工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

マランツ M-CR612

iPhone M-CR612 〈HEOS〉

今年はベートーベン生誕(1770年12月16日頃)から250年の記念すべき年で、ベルリンやウィーンなどで様々な催しが企画されているようだが、ドイツなどでは連日1万人を越えるCovid-19新規感染確認者が出ており、9日にはメルケル首相からより厳しい対策を求めるメッセージが発せられ、これがいつになく感情的なものだったことから話題を提供していた。(YouTube)
こんな状況下にあれば、これらの企画も予定通りとはいかないのではないだろうか。

私はクラシックも嫌いじゃ無く、小林秀雄の『モオツァルト』に影響を受けなかったわけではないが、初期ロマン派ではベートーベンのシンフォニー7番とか、ピアノソナタ•熱情、悲愴などを好んで聴く。
マルタ・アルゲリッチのピアノコンチェルトなどは最高だ(ダニエル・バレンボイム指揮による演奏 YouTube

自前のオーディオ装置を整えた10代の頃ははもっぱらドイツグラモフォンとか、その傘下のシルバーに輝くレーベル・アルヒーフ(バロック音楽専門)のLPレコードを買い求めることが多かった。
死して200年後もなお人々の琴線を揺さぶる音楽の普遍性というものを考えた時、人類が遺してきた音楽遺産の豊かさというものに思い致すこととなる。

さて今日はそんな音楽談議ではなく、再生装置について書く。


最近、オーディオ装置を更新した。
15年ぶりくらいだろうか。
それまではONKYOのチープなデジタルアンプにUSB接続でMacに格納させた音源などを流し込み、これをJBLのスタジオモニターで鳴らすという、簡便なシステムではあったが、それなりの環境で楽しんでいた。

しかし、どうも音質は満足できるものでもなく、またこのデジタルアンプはCDの読み込みもできないシンプルすぎるアンプで、わざわざMacのドライバーに読ませねば再生することが叶わない面倒なものだった。

そこで新たにCDが読み込め、かつ優れたデジタルアンプ機能を搭載したものを探した結果、今のネット環境への積極的な対応を含め、それなりに望みを叶える再生機を導入することができた。

この“それなりに゛との限定的な物言いだが、整備する金銭的な余裕と時間の制約の中で、というもので、結果的には、自前のオーディオをはじめて整備した18の頃に受けた感銘には、残念ながらほど遠いという問題は残されたままだ。

そんな状況だが、オーディオに多少でも関心のある方には、現在のオーディオ機器の志向性を掴む上でも少しは参照になろうかと思うので、その辺りも含め詳しく見ていきたい。


M-CR612

マランツ M-CR612の特徴

この機種はご覧のように、いわゆるミニコンポだが、その中でも《ネットワークCDレシーバー》とジャンル分けされるもので、LANネットーワークに入れられる機種だ。

つまりインターネット上の様々な音楽ストリーミングソースにアクセス可能なほか、当然にも同一のLANにぶら下がっているHDDMac 内の音楽ソースにアクセスできる。
さらにまた やや音質が落ちるがBluetoothでの入力接続も可能。
もちろん FM/AMラジオも搭載している。

このように現在の多彩な音楽ストリーミングサービスのほとんど全てにアクセス可能で、また〈AirPlay〉(詳細は後述)機能搭載で、iPhone などによる操作も容易といったように、利便性が高く、至れり尽くせりで機能満載の機種となっている。

またミニコンポとはいえ、ハイレゾ再生も可能となっているこのデジタルアンプは左右それぞれ2ch、合わせて4chの出力端子を備え、ツイッターとウーファーをそれぞれ個別に駆動させる〈バイワイヤリング接続〉が可能だ。

序でに言えばコスパも悪く無かった。驚く無かれ、これだけの品質と機能を有しながら、5万円台の前半というのが市場実勢価格。

以下、それぞれの特徴を個別に確認していこう。

デジタルアンプと音質

最大出力60W+60W と、かなりのパワーを有するが、ローノイズPWMプロセッサー搭載と言うことで、大音量で鳴らしてもノイズを感じることはなく、デジタルオーディオ特有のクリアな音を吐き出してくれている。

老舗のオーディオ専門メーカーらしく、パワーアンプ回路全域で良質な素材が使われているからなのだろうし、またトランスを含む電源回路には独立したパワーアンプ専用のもので構成されていて、S/N比が高いのもそうしたところからの恩恵もあるようだ


M-CR612 アンプ部仕様 
定格出力(最大出力)50w+50w(60w+60w)
適合インピーダンス4〜16Ω
s/N比(10w,6Ω、IHF-A)90 dB
周波数特性10Hz〜40KHz(±3dB)

4chスピーカー出力(実際には8ch)

M-CR612 〈HEOS〉 背部
M-CR612背面

このM-CR612 はいわゆるミニコンポに属するものだが、出力の仕様がかなり特異な構成になっている。

高級スピーカーの一部に搭載されている、バイワイヤ接続が可能なバイアンプの構成がそれだ。
一般にスピーカーシステムは周波数帯域を分離し、これを複数のスピーカーで鳴らすることが多い。
アンプから1chの出力で入力されたスピーカー内では、複数の仕様の異なるスピーカー(ウーハー、ツィーターなど)にアッテネーター、ネットワークなどを介し、高域、低域等の周波数帯に分けられ、それぞれのスピーカーを駆動させるという構成。

これをアンプ回路の段階から2chに分け(バイアンプドライブ)、スピーカーシステム(バイワイヤ接続)に送り込むことで、シングル接続の際に生じると言われるウーハーからの逆起電力を排し、ハイファイの音をピュアに獲得するというものだ。

M-CR612のスピーカー端子
スピーカー接続の多様性

さらにこのM-CR612 は2ch(R)+2ch(L)の前に、BTLドライブを備えている。
私は、これまで〈BTL〉という語彙すら知らなかった(恥; 詳細解説
これは入力信号を2系統に切り分け、片方に位相差を付け、それぞれのアンプで増幅させるもので、理論値2倍の出力を得られることになるのだそうだ。(カーオーディオなど、電源回路が非力な場合などに用いられるテックのようだ)

また、私のようにバイワイヤ対応のスピーカーを持たない場合、この左右4chの出力を全て用いて2台のスピーカーを駆動させる、パラレルBTLドライブが可能になっている(上のイメージ図 参照)。
シングル接続と、パラレルBTLを切り換え聴き較べてみたところ、確かに低音域の閉まり、音響空間の拡がりを感じさせてくれた。

オーディオ装置で音楽を聴く場合、吐き出されるその音質はいくつもの要素に規定されるわけだが、今回のデジタルアンプではD/Aコンバーターの品質が大きく関わってくるものと考えられるが、本機ではこのD/Aコンバーターの品質は不明なるも、以前使っていたONKYOのものより、音質はかなり向上しているところから、それなりの品質のD/Aコンバーターを搭載していると考えて良いだろう。
ただ、専門家に言わせれば、高級オーディオの次元にはまだ遠いというのが実態なのだろうけれどね。

ネットワーク機能と〈AirPlay〉

M-CR612の入力ソースの多様性/ネットワーク
M-CR612の入力ソースの多様性/ネットワーク
M-CR612 〈HEOS〉
HEOSアプリ・入力ソース選択

前述の通り、LANのネットワークに入れられる《ネットワークCDレシーバー》であるが、有線LANでMacやインターネット環境に入れられる他、Wi-Fiも搭載しているところから、iPhone、iPadの音源を鳴らすことも可能だ。

Bluetoothで飛ばすのも可能だが、LAN(+無線Wi-Fi)の方がはるかに音質劣化は少なく、良質の音源がそのままアンプに入れられる。

私はiPhoneに古くからおいてあったAccuRadioからインターネットラジオの好みのチャンネルに合わせ、このMarantzを駆動させてることが多いが、最近ではAmazon Prime会員でもあるので、iPhoneに専用アプリを導入すれば、Amazon music Primeも無償で聴き放題だ。

他の多くのインターネットラジオも選択可能だ。

こうしたネットワーク音源にアクセスする操作もとても容易なものとなっている。
これはWi-Fiを用いた〈AirPlay〉という機能による。
AirPlay〉とはApple社が開発提供するシステムで、Apple社の様々なコンピューター、あるいはタブレットなどを駆動させるMacOS、およびiOSに標準的に搭載されていることから、この機能を享受できる人は少なくないのでは…。

こうしたIT環境が整備される中、近年、この〈AirPlay〉の至便さが注目され、多くののオーディオメーカーもこれを取り入れ、対応させつつあるようだ。

Macを所有せずとも、国内ではiPhoneの普及率は高いところから、消費者側の関心から需要に弾みが付くと考えるオーディオメーカーの経営判断は至極当然だろう。

HEOS アプリ

HEOSアイコン

HEOS〉(Home entertainment operating system)とは、デノン、マランツ独自のネットワークオーディオ規格を指す。

ネットワークオーディオであれば、当然にもiOSとの親和性は高く、マランツはそこに注力することでiOSのアプリ〈HEOS〉を開発し提供している。

Mac iTunesで AirPlayを指示しているところ
iPhoneアプリ〈HEOS〉

今では一般的になっているiOSや Androidのスマホ、タブレットでオーディを鳴らすシステムだが、これらの多くはスマホ、タブレットからBluetoothで音源を飛ばすというものだが、この〈HEOS〉はそれらとは全く異なり、オーディオ機器にLAN、Wi-Fiで繫がっている音楽ストリーミングを呼び出し、これを手軽に再生操作するというものである。
もちろん機器本体で再生させるCDプレーヤーも同様に操作できる。

したがってBluetooth接続とは異なり、音質劣化も無く、音源に忠実な再生を行う。
つまり〈HEOS〉とは、簡単に言えば、iPhoneなどがこのM-CR612本体をコントロールするためのアートワーク付きのリモコンになるということだ。

本記事のTop画像はiPhoneでのこの HEOS のスクリーンショット。

また、 Amazon Alexaに対応しているとのことだが、ユーザー個人宅の音声などがダダ漏れになるリスクが高いといわれるホームスピーカーなど忌避すべきとする拙宅には無縁な代物で試すことはできない 苦笑。(詳細、メーカーサイト

上の画像はMac iTunesで楽曲を選択し、この出力先に〈Marantz M-CR612〉を指定しているところで(MacにLANにぶら下がってる〈M-CR612〉を認識していることで現れる)、右はこれを受け、iPhoneアプリ〈HEOS〉で操作パネルを開いているところ

ハイレゾ再生

私はこのマシンの導入以前はハイレゾの試聴環境も無かったため、さほど関心を持ってCDを超える情報量を持つと言われるこのハイレゾなるものの再生を試みようとはしなかった。

1度はどんな良質な音楽データなのか調べたことはあったが、しょせんはデジタルデータに変わりはなく、レコード再生の品質に伍するものとは思えず、あえて積極的にこのハイレゾ再生環境を整えようとはしてこなかったのだ。

しかし、このM-CR612が導入された今、テストしない手は無い。

というわけで、数日前(12月11日)に配信が始まったばかりのヨーヨー・マの新しいアルバム『ソングス・オブ・コンフォート・アンド・ホープ』を購入し、再生してみた(本記事Top画像)。
ピアノKathryn Stottとの演奏の一部が公式サイトからYouTubeにも上がっている(こちら

コロナ禍に怯え、不安に苛まれる世界に向け日々過酷な医療現場に立つ医療従事者や、報われることの少ないエッセンシャルワーカーへ向けたアルバムといった位置づけのアルバムになっている。(SONY music

私は e-onkyo という専用サイトからDL購入したのだが、この音源は flac というハイレゾの1つのフォーマット(Free Lossless Audio Codecの略で)で、これをUSBメモリーにコピーし、M-CR612のUSBポートに差し込み、これを選択してやれば再生が始まる。

Macの音楽管理ソフトはご存じの通りiTunesだが、残念ながらハイレゾのファイルはサポートしていない。
Macで再生させるには、専用のソフトを有償で購入し、これで再生可能なようだが、現在はその環境には無い。
やむなく、MacにDLしたものをUSBメモリーにコピーし、これを再生させるという煩雑な手続きを経ねばならない。

さてそこで音質の検証だが、私の老いぼれた耳での主観的な判断は客観性に乏しいとはいえ、聞き比べれば分かるはず。

このflacのファイルと、M-CR612とLANで繫がった MacにDLされている同じコンテンツのファイルを、M-CR612で再生させれば、違いが分かる。
つまりMacでflacを再生できても〈AirPlay〉でのLAN接続では、自動的に音質はiTunes再生品質と同等までに圧縮されてしまうからだ。

その結果、私の耳でもハイレゾでは音の拡がり、艶やかな音の伸びを確認することができる。

Yo-Yo MaのC線から吐き出される図太く伸びやかな低音域と輝かしいビブラートを響かすA線のチェロ、打鍵の音さえも聞こえそうなダイナミックレンジの広い艶やかな名演のKathryn Scottのピアノ。
時折 挿入される潮騒の響き。
演奏も録音も高次元のものと感じさせられるが、そうであればなおのこと、ハイレゾ収録も生きてこようというもの。

ただ聞きくらべてやっと分かる程度の差異でしか無いのも事実で、1つだけ聴かされ、それが一般的なCD音源なのか、ハイレゾなのかの判別を付けられるほどの自信は無いというのが実感で、このあたりはビミョウではある。

FM エアチェックについて

FM放送からの音楽聴取は昔から一般的な方法だ。
今ではラジオもノイズレス、高音質の〈NHKらじるらじる〉や〈radiko〉といったインターネットでの聴取も普及しつつつつあるものの、放送電波の取得環境さえよければ、こうしたデジタル音源より、アナログなFM放送の方が音楽的な音質では良いとされている。

FM 4素子八木アンテナ

我が家は送信アンテナからは見通しは効くものの、25Kmほどの弱電界の距離なので、これを機に然るべく4素子の八木アンテナを放送アンテナ方位側の外壁に設置した。


壁に同軸ケーブル貫通のために開孔する事は忍びないので、アルミサッシの窓脇用に開発されている同軸ならざるフィルム状のスルーケーブルを介し、スマートに張ることができた。

確かにノイズレスのデジタルとくらべれば、アナログのFM放送は S/N比は落ちるとは言うものの、音の伸びとかダイナミックレンジは高い。
侮るなかれ、デジタル時代のFMアナログ放送。


スピーカーシステム

音質向上において最も効果的なのが電気信号を空気振動に変換させるスピーカーであることは間違い無いところだろう。
いかにハイレゾ音源を入手しても、再生システムがその品質に相応できてないのでは意味がない。
いやむしろ、そんなビットレート云々よりも、再生装置、その中でもスピーカーの品質を問題にした方がよほど現実的、効果的である。

そんなところからこのスピーカーについても、今回更新しようと考えていた。
M-CR612の120w出力はバイワイヤリング接続対応の4chなので、この出力機能を活かし、駆動可能なものにしようと企んだ。

選択候補にリストしたのは、DALIというデンマークのスピーカー専門メーカーの、〈OPTICON〉シリーズのバイワイヤリングに対応するものを狙っていた。

このバイワイヤリングが実際、どの程度音質向上に寄与するのかは分からない。
しかし何らかの効果が出るだろう事は疑っておらず、そこを信じ導入を考えていた。

ところが、まずはMarantz M-CR612をセットアップし、また今回新たにスピーカー専用のケーブルに張り直し、鳴らしてみた。(うちの再生環境は家具のショールームにあり、再生機器と、スピーカーは8mほどの距離があり、これを繫げるケーブルは、階下の天井の梁に沿わせるという、少し厄介な作業を伴ったが)
その結果、それまでと較べれば、音の1つ1つがきらびやかに鳴り、かなりの満足を得たというのがホンネだった。

私にとっては安くない買い物でもあるため、今回はDALIの導入には踏み切らず、現在は15年ほど前に購入したJBLの名機、〈4312 MkⅡ Control Monitor〉で鳴らしている。

スピーカーもこれほど長期に使用していれば、経年劣化等でウーハーのコーンが破損したり、本来のダンピングがだせなくなるものだが、今のところそうした懸念も無く、JBL本来の良質な音を再生してくれている。

言い訳がましい物言いだが、Marantz M-CR612導入は、この旧くなってしまった〈4312 MkⅡ〉を活性化させることに結果していることで納得することにしたというわけである。


ところで、我が家の再生音が良い理由の1つには部屋の空間の広さも関係しているように思える。
以前、タンノイなどで本格的にオーディオを楽しんでいらっしゃる顧客が来訪し、この程度のJBLでこれほどに音が良いのかと驚いていた。
他でも無く、再生する音は部屋の広さに大きく影響されるからなのだろう。
部屋の壁などに当たる残響音の影響が少なく、また当然ながら音の拡がりも録音環境に多少は近づけるだろうから、素人でもこの理由は理解できる。

日本の一般的な家屋ではリビングルームもせいぜい12畳とか18畳あたりで満足するしかないのではと思われるが(以前の私の家がそれだった)。今の住まい(家具のショールーム)は9.5m×9mの86㎡、約52畳。ただ天井はさほど高くなく、2,520mm。せめて3mは欲しいが仕方がない。

なお、Marantz 導入1週間後、今度はメインと同じメーカーJBLのサブウーハー、〈STAGE SUB A100P〉を導入した。
〈4312 MkⅡ〉でも30cmのウーハーを備えているところから低音域でも良い音をを吐き出してくれるので、私には十分なのだが、夜間など音量を絞った際、やはり低音に物足りなさを感じ、ここを補うためのものとしてサブウーハーは有効だろうと考えた。
(なお、この〈4312 MkⅡ Control Monitor〉は製造中止のモデルで、検索でヒットするほとんどは〈4312M II〉の方。同じ4312とはいっても、MkⅡが30cmウーハーなのに対し、M II はわずかに13.3cmのもの。画像では瓜二つだが、似て非なる全く異なる製品 😅)

私は決していわゆるドンシャリの音質が好きでは無い。ただJazzなどで、ベースやドラムスの響きはきちんと聴き取りたいという思いは強く、これらを叶えるにはサブウーハーは有効だろうと考えたわけだ。

〈STAGE A100P/A120P〉は、25cmのウーハーに、余裕の300wのパワーを吐き出すアンプを搭載。

また、このサブウーハーの電源ON OFFは信号の有無でコントロールされ、つまりはアンプ電源のON OFFに規定されるため、デスク下に設置したアンプとスピーカーの距離は8mほどあるので、このオート機能は大変ありがたい。

4312 MkⅡ Control Monitor
4312 MkⅡ Control Monitor


デジタル再生機器の限界

私のオーディオ体験は10代前半からが始まっている。中学2年生の頃、米国からのポップ音楽が日本でも広く一般に紹介されつつあった頃だ。
またはんだコテ片手に真空管のラジオを作るラジオ少年でもあった。

さて当時はオーディオとは言っても恥ずかしながらまともなものはなく、羽振りのよい友人宅で聞かせてもらうことはできたものの、自宅では我が家にやってきて間もないTVにレコードプレーヤーを繋ぎ、聴くというなんとも情けの無い環境だった。
そうそう、あのペラペラなソノシートとか言う奴を回していた。


時代は東京五輪を前後する激変する数年前の頃なので、それもフツーの事ではあったのだろう。

その後、高校時代になり、静岡市内にあったナショナルの音響視聴室に連日入り浸りするようになる。
ここには90cmほどものウーハーを備えた、ビックリするようなオーディオ環境が備えられていて、クラシックからアメリカンポップスまで聴かせてくれたものだった。

その後、18になり自前のオーディオを整えることになっていく。
ナショナル、東芝、コロンビアといったメーカーが続々と家庭用のオーディオ装置を開発、販売しはじめていく時期の頃だ。

最初は秋葉原からサンスイという今は無い日本メーカーがJBLのスピーカーを搭載したものを中心に、アンプ、チューナー、レコードプレーヤーなど一通り揃え、Jazzやバロックを聴きいる日々で、たいへん満足し、青春の1ページを彩ったものだった。

その後は公私ともに忙しくなる中で、この趣味を極めるところからは15年ほどの長期に渡り、退いていたのだったが、仕事一筋で過ごす中、少しは精神的余裕も必要だろうと思い立ち、15年ほど前にJBLの〈4312 MkⅡ〉導入に踏みきり、少しまともな環境を整備したいと重い腰を上げたのがオーディオ趣味の再燃だった。


日々の忙しい業務の中にあって、インターネット上から様々なストリーミング音楽が取得できる環境が訪れ、その利便性を謳歌することになっていくのだが、オーディオ初体験の時のレコード再生から受けた感銘はオーディオ趣味の再燃した環境下では得られていない悔しさがあった。

そしてこの度、M-CR612 を導入しハイレゾなるものをも試し、少しは真っ当な音質に近づきつつあることを感じつも、この課題を解決するには至らないということを再認識されらてしまったことも事実なのだ。

ただ、私の聴力の問題も考慮しなければ、公平な評価とは言えないことも確かなのだろう。
18の頃の耳と脳と、現在のそれとでは間違い無く違うだろうからね。
こればかりは修正も克服も困難。マシンの性にしてはいけない(私は決して若い頃に戻りたいなどとは普段は考えないが、こうした身体的な衰えは受け容れざるを得ないことも確かなことだ)。

そこを踏まえつつも、CDやインターネット音源といったデジタル音源と、アナログレコードの音の違いが絶対的に大きいだろうことは疑いないわけで、少しでも若いあの頃の感動に近づけたいのが偽らざるホンネだ。

M-CR612の市況

私がこの機種を購入したのは本年初頭の頃だが、今ではこの種、システムコンポの中では人気No.1で入手困難となっているようで驚いている。(価格com

コロナ禍によるステイホームの影響もあるのだろう。
私は GoToトラブルなど活用しようなどとは夢々考えないので、こうしたオーディオへの投資に振り向けるのは、コロナ禍時代、ステイホームの過ごし方において悪く無い選択だろうと思っている。

しょせんミニコンポのグレードで、ネット環境へのアクセスが容易で、操作もiPhoneで、という、本格的なオーディオマニアからすれば邪道な選択だったかもしれない。
しかしこのコンビニエンス的な考えもIT時代に彩られた現代的な選択であり、その恩恵に預かるのも悪くは無い。

さらに不満が生じれば、大枚はたいてレコード再生装置の導入とDALIのデッカイ奴を置き・・・
このドツボに填まることには、多分私はならない。
人生、それほど閑じゃ無いし、何より懐が許さないだろうから、この程度で満足すると言うのが身の丈というものだろう。

私には音楽の無い生活は考えられない。 No Music、No Lifeだ。
そしてまた再生装置の品質の前に、やはり優れた演奏家、優れた作曲家、優れたパフォーマーがあるのであって、決してその逆では無い。
原音再生の忠実性を求めつつも、そこをはき違えないよう、大いに現在の環境で楽しんでいきたいと考えている。

このMarantz M-CR612 は、デジタル時代にあっては、疑いなく良い音を出してくれるマシンであることは約束しよう。

Marantz M-CR612 収納
デスク下(私の膝先ですっ 笑)にセットされた〈M-CR612〉
記事内図版、画像の一部はメーカーサイトからお借りしました。謝謝!

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