工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

Oak Cabinet を

cabinet1

1つ、キャビネットが仕上がった。
以前よりご愛顧いただいている顧客からの受注品。
いくつかの複数のデザインで提案した結果、比較的シンプルなものに落ち着いたというところ。

天秤指しでの板差し構造。正面見付の側板 > 甲板の接合は留。
背板は框組のパネル落とし込み。
内部は棚板3枚、

観音開きの扉は面腰仕口での納まり。
耐震対策を、との要望に応え、扉を閉めると自動ロックされる機構を内蔵。
それを仕込むために上桟、下桟はやや幅広に。しかしこういうのはバランスだから全く違和感はない。

縦框:上桟:下桟 = 3:4:4.6 といったバランス。


ざっとこんなところだが‥‥、

駆体の板指しはいずれも2枚矧ぎながら、左方立て、甲板、右方立てと、連続した木取り(1枚の板から木取ったため木目が繋がっている)

駆体見付、木端は内側に大きくR面を取ることで柔らかい表情を出してみた。
扉も間口3尺(約900mm)のサイズのために鏡板も2枚矧ぎとなってしまったが、道産の楢を用いたこともあり、高品位な仕上がりとなった。

鉋イラスト

ところで背板の構造に関する考え方だが、うちではもっぱらこの框組のパネルを基本としている。

恐らくはもっとも丁寧で合理的な手法の1つだと考えている。
4分、12mmの厚みで、羽目板は木取りの結果如何だが、9〜11mmの厚み。
框は1.1寸、34mmを挽き割って使う。羽目板の方は9分、27mmの半割。
うちのような小さな規模の木工所では、材木はたくさんの種類の厚みでは管理できないからね。

cabinet4数種の厚みのものを使い回す。
結果、背板の框材は柾目で木味も揃わせるということも困難では無くなる。
つまり使い回しは理にかなっていると言うわけだ。

J・クレノフの厚板からはじめよ ! というほどの深い意味を持たせるものではないが、基本は同じだ。

羽目板もブックマッチでいけるしね。これには調子の良い帯ノコを必要とされるわけだが、うちの日立75Fでも1尺までは挽き割れるし、十分とは言えないまでも、曲挽きもできることを考えればまずは合格点。(セリーはカスタマイズする必要があるけどね)

ただこうしたことを可能ならしめるためには良く乾燥した材料でないとできない相談ではあるのだが。
さて、明日からは座布団椅子、およびそれに併せるセンターテーブルをまとまった数量で制作していかねばならない。

この極度の炎熱地獄でいかに体力を維持し、集中力を持続させるかが問題だね。
修行僧、あるいはシージュホスの如くに身構えるというところからスタートといきたいところだが、俗人のボクにはもっとふさわしい遣り方がある。塩+スイカ+ビール、そして昼寝かな(笑)
cabinet2

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  • 閉めるとロックされる、ということはロック解除の
    仕掛が他にある、ということですね。
    下部の方立てと底板の結合はホゾ組でしょうか?
    この位の背の高さ(900mm位?)だと、方立ての中間部分が反る、ということは意識しなくて良いのでしょうか?
    もちろん、材質や乾燥具合にも因ると思いますが。

  • acanthogobiusさん、いつもコメントありがとうございます。
    >下部の方立てと底板の結合はホゾ組でしょうか
    地板の接合ですが、07/22の記事に貼り付けた4番目、5番目の画像の通り、前後を2枚ホゾとし、残り全域は3分の大入れ(大入れも5番目の画像にチラと見えます)。
    加えて中央部に10mmのDominoホゾ(角ノミでは中央部の穿孔は無理なので)
    全域にホゾを穿つ人もいると思いますが、より丁寧ですね。
    >方立ての中間部分が反る
    ご指摘、ごもっともですね。その懸念は拭えません。
    駆体内部に抽斗など機能部分がくるようであれば、然るべく要所要所に桟を通すなどの対策が求められますが、今回は上下可変の棚板のみですので、天地で決めるだけ了としました。
    場合によっては棚板1枚を固定とし、ホゾで固めるなどの方策も考えられますね。
    >ロック機構
    機能金物を使いましたが、右扉の底から手をさしのべて金具を軽く押すことで解除されます。

  • こんばんわ^^
    スッキリとしたいい感じのキャビネットですね♪
    丁寧な解説がうれしいです。
    学校に入るまでは、解説の単語の意味がさっぱり分からなかったのですが^^;
    技術専門校にてK先生から指導を頂きながら框の整理箱を作成したおかげです。
    夏、真っ盛りですがスイカ+塩+ビール♪を駆使して熱中症にならないよう椅子とテーブルがんばってください^^ノシ

  • ぽーるさん、
    いわゆる符牒のような言葉も使っていますので、木工関係者でないと判読できない部分もあるでしょうね。
    こうしたBlogでは、その辺りの考え方をどのようにするかは悩ましいところです。
    ぽーるさんも熱中症にはくれぐれもご注意を !

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