BOSCH 電動工具 10.8V シリーズ(その2)
BOSCHの 10.8V バッテリー駆動の電動工具のラインナップは上図のようです。
ご覧になってお判りのように、特徴的なのは、図中〈1、ネジ締め・穴あけ、〉などは他のメーカーにおいても、一般的に普及しているジャンルといえます。
マキタの10.8Vバッテリーも、BOSCHのものと互換性は無いものの、近似したサイズと形状で、BOSCHの小型インパクトドライバー同様の商品があります。
一方、〈2、研削・研磨〉、〈3、切断・切削〉の分野は、BOSCHならではの展開で、ここに大きな特徴が観られます。
もちろん、電圧を14.4V、18Vへと昇圧させれば、他メーカーもこれらのジャンルの機種も充実させてくるのですが、
10.8Vの分野に限っては、BOSCHの充実ぶりは群を抜いていることがお分かりかと思います。
しかも 10.8Vとはいえ、グリーンボデーのDIY用では無く、プロフェショナル仕様のブルーボデーであるところ8にもその位置づけの確かさを感じ取ることができます。
この違いは何なのかなと考えるわけですが…、
1つには現場作業における作業員の負荷を軽減させるため、電動工具の機能性、作業能率を重視しつつも、人間工学的視点から極力軽快で作業しやすいマシンを開発していこうとの理念を感じ取ることができます。
前回の投稿にコメントを頂いた佐々木氏の指摘もここにありましたね。
あるいはBOCH以外のメーカーの開発理念としては、10.8Vの分野は重きを置かず、端から開発への意思は希薄との位置づけと言えるのかも知れません。
またここは専門的な領域の話しになり、確たる根拠があるわけじゃ無いのですが、
10.8Vという非力な電源から、その機種に求められる動力へと伝導、変換させられる機械的設計、精度、革新的な技術の開発への能力、資力に欠けるのかも知れません。
10.8Vという電力が有する潜在的なパワーを侮っているのではと、穿った見方をしてしまいます。
Li-ion電池 10.8Vと18Vの比較
BOSCH Li-ion 二次電池の2種類、18Vと10.8Vの重量差を視てみれば、その実測値、18Vは640g、10.8Vは184gです。
この差はLi-ionバッテリーのセル数の比がが 5:3なのに対し、より大きな重量差となって結果していることが分かります。
その差、456g、これは不安定な現場で使うことも多い作業者には無視できない重量差でしょうし、また当然にも駆体の大きさの差異としても表れるものでしょうから、なお、その違いは大きくなってくるでしょう。
10.8Vの方は、手で容易に握れる駆体サイズですが、18Vとなれば大きく手を拡げねば掴めないサイズです。この差異は小さくないです。
なお、10.8Vを電源としたBOSCHの電動工具群、
低電圧でも高出力の直流モーター開発、駆動系の徹底したコンパクトさの追求、さらには作業者が快適に使うためのエルゴノミクス重視のデザイン、設計。
これらはすべてBOSCH 10.8Vのあのコンパクトでエルゴノミクスに沿ったボデイを基軸としたところからの発想なのだろうと思います。
良く見掛ける、コードレスの電動工具に、まぁ とにかくワイヤードの既存の駆体にバッテリーの駆体をくっつけてみました、といった“やっつけ”仕事では無く、
すべて イチから発想、思考し、設計デザインされているところがBOSCHならではのものがあるように思えますし、BOSCH 10.8Vバッテリーの駆体は、電動工具のボデーに一切の無駄が無くトータルにフィッテイングしており、BOSCH曰く、エルゴノミクスと称するだけあり、そこは見事というしか無いものがあります。
なお、BOSCH 製品群の10.8Vと同一製品の18Vとを並記した記事があり、URLを貼り付けます。
コードレス吸じんオービタルサンダー「GSS 18V-13H」と「GSS 10.8V-13H」2機種の紹介です(こちら)。
ここに2機種の仕様が表記されていますが、ご覧の通り、〈回転数〉〈ストローク数〉〈オービットダイヤ 〉等の性能は変わっていません。同一なのです。
──────────────────────────────────
──────────────────────────────────
18Vの優位性として示されるのは、「別売りの高容量バッテリーにも対応しているので、作業量の多い方に最適」とされている通りです。
基本性能における特段の差異は無いようです。
日独の経済・ファンダメンタルズ(経済における基礎的指標)からの開発投資の差異
ここ数十年、日本経済が低調な中、一方、ウクライナ戦争の勃発前までのドイツ経済はEU全体を牽引する経済成長を遂げていたことは衆知の通りで、労働者の賃金の伸びも著しいものがあります。
ドイツ経済と言えば、自動車のメーカーが牽引しているのは言うまでもありません。
その車はメルセデス、BMWなど、いわゆる高級車に特化した分野が中心です。
世界から羨望の眼で見られるのは言うまでもありませんが、何よりも自動車製造における利益率が高く、産業分野で大きな裾野を持つ自動車産業だけあり、ドイツ経済の活性化を牽引し、労働者の高い賃金にも反映しているのも当然というわけです。
日本のように、ただただコスト追求型の姿勢を競うかのような企業理念が幅を利かし、このアベノミクス経済、新自由主義型の企業経営は経営利潤を内部に溜め込む一方、コストとしか視ない労働者の賃金は、G7の国では最低に抑え込まれている現状があり、未来展望を見いだすのは困難な状況。
こうした彼我の差異というのは深刻なものがあります。
BOSCH電動工具への Li-ion バッテリー 搭載の歴史
電動工具に Li-ionバッテリーを搭載した最初のメーカーは BOSCH でしたが(2003年のこと。因みにマキタのLi-ionバッテリー1号機はBOSCHに遅れること、2年後の2005年のインパクトドライバーへの搭載)、
その後、この記事で対象としている 10.8V 工具群のラインナップに視られるような開発姿勢というものも、この分野では自社こそが世界を牽引していくと言った自負を感じさせるものがあります。
これら電動工具の開発では、平行して特許申請も行われ、他社が追随するのは周遅れになるのも必然で、この創業者利得を、さらに新規開発投資へと振り向けるという好循環が営まれていくということになります。
BOSCHの研究開発費は毎年 全売上高の10%近くを投入していると言われています。
My BOSCH、Battery Power Tool
私が購入し、現在も現役で稼働している BOCH10.8Vの電動工具は上図の6機種。
既にこの幾つかは記事に取り上げてきましたが、それぞれ10.8Vとはいえ、侮れない機能、パワー、プロの現場での実用性は高いものがあります。
また前述したように、いずれもエルゴノミクス(人間工学)を強く意識したデザインで、使い勝手も高いものがあると言えるでしょう。
ここ最近はサンダーの紹介をしてきましたが、トリマーも大変おすすめです。
とてもユニークな形状をしていますが、エルゴノミクス的にエッジトリマーとしてはとても使い勝手が良いです。
主軸のスピンドルの位置がベース中央ではなく、オフセットになっている事で、エッジトリミング作業ではたいへん安定した運行が可能です。
主軸が中央に置かれるシンプルなトリマーでのエッジトリミング(面取りなど)の場合、持ち手の力はエッジと逆側に重点を置きながら運行させる必要があります。
そうで無いと、水平の維持が困難だからです。
ところが、このBOSCHエッジトリマーでは、重心(持ち手の位置)があらかじめエッジと逆側の位置に置かれるところから、とても水平維持が容易で安定的な運行が可能になります。
このような発想による機構は他メーカーにはありません。
しかもこの駆体のデザインは、いわゆるエルゴノミクスそのものでしょうし、バッテリー駆体もエルゴノミクス的なデザインから本体駆体に結合されているのです。
なお、ビット昇降機構と固定においても、類種に無い使いやすさと安定性があります。
(私の記事から)
なお、今後、うちとしてこのBOSCH 10.8Vシリーズで導入したいものを上げるとすれば、ジグソーでしょうか。
ワイヤードとしてはBOSCHのジグソーを、起業以来40年近く使ってきていますが、コードレスのジグソーも魅力的ですね。
ただ、この場合はパワーの面から、18Vタイプに譲らざるを得ないでしょうか。
作業状況からすれば、被加工材に押しつけながら運行するものですので、過度に軽いものより、一定の重量があった方が良いように思いますしね。
このBOSCHの18Vシリーズですが、数年前にマルチツールを導入していますので、
本体だけ購入すれば、とりあえず良いでしょう。
40年ほど大昔のことですが、本格的な木工を始める前に購入した電動工具は、BOSCHのトリマー、BOSCHのジグソー、そしてBOSCHの13mm振動ドリルでした。
当時はホームセンターなどでは扱っておらず、町の道具屋から取り寄せてもらったものです。
なぜBOSCHだったのか。
当時からジグソーと言えば、BOSCHこそが世界のスタンダードと言われていましたし、そうしたブランドへの信頼性でしょうかね。
事実、このBOSCH ジグソーは、先に軽微な修理の記事を上げていますが、未だに現役バリバリです。
それほどに耐久性も高いものがあると評することができます。
さて、今回はBOSCH電動工具における10.8Vシリーズにについて概観してきました。
ややもすれば 10.8Vと言えば、一見、アマチュア向けと考えがちですが、様々なジャンルにおける作業工具として、コンパクトで軽量なのはもちろん、とても高い性能と信じがたいパワーを有し、作業員の負担を減ずる、優れた商品群であることを観てきました。
ただ国内メーカーのものと較べ、やや価格が高いところに購入時の障壁を感じざるを得なません。
これは過度の円安が大きく影を落としていることからの障壁であって、相対的に観れば、BOSCH製品は他社のそれと比較した場合、ほぼ平均的な価格帯であることも事実です。
木工をより高品質なものに、より木工作業を快適に、より楽しく挑むため、
電動工具の商品選択においては、より賢明な判断をしたいものです。