わねばならないのだが、しかし、自然科学という検知から遇すれば、かなりの範囲において読み込むことは可能だと言うことを知っておきたい。
ルーター切削

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 写真は2次元の世界なので理解するのにちょっと時間がかかりました。
    上の写真を初めて見た時に板が上下方向に円弧を描いて
    いるように見えてしまいました。
    写真と文章をにらめっこしながら実は上下ではなくて
    前後方向に円弧になっていることが理解できました。
    今度実際に試してみます。

  • acanthogobiusさん、画像と解説が不十分で分かりにくく、ご迷惑掛けてしまっているかもしれませんね。
    図示するのが良いのですが、ちょっと準備不足。
    実際、刃を入れてみればたちどころに分かることですね。
    (しかしながら、こうしたことは意外と無意識にされている人も多いものです←誰も教えてくれない、テキストにも書かれていない、から?)
    また次回に関連記事を上げる予定です。

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.